第41話 そんなに上手くいくわけがない
手紙を出してから半月、人鱗族からはそれならば良しと返事を頂いた
既に選出を開始しているそうだ
しかし、人狼族からの返事は違った……
「戦って勝って見せろって……」
「人狼族はそうであろうな。強いものが全てを決める。弱い物は従う。単純だからこそ統率が取れているのじゃよ」
おじいちゃん……僕は戦ったことないんだよ?
「戦いって僕は経験も無いですよ?相手の事も知らないですし……」
「ふむ……そうじゃな。シフォニアよ、しばし孫を連れて行くぞ」
「構いませんけど……あまり無理させないでくださいね?」
「わかっておるわかっておる。かわいい孫じゃ、そんなことはせぬよ」
えっ?どこに?どこに連れて行くの?
僕はあれよあれよという間に、おじいちゃんおばあちゃんに連れていかれる
僕は今、おじいちゃんの背中に乗って空の上に居ます
隣にはミャムが飛んでいます。いつだってどんな時だってミャムは僕の側にいてくれます。少しおっかなびっくりだけど、決して逃げようとはせず、巨大な竜になったおじいちゃんとおばあちゃんの間を飛んでいる姿は頼もしくもあり……申し訳なさもあり
「ふむ……この魔猫なかなか肝が据わっておる。わしらの間を飛んでいられるなんぞなかなかできるもんではない」
「そうですねぇ。ミャムと言ったかしら?危害を加える事はありませんから、もう少し落ち着きなさい」
おばあちゃん……そうは言っても、こんな状態で落ち着いていられる人なんている訳が無いと思うのですが……ほんとごめんねミャム
「そろそろ着くぞ」
霊峰、その雲の上にある頂、そこにあるこじんまりとしたログハウスに僕は連れて来られた
とりあえずミャムを撫でまくる。怖い思いをさせてしまったよ
「その魔猫には済まぬ事をしたな。慌てて着いてきたからのぉ……」
「ミャムは僕の家族ですから……いつも傍にいてくれます」
「うむ。ミャムよ。何もないがくつろいでくれ」
「何か飲み物を用意しましょうね」
おばあちゃんが温かいお茶を用意してくれた。ミャムにはミルクだ
「さて……明日からコグトスに、稽古をつけてやろうと思う。まだ竜化が出来ぬようだからな」
「おじいちゃんたちのようになるってことですよね?」
「その通りじゃ。しかし、お主がどのような姿になるかはわからん。何しろ竜と魔族の子じゃからな。それに女神様のお力もあろう?どうなるかわからぬから、この人が居ない霊峰まで連れてきたのじゃ」
「そうだったのですか……」
「万が一、出来なかったとしても、人狼族と戦える程度には何とかしてみよう」
「疑問が少しあるんですが……僕たち竜族は多種族より強いというわけでは無いのですか?」
竜と聞けば、ファンタジー世界で最強の部類なのではないか?と思っていたんだけど
「ふーむ……そうじゃなぁ……強いかと言われれば強いじゃろう。相手を殺しても良いのであればな」
「……」
「ただ竜化せずに戦うとなれば、残念ながらそこまで強いというわけでは無い。まず負けるとは思わぬが、それはワシ等の話じゃな。コグトス、お主はまだ若い、鱗の強度もそこまでは無いじゃろう。恐らく……互角。経験がある分向こうが上か」
そうなんだ。決して強いというわけでは無いのか
「竜化をすればいいのかな?」
「そうではない。ジャガイモを切るときに剣を持ち出すのか?斧で叩き割るのか?できなくはないが過剰であろう?」
「うん……」
「竜化を覚えることで初めて、お主は丈夫な体を手に入れられる。鱗の守りが手に入るわけだな。そこから何年もかけて脱皮を繰り返すことでより強固な体へと成長していく」
脱皮……
「だからこそまず守りの力を手に入れねばならん。それをここで学んでもらうのじゃ」
手加減しないと危ないから、手加減して戦わないといけないけど、そうすると勝てるかわからないっていうこと?意味が解らないよ……
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