第34話 旅立ちの前に


あれから10年の時が流れ、僕は13歳になった

10年も時が流れたのに、僕以外の周りの人たちは姿かたちが全然変わらなかった

僕だけがすくすくと育っただけだった


ボルトワに招いた妖精族は今や48人になり、各地から集まってきた。

一般民家4軒に纏まって住んでいる。もちろん僕監修で妖精族がすみやすい環境を整えてあげた。小さい食器や小さい窓、玄関も小さい物をつけてある

弓も、武器職人に頼んで小さい物だ

あれから妖精族はボルトワ領偵察部隊として働いている

高速機動による偵察と、速やかな殲滅、早い伝達、森の中では妖精族が輝いた

もともと居たボルトワの兵達ともうまくやっていて、付近の村々の被害数はかなり抑えられている

勤勉な学者タイプは父上やセバスさんの補佐に回り、書類をまとめ、父上の処理速度が大幅に上がった


僕は、魔技の習得に世界の勉強、剣の稽古をしていた

僕の魔技は念動力だった。所謂サイコキネシスだ

そしてもう一つが、竜族の力、ブレスだ。勿論……口から出す……

母上は白熱線を出す。瞬時に溶けてしまうような高熱だ

ニーシャさんとヨアンナさんは燃え広がるような広範囲の炎を出す。一見、母上の方が強そうに見えるが、母上のは瞬間で4秒程しか出せないが、ニーシャさん達は数分出し続けられる

女王陛下は凍り付かせてしまうブレスだ。「妾は冷たい女ではないぞ?本当だぞ?」と言っていた……

そして僕は、雷を吐き出す。サンダーブレスだ。ただ、まだ成熟していないから焦がしたり痺れさせたりする程度だが、十分強力だと思う

ちなみに「サンダーブレス!」ってかっこよく出そうとすると、「ひゃんひゃーひゅれふ!」って言いながらもう出てる状態になる……


ミャムは相変わらず僕の枕になってくれる。ただ、最近ベットに入ってくる前に毛づくろいしてから入ってくる。お、お年頃なんだよ……


ミーナさんはガンガとボルトワを行き来している。一瞬で僕の所に来るから凄い

リーアさんに全ての業務を任せ、僕の旅に同行する準備を整えていた

それに加え、シーナさんの再教育、僕の教育、父上と母上に媚を売る、女王陛下に裏取引、教会本部に出向き聖女育成の手助け&裏取引と大忙しだ……うん……


リザさんは聖女として……僕に嫁ぐ前に……教会本部で役目を果たすつもりらしい


ナタリーさんは旅に同行してくれる。リリーさんは領内で妖精族の取りまとめだ


そしてもう一人、新たに同行してくれる人が、セバスさんの孫娘で人蜘蛛族のシゼラさん。里からセバスさんが呼び寄せたらしく、「そろそろコグトス様にも執事が必要です」という事で……今日、これから家に来る


「コグトス様、シーナです」


「どうぞー」


「失礼します。シゼラさんがお見えになりました」


「解りました。今向かいます。」


どんな人かなー……応接室に向かうとセバスさんが扉の前に居た


「おぼっちゃま、シゼラを何卒よろしくお願い致します。少し緊張している様で、普段はもう少しおしとやかなのですが……」


少し困った顔のセバスさん……なんか不安が……


「わ、解りました……とりあえず中に入りましょう」


「畏まりました……」


応接室に入るとソファから勢いよく立つ女性が……でかっ!

3メートル位……か?うちの屋敷天井高くてよかったね……ほっそりしてるのに出るとこ出てる、スタイル抜群で和服姿、美人すぎるくらいに美しいけど、大きくて見降ろされると余計に恐怖感凄い


「よ、よろしくお願いします!」


あっ、見た目に反して元気っ子だ……体育会系の匂いがする


「あ、よろしくお願いします……えっと……とりあえず座りましょうか?」


「は、はいっ!」


セバスさんがシゼラさんの横に控える


「おぼっちゃま、先ず人蜘蛛族の話をしてもよろしいでしょうか?」


「お願いします」


この10年、独学でいろいろ調べて来たけど、人蜘蛛族と氷精族の資料や話はなかなか見つからず、人蜘蛛族の資料は皆無に近い。セバスさんに話を聞こうとしていたのだけど、何故かはぐらかされ……今日までわからなかった


「シゼラ」


「はいっ!ウチ達、人蜘蛛族は仕える主人を決めたら、その人に全てを話しますが、話を聞いて要らないと言われたら、その人を殺しますっ!」


ひぇぇぇぇぇぇえええええええええ!!!!元気よく「殺しますっ!」って……


「え!?じゃぁ、話を聞く前に採用か断るか決めなきゃいけないですか?」


「はい……なので、今決めてほしいです……」


「じゃ、じゃぁ……採用で……」


「よかった!おじいちゃん!」


「よかったですねシゼラ。これから誠心誠意努めるのですよ?」


「はい!」


「と、とりあえずよろしくお願いします」


「はいっ!えっと……まずウチは目が悪いです。見えないわけではないんですが、目は補助機能で、糸で判断します。あ!目は8つあります。逆に暗闇でも糸さえあれば解ります」


そう言っておでこを見せてくれた、そこに4つ目があり、人と同じ目の部分は実は左右で2つずつらしい


「ほえー……これはセバスさんも同じですか?」


「はい。私も同じようになっています」


「糸を張り巡らせて、その振動で色々と判断できるように訓練します!もちろん移動にも使いますし、罠にも使います!今、この部屋にも張り巡らせていますが、コグトス様には付けていません」


「僭越ながら、糸に関しては女性の方が巣を作るので、扱いだけで言えば私よりもシゼラの方が上手です」


「が、頑張りました!強靭な糸で、武器にも使用します!スパスパっと!」


おー!そういえば強いんだっけ?蜘蛛の糸って


「あ、後は……あ!この服、女性は着なきゃいけないので、おじいちゃんみたいに執事服は着ることができないです……」


「僕は構いませんが……移動の邪魔にはなりませんよね?」


「大丈夫です!全然問題ないです!」


「それなら別にいいんじゃないかな?」


まぁ……僕は和服知っているからね。着た事は無いけど


「あとは……そのぉ……ご、ご飯食べてるときにしてくださぃ……そのぉ……ごにょごにょ……」


「シゼラ。きちんとお話ししなさい。大切なことです」


「は、はいっ!」


ん?えっと……ご飯食べてるとき……あっ!


「そのっ!しっ、子孫繁栄はご飯食べてるときにしていただけないと!殺しちゃうかもしれませんっ!」


元気よく「殺しちゃうかもしれませんっ!」が発動した……そうでしたねー……確かご飯食べてるときか脱皮しているときじゃないと、基本的に獲物と勘違いして食べちゃうんだよね……習性はまんまなのか


「そ、それは……まだちょっと僕には早いかなー……なんて」


「そ、そうでした!」


「いえ、おぼっちゃま、これは大切なことなので良くお聞きください。人蜘蛛族の女性は、年々、歳を得るごとにフェロモンが強くなると言われています。そうなってくると不意にでもそういう感情が湧き出ないとも限りません。おぼっちゃまの命に関わることでございます。努々忘れませんように」


「ま、まだウチはそのぉ……経験は無くてぇ、まだ若いのであまりそのぉ……魅力が無いのかもしれないのですが……」


「これも僭越ながら。若い娘よりも歳を得た女性の方が人気があります」


「でして……」


へー……そうなんだ


「ま、まぁ十分お綺麗だと思いますよ?」


「!ほんとですか!!!」


「え、えぇ……」


「シゼラよかったですね」


「うん!」


いや、単純な感想ですよ?そういうつもりでは無いですよ?


「後は……あ!大切なことです!このお話を他の方にしたら殺しますっ!」



また元気な「殺しますっ!」が出た……











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