第32話 闘技大会3
会場の外に一旦出るとそこには妖精族が12人居た
それぞれが大体大人の掌位、15センチから20センチくらいだろうか
背中に蝶のような綺麗な羽を2対持ち、パタパタと動かして宙に浮いているが、きっとそれだけではないだろう。風が見えるのだ
「こんにちは」
「使徒様!宿の時も大変世話になりましたが、またこうして救っていただくとは……本当にありがとうございます!」
「うん。あそこのいすにいこう」
ベンチがあったのでそこに移動する。そこで僕は母上に借りたペンと紙を取り出し、伝えたいことを書いていく
「こんなかんじ」
まず聞きたいことを書いた。食事はどれくらい食べるのかとか、寝るときはどうしているのか、まず希望条件大切。
「?食事は……大体皆でリンゴ二つ位でしょうか?」
「そうですね、大体それくらいでしょうか?動物の肉はそもそも狩りが出来なかったので食べたことは……」
「一応食べれるぜ?死んだ爺が言ってたな」
「食べてみたいですねー……じゅるり」
「おまえら……まだ仕事が決まったわけでは無いのだから、あまり欲張るな!」
ぽかぽかとげんこつをするナタリーさん、まぁまぁと宥めて続きを聞く
「寝るところはどこでも。木の洞で寝ておりましたから」
なるほど……
次にやってほしい事として、どれくらい移動できるのかを聞いてみた
「そうですね、急げばここからボルトワ領までなら半日くらいでしょうか……」
「ピッケなら数時間あればいけるな!」
「僕?でもそんなに一人で行くのは怖い……かも」
「ピッケは気が弱いですが……移動が皆の中で一番早いのです」
ナタリーさんが教えてくれた
ふむふむでも半日で移動できるのはすごい。これはやっぱり仕事があるぞ!
「ためしたいことがある。いいかな?」
「はいっ!なんなりと!」
今書いた手紙を手渡そうとする
「いえ……残念ながら持てません……」
すかっとすり抜けてしまう
置いた手紙を持つように言うと、持てる
「なぞ……」
「はい……私たちも解明したいのですが……」
でも、これで置いてあれば持てるという事はわかった。
「じぜんに、てわたしじゃなく、おくことをおしえておけば、てがみをはいたつできる」
「小さい物であれば……大丈夫かと」
よし。次に僕は拾ってきた小さい小枝に、ひもを付け、小さな弓を作った
矢は爪楊枝だ。拝借してきた
「これは?なんでしょうか?」
そう。この魔族国、弓矢という兵器が無かったのだ
身体能力があるから、必要性も無いのだろう。空を飛ぶ鳥を捕まえるのもジャンプ!
ほんとおかしい
そして僕が思うに、この弓の弦に力を込めて放ってもらえば、相手に攻撃が届くのではないか?と思ったのだ
「このいとのぶぶんに、やをつがえて、はなつ」
少しやってみせた、もちろん飛ぶわけもない。ただの糸にただの木だ。しかし妖精族なら
「そのときに、このいとにだけ、ちからをこめる」
「糸にだけ力を込めて放す……」
ナタリーさんが空にむかってやってみると、力を込めすぎたのか、バヒュンと飛んでいく、耐えきれなかった爪楊枝は空中でパンと乾いた音を出して粉々になる
「おーーーーーー」
「うわっ!これは凄いですね!」
「どう?どう?」
ぼくは感想が聞きたいのだ
「これならばもしかしたら……少し森に行って魔鼠にでもやってきてみます!」
ぞろぞろと妖精族が森に向かっていく……
もし、僕の思うことが実現できるなら、一度放った矢を風で誘導できるかもしれない。これは恐ろしい戦力になる……
それに個々の速さだ。援軍を要請する時間の大幅な短縮、そして難しいと思われる人鱗族との協力を進めることができるかもしれない。ボルトワがあんなにも前線にあるとは思っていなかった。父上もそれが解っているから来なかったのだろう……無責任な手紙を書いてしまった……
数分して皆が戻ってくる。皆、笑顔だ……ナタリーさんは少し泣いている
「これならば……戦えます!」
「うん!やったね!」
「はいっ!これをしっかりしたものに作り替えれば、皆戦える!希望をもらいました!」
「うんうん!それじゃ、ちょっとまってて」
僕は会場に入ってミーナさんの所に向かう
「ミーナさんミーナさん」
「ん?どうした?」
「つぎ、おひるきゅうけいあるよね?」
「ある」
「すこしデモンストレーションしたい」
「わかった」
「なんですなんです?♪楽しそうなことですか?♪」
ユナさんが食いついてきた、僕は紙に書いてやりたいことを手渡した
「おっほー!わかりました!♪任せておいてくださいよ!♪」
よし!これで地位向上作戦開始だ!
『さぁ!今大会もお昼になった所でー!皆さん昼食は買ってきましたかー!?私のオススメは一軒堂のホットドックですよ!おいしいですよ!食べてください!』
「「「「「「おまえの実家じゃねーか!!」」」」」」
わははははと笑いを誘う
『さてさて!!そんなお昼で・す・が!!!なんと!使徒様のデモンストレーションを見せていただけるそうです!!なんとなんとー……あの!妖精族を強化したとのこと!!!これは楽しみだ!!!』
「「「「「「おーーーーー!!!やれやれーーー!!!」」」」」」
「「「「「「ゴンズなんかのしちまえーーーーー!!!」」」」」」
「おまえらなぁ……」
ゴンズさんは順調に勝ち進んでいた。お昼の後は準決勝だ
僕たちは会場に入っていく。歓声を聞きながら妖精族全員を並ばせて、遠くに的のリンゴを置きに行く。頂いた人馬族の皆さん……本当にすみません
『何をするんでしょうねー?リンゴを並べてますが……』
『妖精族が持っているあれが重要』
ミーナさんは知ってるよね。そうだよね
「よし。みんないいかな?」
「はいっ!おまかせください!!」
「じゃぁいくよー。かまえー!」
皆が弓をつがえる
「ねらえー!」
的に集中するのがわかる
「てー!!!!」
ばばばばばひゅっ!っと矢がリンゴに飛んでいき、ぱんっ!と飛び散る。粉々どころかすりおろしたみたいだ
会場がしんっと静まり返る……
続けざま、僕はギム様に人体実験をお願いしていた
少し緊張した顔のギム様が現れる……
「おい……あれはちょっと……やばくねぇか?」
「……だめですか?」
「いや……一人な……」
そういってギム様が全力で身体強化をかけたのが見えた
「ナタリーさんだけこちらに」
「はいっ!」
「ギムさまのからだにむけてはなって」
「わかりました!」
よし……
「ギムさま、いくよー!」
「よっしゃ!!こいやーーーーー!!!」
「てー!!!!!」
ナタリーさんが放った矢が、ギム様の体に当たると、ドゴッと鈍い音を立てた
ギム様が後ろにずずずっと下がる
「「「「「「あたった……」」」」」」
『なんっ……ということでしょうかーーーーー!!!攻撃があたらないはずの妖精族が!!!ギムの体を押しのけたーーーーーー!!!!』
「「「「「「うおぉぉぉぉぉ!!!!!」」」」」」
大歓声の中で、喜び合う妖精族
よかった……
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