第30話 闘技大会1
闘技大会の観戦の為、ガンガの街まで戻ってきた。何事もなくほっとする
豪華な馬車の中では陛下とお話をし、母上と仲良くなり、従姉でもあるヨアンナさんに可愛がられた。
ヨアンナお姉ちゃんと呼ぶように躾けられてしまったが……
ガンガの街、領主の館に着くと、ギム様にラテーテ様、リーア様に……セバスさんが居た
「セバスさん!」
「おぼっちゃま。お久しぶりでございます。旅は楽しんでおられますかな?」
「うん!たのしいよ!」
「それはそれは大変よろしゅうございます。奥方様、旦那様は流石に参加できない為、微弱ながらこのセバスが代わりに出ることとなりました」
え?強いと噂のセバスさんが?
「そうですか。仕方ありませんね……」
「はい。旦那様はそう易々とお力を見せるわけにもいかず、ボルトワを守らなければ陛下に顔が立たないと、それはそれは悔しそうにしておられました」
「ちちうえ……みたかったなぁ」
「おぼっちゃま、旦那様はとてもお強いのです。ですが、自らの使命を果たすそのお姿はかっこよくありませんか?」
「そうだね!おしごとできるちちうえは、かっこいい」
「そうでしょうともそうでしょうとも」
「セバス様……言いくるめましたね……」
「何のことでしょう?シーナ」
「ふはははは!良いぞ。誰でも構わん!俺とのエキシビジョンだしな!」
「ギムよ、足元掬われるでないぞ?楽しみにしておる」
「ははっ!女王陛下!」
明日はまずエキシビジョンマッチから始まるみたい。ミーナさんは運営で大忙しだ、ラテーテさん曰く、いつもより精力的なミーナさんを見るのは初めてらしい
少しづつ僕の力をミーナさんに分け与えているからかな?
翌朝、闘技場の特等席、女王陛下の隣に母上と一緒に座り、開会式を見る
『今回はなんと!使徒様もお見えになっているこの闘技大会!なななななんとっ!今回出場者の中で目に留まることができれば……使徒様の護衛に選ばれるそうです!!!』
「「「「「うぉーーーーー!!!」」」」」
盛り上がってるけど……
司会者が僕の知らないことを言い始めたぞ?聞いてないんだけど?なんでいつも教えてくれないの?ねぇ?母上?
「コグトスちゃん、これは女王陛下のご厚意でもあるのよ?あなたはまだ幼いわ……一人くらい護衛できるものが必要よ。シーナはあくまでも側仕え。専門が必要なの」
「そうじゃぞ。ボルトワの者でも良かろうが、あそこの者は皆、ガルドの配下じゃ。何かあれば出さねばなるまい。専属が必要なのじゃ」
そうなのか……
『今大会の司会者を務めます私、淫魔族のユナと!解説に特別参加!ミーナ様です!どうぞよろしくおねがいしまーす!』
『よろしく』
『先ずは闘技大会初!エキシビジョンマッチを開催しまーす!東側!我が領きっての剛腕!その剛腕で数々の敵を投げ飛ばしてきた我が領主!優勝回数数知れず!ギム様!入場!!!』
「「「「「うぉーーーー!!」」」」」
「「「「「ギム様がんばれー!!!!」」」」」
結構人気だギム様
『対する西側!ボルトワ領の秘密兵器!万夫不当ガルム様の右腕!!セバス様!入場!!!』
「「「「「渋いおじさまだわ……」」」」」
「「「「「戦えるのかしら……でも素敵ね」」」」」
セバスさん……淑女の方々に人気だ……
『解説のミーナさん、この戦いどうみますか?』
『わからない。ギムはその身体能力に磨きがかかっているが、相手は人蜘蛛族。戦闘を見たことがある人がそもそも少ない』
『なるほど……今回の戦いは未知数というわけですね!この戦いの支持率発表になります!!』
『ギム72%、セバス25%、使徒3%』
ふぇ!!!?なんで!!!?
『なんと!使徒様がここで登場したーーーー!!!これはどういう事でしょうか?』
『恐らく人馬族。仕方ない』
人馬族の皆さん……ブレないね……向こうで祈ってらっしゃるもの
『さぁさぁ!気を取り直して!ギム様が圧倒的支持率ですが、セバスさんもなかなかですねー』
『私も楽しみ』
『それではっ!!!エキシビジョンマッチ!ギムVSセバス!開始!!!!』
ずっどーーーーーーん!!!!
開始と同時に揺れと鳴り響く轟音
ギム様が突っ込んだようだ
『おーっと!!いきなりのシールドチャージ!!!土煙で見えませんがこれはいきなりの決着か!!?』
『いや。それはない。もうすぐわかる』
土煙が晴れてくるとそこには……ギム様のシールドチャージを片手で受け止めてるセバスさんが居た……
「ほっほっほ……大変元気でよろしいですな」
「クッソ!受け止めやがった!片手かよ!」
「ほっほっほ……これくらいは何程のことでもないですよ」
「なら殴り合いだクソジジイ!」
ギム様は腰を落とし、少し下に向けてパンチを繰り出す。左腕には大きな盾を付けたままだ
連続して殴り続ける。身体強化ありのスピードとパワーに任せた連続パンチ。どっしりと構えた格好から繰り出されるそれは、激しい音と土煙すら晴らす風を巻き起こす
対するセバスさん、そのパンチをすべて両手で捌き切る。涼しい顔で微動だにせず捌き切るその姿は流石に驚く
『なんとなんとなんとー!!!あのシールドチャージを片手で受け止め、繰り出されるパンチを捌いているぞー!!!!なんということだーーーーー!!!』
『人蜘蛛族……やはり強い。わからないことが多い種族の一つ』
「クッソがぁ!!!!スピードアップだ!防戦一方じゃ勝てねーぞ!!?」
ますます勢いが付く攻撃
「ほっ!流石ですな。ではこちらも奥の手を」
セバスさんの背中から、2対の脚が出てくる
「なぁっ!!!奥の手ってホントに手が出やがった!」
「ほっほっほ……奥の手と言いながらこれは脚なのですがな」
その長い脚を器用に使い、捌きながらギム様に少しづつダメージを入れていく
「ならこっちも足使ってやらぁ!!!」
その巨体からはなんとも想像できない俊敏な動きで蹴りも使い始めるギム様
『壮絶なインファイトが始まったぞーーーー!!お互い殴る蹴るの攻防!手に汗握る戦いだーーーーー!!!セバスさんのあの脚?ですか?あれはなかなか鋭そうですが』
『鋭い。ギムも防御かけてるけど皮膚が薄く切れ始めてる。並みの相手なら貫いてる』
『ひえぇー!なんという恐ろしい脚!!見た目に反して恐ろしい人だった!!』
「恐ろしいとは心外ですな……優しい好々爺だと思いますが?」
「うるせぇ!どこが好々爺だ!エグい攻撃してきやがって!」
そう言ってギム様がシールドをおもむろに引っ掴み、後ろに飛びのきながら投げる
投げたシールドがセバスさんに剛速球で飛んでいく
「甘いですな!」
それをはじくセバスさん、その弾いた盾が闘技場の結界を突き破り観客席の方に飛んで行ってしまう
「あ!あぶない!!!」
僕はおもむろに手を突き出した。すると、飛んで行った盾がピタッと宙で止まる
「あ……れ?」
『止まったーーーーー!!!あわや大惨事かと思われた恐ろしい威力の盾が!空中に!静止しているーーーーーー!!』
あれー?これもしかして動かせるのかな?お?動いた
『盾がふよふよと動いているぞーーーーー!!!これが使徒の力!これが使徒の為せる御業だーーーーーー!!!』
『単純にすごい』
ギム様に返しておこう
「お、おうありがとな!」
まごまごしながらギム様が盾を受け取ると、女王陛下がその場で立つ
「この試合ここまでじゃ!!!」
セバスさんとギム様が跪く
「両者の一進一退の攻防、誠に見事である!しかし、民に怪我をさせては一大事じゃ!この勝負!民を救ったコグトスの勝利じゃ!!!」
「「ははー!!」」
え!?僕なの!?
『なんと!使徒様が勝利を収めたーーーー!!ミーナさん、あの3%はあながち間違いではなかったという事でしょうか?』
『コグトスは優しい』
『よくわかりませんが……女王陛下のご裁断で!この勝負!使徒様の勝利です!!!!』
「「「「「「わー!!!!使徒様ーーーー!!!!」」」」」」
「「「「「「ありがとーーーー!!!使徒様ーーーーー!!!」」」」」」
なにこれ?茶番じゃないか…………
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます