第29話 この大陸

教会を後にして、出発の準備があるからそのままお城に戻る

大きくなったら王都でも散策したい

見回すだけでもあらゆるものがある。ウインドウショッピングでも楽しめそうだ


お城に戻ると少しそわそわしたミーナさんに出くわす


「ミーナさん、なかよくしようね」


「あら?コグトスちゃん、ミーナさんと何かあったの?」


「ティアーナさまに、みんなとなかよくなりなさいっていわれた」


「そうね。大切なことよね。ミーナさんコグトスと仲良くしてくださいね」


「わかってる。大丈夫。大切にする」


「ミーナさんおはなししよう」


「そうね。シフォニア様、少しコグトス君と遊んできます」


「わかりました。お願いしますね。コグトスちゃんも怪我しないようにね」


「はい」



応接室に来ると二人で向かい合って座った

いつも抱えられるけど、実はテーブルの高さで僕が見えなくなっちゃうんだなと気づかされた。皆気を使ってくれてたんだな


「やっぱり抱えよう。見えない」


「うん……」


「聞いたのね?」


「うん。こころのなかでよんだけど、あってる?」


「そう。あってる。これから色々と協力する。後でシーナにも話すけど、私も側にいることにする。その方がお互い安全」


「わかった」


「これからコグトス君は……抱えられないことも出てくるかもしれない。一人で悩まないで」


「うん」


「これからよろしく」


「よろしくおねがいします」


言葉数が少ないミーナさんと、言葉が出てこない僕の会話は、なんだか味気ないように見えて、それでもどこか安心するような、そんな時間だった





「少し時間があるから勉強」


またお勉強である……ついていけるかな…


「この大陸のお話。この大陸は正方形の形をしている。雑」


雑って……ティアーナ様泣いちゃうよ?


「中央にあの霊峰がある。北側は雪で覆われた大地が広がり、南側は深い森が生い茂ってる」


そういいながら紙に書いてくれる。


「この霊峰の西側、東を少し切り取って3分の2くらいが魔族の支配地域、東側3分の1位が人族の支配地域。ボルトワはこの人族の支配地域に近い若干南側にある」


「うん」


「今いる王都は、霊峰の西側、ちょうど東西に線を引いた場所にある。意外にも人族に近い場所にある」


「うん、ほんとうにちかい」


「ガルド様は辺境伯なんて呼ばれてるけど、ボルトワは辺境というよりは、前線の街。要所でもある。良く覚えておいて」


「うん。わかった」


「北側、雪の降る大地は人族の進行も多くはない。人族には住みにくい」


寒いしね……作物の育ちも悪いかもしれないから先に取るなら南だろうなぁ


「この北側、氷精族という種族が単種で守り抜いてる。[ひょうせい]と読む。400年くらい前の戦争で、この氷精族が大戦果を挙げた。人族3000に対し氷精族100余り。死傷者無し、敵全滅の大戦果」


おっそろし……強すぎない?


「だけど氷精族はあの地から出れない。出ることはできるのだけど、力がなくなる」


「えんぐんはきたいできない?」


「そう。でも逃げ込むことはできる。だから何かあればすぐにここに行くのが正解。氷精族は見た目に反して心は温かい」


なるほど……


「南側、ボルトワよりもさらに真南、ここは人族が良く進行してくる。ここを守るのが人鱗族。[じんりん]と読む。竜族の竜形態に手足を付けたような姿」


トカゲですかね?


「人鱗族は礼儀正しく、義に厚い。むしろ堅苦しい。でも戦いは荒い。噛みつき引掻き蹴り倒し……肉弾戦を得意とする」


「あらあらしいね……」


「コグトスは此処に行くと大変かもしれない。人鱗族は竜族を崇拝してる。竜族と知ると、自分の鱗を一枚剥がして張り付けてくる。無病息災を願い、力を貰うらしい」


うわぁ……胃が……痛くなりそう……


「人鱗族と協力しているのが人狼族、戦い方が同じでやりやすいかららしい。瞬発力は人狼、耐久は人鱗。お互いライバルでもあり仲がいい。住処は南側少し西に入る」


「じんろう……いぬさん?」


「犬って言うと怒るから気を付けて。狼だから。プライドは高いからその辺り重要」


ですよね……人狼族の方すみません。心の中で謝っておこう


「援軍し合うのなら人鱗だけど、森が深く速度が出ない。直ぐには無理」


「なかなかうまくいかないね」


「そうね。王都より更に西側、険しい山脈が広がる大地に人鳥族が居る。[じんちょう]と読む。空を飛ぶ機動力と目がいい。でも気分屋」


気分屋……


「楽しいことは好き。つまらないと居なくなる。なかなか相対するのが難しい」


「うん……」


「その山脈の裾に住むのが人狐族。[じんこ]と読む。こちらも気難しい……でも両者とも協力はしてくれる関係だから何かあれば手を貸してくれる」


「おあげがあればなんとかならないかな?」


「おあげ?なにそれ?案があるならやったほうがいい」


お揚げ無いのか……お稲荷さんで懐柔できないかなー……


「ほかにもいるけどとりあえずここまで。妖精族は見たからわかると思うけど、住処がわからないし、会えるのも珍しい」


「そうなんだ、でもようせいさんがんばってた」


「そうね。少し話ができればわかるかもね。あ、そうだ……ボルトワのお屋敷にセバスさんっているよね?」


「うん!しつじさん」


「あの人は人蜘蛛族。[ひとぐも]と読む。北の西端に住んでる種族。狡猾で強か、忠義は人一倍強いけど、主が気に入ら無くなれば殺害する程」


「ひっ……ちちうえだいじょうぶかな……」


「そして……強い。恐らく、セバスさんはガルド様と一対一で戦える。闘技大会でガルド様見ればわかると思う」


「わかった……」


「少し疲れた。補給」


「あい……」


黒い靄が巻き付いてくる……これも必要なことなのでいいか





あのにこやかなセバスさんが、そんなに強いなんて思わなかったなぁ……






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