第24話 猛るガルド 策士セバス 

護衛に出向いてるヨグトが引き返してきた

なんでも、シフォニアとコグトスから手紙があるようだ


「こちらです……」


ヨグトから手紙を受け取った俺はまずシフォニアからの手紙を読んでみた


「なるほど、勝手に決めたのか……まぁ、残念だがこの地から離れるのは得策では無かろう。依然として賊が入り込んでくるのは、人族の支配地域で、嘆かわしいことだが同族同士の争いがあるからだろうな。」


「左様で。皇国を名乗る不届き者と、帝国を名乗る不届き者が争っているようです」


「どちらも不届き者に違いはないか」


どちらにせよ、こちら側に一挙攻勢を仕掛けてこないのは幸いだな


「何でも構わぬが、民に被害があってはならんからな。前線の砦に居る者たちに能々言い聞かせておいてくれ。それと十分な食料と水もな。酒はダメだ。休暇の時に戻ってきて飲めと伝えておいてくれ」


「畏まりました」


あの者たちならば言わずとも大丈夫であろうが……何しろ軍属は酒癖が悪い。今日明日の命かもしれない己を鼓舞するために必要ではあるのだが

さて、コグトスからの手紙か……初めてもらうが、旅を楽しんでいるのだろうか。良いことだ。遠慮がちな所もあるからな。この旅で何か得られれば、嬉しい限りだ


「旦那様、コグトスおぼっちゃまはなんと?」


「セバス……出陣だ!!!」


「なんと?」


「俺はガンガに向かう!大会に出るぞ!今すぐ準備を!」


「失礼いたします……はぁ……「ちちうえは強くてかっこいいと聞いたので、見てみたいです」……ですか……」


「息子に我が雄姿を見せる時が来たようだ……!こうしてはおられん。すぐにでもガンガへ向かうぞ!」


「ですからお待ちください……先ほどここから離れられないとおっしゃったばかりでございますでしょう……」


「むぐぐぐぐ……しかしだな!やはり父は凄いのだという事を、息子に見せるのは役目ではないか!?」


「そんなお役目は聞いたことがございません……この手紙は額に飾っておきましょう……」


セバス!大切に!大切にだぞ!?破れでもしたら家宝が無くなる


「まったく……それでしたらば、ガルド様の代理という事で私めが出場いたしましょう」


「それでは意味がないではないか!」


「そうでは御座いません。父上はそう易々と力を見せつけることはできないと言うのです。そもそも。一対一ではガルム様に勝てる方など居るわけないでしょう……弱いものいじめをするのが趣味なのですか?」


「いや……そういうわけでは……」


「北の氷精族とならわからなくもないですが、あの者たちはあの地から動きませんからね。此度は私めが参りましょう。よろしいですね?」


「うむむむ……」


「よ・ろ・し・い・で・す・ね?」


「わかった……頼むぞ?よく伝えておいてくれよ?」


「畏まりました。老骨では御座いますが、ボルトワに泥を塗るつもりはございませんので」


「いや……よく考えればお前でも同じなのではないか?俺は丸め込まれたのではないか……?」


「何をおっしゃいますか。此度はご納得いただけましたでしょう?」


「うぐぐぐぐ」


「では失礼いたします。すぐに出発しなければなりませんので」




この日、ガンガの闘技大会に、恐ろしい男の出場が決まった……


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