第20話 道中

ミャムに起こされると、既に集落を出て進んでいる途中だった

僕はリザさんの背中の上に乗せられていたのだけど


「おはようございます。コグトス様」


「おはよごじゃます……リザさんもいくの?」


「はい。王都までご一緒いたします。それからミーナ様も付いて来ています」


馬車の方をみるとミーナさんがこちらを見ていた

え?なんで?


「どうして?」


「私は教会本部に用事があるためですね。ミーナ様は……わかりかねます」


もう一度馬車を見ると笑顔のミーナさんが窓に張り付いている。やっぱちょっとホラーテイストなんだけど……あ、シーナさんに剥がされた


「ここから先、王都まではリーアさんの仕切る宿に泊まっていきます。他にもあるのですが、その方が手間はないということで」


「わかりました」


「後、ヨグト様は引き返されました。奥方様とコグトス様のお手紙をお持ちになられました。すぐに引き返すと言っておられました」


あー、闘技大会の打診(強制)だ。だけど、辺境の守護があるから無理だと思うんだよね。あまり僕には聞かせたくないんだろうけど、それでも小競り合いみたいなのは起きてるって耳にしたことがある。山賊や盗賊が来るって


「ちちうえはむりじゃないのかな?」


「どう……でしょうかね?見てみたいとは思いますが……万夫不当と言われた方ですし」


そんな強いの?いつもセバスさんに叱られている所しか見たことない……


「ギム様曰く、「只々強い。だから対処しようがない」だそうです」


そうなんだ……見てみたいかも


「闘技大会はコグトス様が王都から引き返す頃合いで開始しますので、恐らくですが女王陛下はご一緒にご覧になりたいのかもしれません」


意外にも近日中に開催だった!大丈夫かな?父上……セバスさんの笑顔が引きつってそう。でも確認なんだから簡単じゃないのかな?セバスさんが殆ど処理してるんだし


「この先の宿では、ガンガに向かう人々が宿を取っているかと思いますよ。遠方から参加する方や見学に来る方達はそろそろ此方に来ていると思います」


「たのしそう」


「そうですね……この大会で陛下の目に留まれば、王都に仕官が決まったり、領主様にに仕えたりできますから。気合が入ってる方も多いですよ」


なるほど。仕官もできるかもしれないなら、皆張り切って戦うし盛り上がるよね

どんな種族が居るんだろう?少し楽しみだなぁ……


「今回は同時に、文官試験も行うみたいです。こちらの見学をする方は少ないですが……一度見たことがございまして、皆さん鬼気迫る顔で試験を受けていました……」


あー……わかるー。入試とか経験してるからすっごいわかるー。テストはもうやだなぁ……


「そういった方々のお宿は別棟ですが、もし遭遇したら静かにしてあげてください……人生がかかっていますから……」


「はい……」


宿が見えてきた。あれ?宿の外に小さい何かがたくさん居る。みんなで大きな辞書を担いでいる。扉が開けられないのか一番先頭にいる鎧みたいな衣装の人が片手でなんとかドアを開けようとしている


「あれは……妖精族ですね……もしかしたら文官試験に参加されるのでしょうか?」


「あけてあげよう!」


僕はリザさんから降りると、扉まで走っていった


「あけますね」


「かたじけない!お頼みします」


扉を開けてあげると、8人の妖精族が大切そうに本を運んで空いているテーブルに置いて休む。

そこから二人、先ほどの鎧の人と、ローブを着たいかにも学者な感じの女の子がこちらに来た


「先ほどはありがとうございます。私は妖精族のナタリーと申します。こちらは双子の妹でリリーといいます。」


「リリーといいます。助けていただいて本当にありがとうございます」


騎士風の方がナタリーさん、学者風の方がリリーさん。妹さんの方が少したれ目だからわかりやすいかも。シーナさん一家なんてラテーテさんですら姉妹に見えるからなぁ……見分け方は胸部装甲のサイズだ。ミーナさん、超えられない壁、ラテーテさん、大きな壁、リーアさん、シーナさんの順番に小さくなって……背筋が寒いぞ?もうやめておこう


「此度、ガンガの街で行われる大会に参加しようと故郷から来たのですが……宿の扉も開けられぬとは……情けない」


「お姉ちゃん、仕方ないわよ……私たちには何もかもが大きすぎるもの」


「待って、話をしてくる。もし嫌でなければ、扉の開閉に人を付けるよう言ってくる。」


いつの間にか後ろに居たミーナさん……アサシンか何かですか?

でもいい人なんだよなぁ


「それはできるならぜひお願いしたい!」


「えぇ!お願いいたします」


ミーナさんがカウンターに向かうと、店員さんが深く頷いていた。


「これで大丈夫、この人がお世話してくれる。ガンガの街にも着いて行ってくれる。何でも頼むと良い。」


「ありがとうございます!このお礼は必ず!」


妖精族の皆さんは店員さんに連れられて部屋の方に向かった


「妖精族はどこに居るのか分からない。風と共に彼方此方に移動してるとか、深い森の中に居るとか。見かけることはあるけど、いつも居なくなる」


「なんかふしぎだね」


「そう。不思議。」



試験受かると良いね。闘技大会じゃないよね?あれ?騎士服……






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