第17話 ガンガの漢

「ウオァァァァァァァア!!」


ドッゴーン!!!


「ぬぉおおおおおおおお!!!」


ズッガーン!!!!


さっきから叫び声とドゴンバゴンと大きな音で、鬼たちが殴り合いをしている

あれに父上が勝つのか???工事現場みたいな音してるぞ???


「コグトス様、あれが鬼たちの戦い方です。一歩も引かず、倒れるまで殴り合って、負けを認めるか倒れたら負けです」


あ、漢の殴り合いって奴だ。熾烈なんだけど……これ訓練だよね?


「これ、くんれんじゃないの?」


「訓練だぞ!ボウズ!」


観客席の僕たちに気が付いた鬼族の男性がこっちに来た


「俺はギムってんだ!まぁここの領主の一人な訳だが……難しい言葉遣いはわかんねぇ!許してくれや!」


そう呵々大笑しながら自己紹介してくれた


「お邪魔しております、ボルトワ領主の妻、シフォニアです。こちらは息子のコグトスと申します。今日は少し見学させていただきます」


「こんにちは、コグトスです」


「おぅ!まぁ面白くもねぇが、好きなだけ見てくといい。ジョイスの野郎はもうすぐくるぞ」


「きどうたい?」


「おぉ!そうだ!よく知ってるなボウズ!機動隊は文字通りの機動兵だが、ジョイス達は一味違うぜ?ほら、来たぜ」


コロシアムの入り口からドドドドドドっと土煙を上げて入ってくる


「おー!」


「ジョイス達は人馬族でな。この街には住んでねぇがもう少し先に行った所に集落がある……この街とはまぁ昔からの古い付き合いでな。一緒に暮らしてるようなもんだ」


「ん?……一同!整列!」


「「「「「「はっ!」」」」」」


おー!すごい!


「使徒様に捧げー槍!!」


「「「「「「はっ!!」」」」」」


え?え?僕に???捧げ銃じゃなくて槍なのか。まぁ銃無いしね。剣でもないのは、彼らが剣よりも槍を祭事に使用するからだろうか。答礼しておこう。答礼しないと失礼になるからね。僕は右手を左胸に当てた


「なはははは!!人馬族っていうのはな、敬虔な信徒でな!各地にいる人馬族の多くは教会関係に就く。王都の大司教も人馬族だ」


「ギム!使徒様に無礼な口の利き方、弁えよ!」


「なぁ……ボウズ、こいつどうにかしてくれぃ。いつもうるさくて仕方ねぇんだ」


「こんにちはジョイスさん。ぼくはだいじょうぶです」


「しっ……しかし……」


「まぁまぁ、二人とも喧嘩は後にしなさい。訓練風景を見にきたんですから。早くしないといいとこ無しですよ?」


「む!それはまずい!我々の日々の研鑽を見てもらいたい!」


「おうおう!うちらも見てもらおうじゃねぇか!なぁ野郎ども!」


「「「「「「おぅよ!」」」」」」


皆やる気が凄いなぁ……


「僭越ながら人馬族の訓練風景を説明いたします。全員訓練はじめ!!」


人馬族がお互いに向き合った形で離れ、槍を構える。ジョストというやつだ

「はぁっ!」という掛け声と共に、走り出し、槍を突き出す。

槍がぶつかると砕け散る


「訓練では砕けやすいように細工した模擬槍を使います。当たれば多少痛いですが、怪我はありません。砕け方とあてた場所で勝敗を決めます」


「ばじょうやりもすこしみじかい?」


「その通りでございます。騎乗兵とは違い、長さを少し詰めることができるため、より正確に相手の急所を狙えます。混戦状態になりますと剣を使いますが」


「にがて?」


「左様でございます。混戦ではどうしても小回りが利かないため、抜け出すことが第一になります」


「メイスはつかわないの?」


「聖職者になりますとメイスを持つようになります。しかし我々は騎士ですので剣を扱います。あぁ、あそこに居る彼女、リザといいますが、彼女は神殿騎士志望でして、メイスを腰に提げていますね」


リザさんというらしい人馬族の彼女はメイスを提げていた


「おぅ!こっちも説明してやるよ!鬼族は殴り合いで勝ちゃ勝ちだ!シンプルだろぉ?」


それって訓練なのか?訓練なのか……


「盾はよぉ、何にでも使えるんだ!守るも、殴るも、投げるも良しだ!何だったら煮炊きにも使えらぁ!」


それって盾なのか?盾なのか……


「まぁ、言いたいことは解らぁ。だがよ?俺たち鬼族は身体強化ができる。こういっちゃなんだが馬より速く走れるし、拳で岩も砕ける。鎧なんてなくても体も守れる。でっかい剣作ってもらった事もあるが、握ったら折れちまった。そんなもん何の役に立つよ?」


あー……そうだった、身体強化ができると武器なんかよりも拳の方がいいもんね

剣の訓練だって一朝一夕では成らないし


「それでもよ?人馬族も鬼族も弱点がそれぞれあるわけよ。人馬共は小回りが効かねぇ。回り込まれたらそれでケツ刺されて終わりだ。俺たちゃデカい、足元ちょろちょろ動かれたら手に負えねぇ。だから互いに弱点を守るんだ。それが戦ってもんよ」


「鬼族もただの力バカって訳ではございません。武器がないほうが足元を攻撃しやすいですし、もともとのリーチがあるので問題にはなりません。もし必要ならそこらに落ちてる木でも何でも使えばいいわけですからね。私ども人馬族とて易々と後ろを取らせるわけではありません。」


そういって左側同士を寄り添わせて、前後を守り合いながら回って見せた


「こうすれば被害を抑えられます」


凄いなぁ……考えられてるんだな


「なかがいいんだね」


「まぁ、生きていくには協力し合わねぇとな」


「そうですね」


尊重し合える仲って羨ましい……














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