第14話 最初のお宿は

最初の宿に着くかという頃、馬に乗ったヨグトさんがこちらに駆けてくる


「あー……面目ねっす……すでに察知されてた」


「なっ!ヨグトさん……あれほど慎重にと言ったのに!」


「そうは言ってもよぉ……あそこ、宿の前に居るの……シーナさんの姐さんじゃねぇか?……あれはバケモンだよ……ガンガの街入って、言われた宿探してたら後ろにいてよぉ……「シーナの匂いがしますの」とか言ってよぉ……こえぇよ……ずっと着いてくるんだよ」


宿の前を見ると、着物の様なものを着た妖艶な女性がこちらを見てニコニコしながら手を振っている


宿の前に馬車を付けて母上と、確保されたままの僕とシーナさんが降りる


「初めまして、ガンガの街、歓楽区宿屋連代表のリーアと申しますの。そこに居るシーナの下の姉でございますの。ボルトワ領領主様の奥方様とお見受けしますの。ガンガへお越しのご様子ですのでここから先のお宿はお任せください」


「これはご丁寧に、ボルトワ領主の妻、シフォニアと申します。こちらの……シーナに抱きかかえられているのが息子のコグトスです」


「……なんの御用ですか?姉さん」


「あら?領主様の奥方様ですのよ?ご案内差し上げなければガンガの街としても顔が立たちませんの」


そういいながら有無を言わさず僕が奪われた


「なっ!姉さん!!それは敵対行為とみなします!!」


そして何の脈絡もなく僕がシーナさんの下に戻る


「何を言ってるのかしら?大切な大切なお客様に粗相が無いようにしているだけなのよ」


そしてまた奪われた


「くっ!この……」


シーナさんに冷気が宿っていく、対するリーアさんは炎が……

相性最悪だこれ


「おやめなさい!!」


そんな中ピシャリと小さな雷が落ちる。そして僕はまた誰かに奪われていた……


「うちの娘達が大変ご迷惑をお掛けいたしました、申し訳ございません……また、シーナが大変お世話になっております。母で、ガンガ領主の一人、ラテーテと申します」


「これはご領主様、ボルトワ領主の妻、シフォニアと申します」


「本当に申し訳ありません……ほら!二人とも謝りませんか!」


「「申し訳ありません……」」


ラテーテさんは僕を見るとニッコリ笑って


「大変怖い思いをさせてごめんなさいね。もう大丈夫ですよ?さぁ宿に入りましょうね♪」


そんな僕は宿に連行された……




4階ある宿の、最上階、スイートのリビングに集まる

オンタリオさん、トラクスさん、ヨグトさんは部屋の前と階段の警備に、ミリアさんは部屋の内側、扉の警備、母上とシーナさんはソファ、反対側のソファにラテーテさんとリーアさん。僕はというとラテーテさんの膝の上に……


おどおどしているとラテーテさんが笑顔で


「心配ありませんよ?万が一おぼっちゃまに害があると奥様が判断した場合、私たちはこの世に居ませんからね」


「え?」


母上を見るとニッコリ笑って頷いていた


「シーナ。おぼっちゃまにどこまでお勉強を?」


「お母さま……まだ魔技の途中です……」


「なるほどそうですか。おぼっちゃま少しお勉強いたしましょう。私やシーナ、リーアは淫魔族といいます。あちらの警護なさっている方たちや御父上は魔族ですね?これはわかりますか?」


「はい」


「結構です♪魔族の方達は多岐に渡る魔技を使います。炎、氷、雷、身体強化……どれもこれも扱うことができます。勿論得意不得意はございますが。変わって私たち淫魔族は個々に得意とする魔技が違います。シーナは氷、リーアは炎、私は雷、他は扱えません」


「ほぇー」


「うふふ♪しかしながら、魔族の方たちより、強力に扱えます。他にミーナは闇を、街の淫魔の中には土がいますね。大体これらが淫魔族で確認されています。鬼族は強力な身体強化全般を扱います。」


「あれ?ははうえは?」


「気が付きましたか?♪ホーグムの街のニーシャ様、あなたの母上であるシフォニア様、他3名いらっしゃいますが、この方たちは竜族なのです。恐らくおぼっちゃまもそうでしょう」


「!!!!」


「竜族の方たちは街の1つ2つ簡単に消し飛ばせます。もし私たちがおぼっちゃまに害を為そうとしていたらば……この山間部は平野になっていたでしょうね♪」


「……」


「まだまだこれからもっと覚えていくことになりますから、よくよくお勉強してくださいね?♪」


「はい」


「うふふふふ♪」


「でも……なんでひざのうえなんですか?」


「それはかわいいからです♪あ、そうそう。淫魔族には魔技ではない別の特技があります……それは……」


そう言い終わる前に僕はリーアさんの膝の上に居た……


「こういうことなのですよ?おぼっちゃま♪」


「あっ!こらリーア。まだ私は満足していないですよ?」


「え?え?え?」


わけがわからない……またおどおどしているとシーナが説明してくれた


「はぁ……おぼっちゃま、私たち淫魔族は男性を手元に近づけたり遠ざけたりすることができるのです……ですから旦那様や奥様はこのシーナをおぼっちゃま専属のメイドに選んでくださったのです」


「あら?シーナずるいのですよ。おぼっちゃま、もう一人メイドはいかがですか?」


リーアさんまでメイドになったら僕はどうなるんだろうか……



それからしばらくの間、ラテーテさん、リーアさん、シーナさんの膝の上を行ったり来たりし続けた……





強制的に…………







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