第11話 ホーグムの街(前編)

村人たちに別れを告げ、何事もなく進むと薄暗くなってきた空と、きらきらと夕日に輝く湖が見えてくる


「おーーーーー!」


「あれがホーグム湖ですよ?綺麗でしょう?」


「はい!」


「あのほとりに見える街がホーグムの街です。街には人魚族と魔族が暮らしております」


「にんぎょ」


「そうですよおぼっちゃま。人魚族は半身が魚のようになっており水場に住まうのですが、陸に上がるときは魔技で宙に浮くのです」


「おーーーーー!」


そうこうしてるうちに街に入る。ホントだ……宙に浮いてお買い物してる人魚さんがいる

あまり高くは浮けないみたいだけど、お店の品物もそれに合わせて少し低い位置に並べられてる

共存共栄の知恵なんだろうなぁ


「馬車は共有車庫か領主様のお屋敷までしか通れません。人魚族は陸地では早く動くことができないため大変危険だからです」


「ほえー」


「見えてきました。あの真っ赤な建物が領主様のお屋敷です」


真っ赤だ……もうそれは見事に真っ赤だ。レンガとかじゃない。何か赤いものだ


お屋敷の門近づくと門兵さんが確認を取ってきた

門の横に車庫がありそこに馬車を入れ、歩いて玄関まで向かう

中に入ると、使用人さんと領主夫妻がお出迎えしてくれた


「ようこそおいでくださいました、ホーグムの領主デルフと申します」


「デルフの妻、ニーシャと申します」


父上の親友と聞いていたから大男が出てくるかと思いきや、ほっそりとした文官のような方が出てきた

角は1対で父上と同じ、奥様も母上と同じだった。ただし色が真っ赤だった


「ニーシャ。お久しぶりです。お元気そうで何より」


「シフォニア。お久しぶりね。その子が?」


「えぇ。息子のコグトスよ」


「はじめまして。コグトスといいます」


「おーおー!賢い子だ!あのガルフの息子とは思えんなー」


「賢い子ね。うちの娘もこれくらい賢ければ……剣の道に走るとは思わなかったわ」


「立ち話もここまでにして食事をしながら積もる話でもしようじゃないか」


食事をしながら色々な話をする。お互いの話、街の話、他国の話……

そんな中街の話で


「コグトス君は知っているかな?この街には貨幣が二つあるんだ」


「ほぇ?」


「この一般的な貨幣はわかるね?そしてこっちだ」


見せてくれたのは……綺麗な貝殻だった。その貝殻に領主印ともう一つ印が押されている


「この貝殻はね、水の中が生活圏である人魚族の為、特別に作ったこの街だけの貨幣なんだ。水の中では鉄は錆びてしまうし、万が一放置すれば水が汚れてしまう。だから人魚族の長とわたしの印鑑を押して、貨幣として認めたものを利用してもらってるんだ」


「コグトスちゃん、明日はこの貝殻でお買い物してみましょうね」


「はい!」


「しかし……デルフさん、魚の水揚げ量が少しづつ減ってると聞きますし……人魚族も最近の若い世代は地上の物に興味がありなかなか思うように稼げないとか」


「そうなんですよね……魚の水揚げや貝の漁ではなかなか……」


「???ようしょくはしないの?」


「ようしょく?コグトス君それはなに?」


あ……もしかしてそういう考え方はなかった?


「えと……みずのなかにかこいをつくって、その中でちぎょやちがいをそだてて、それをうります。ほうりゅうしてもいいです」


「「「!!!」」」


「みずのなかでいきてるにんぎょさんたちは、さかなのこのむたべものとか、よくしってるとおもうので、それらもあつめやすいですし、すみやすいかんきょうもかんたんにつくれる……とおもう?」


「それに、すこしほうりゅうしてあげれば、みずうみのかんきょうもくずさない」


「いつものりょうでとれたさかなは[てんねん]ものとして、ちょっとたかくかってあげればいいです」


「…………それ是非うちでやらせてほしい」


「はい!あとはこのまちにはかんこうきゃくがおおかったとおもうのです」


「確かに、景観は自慢だし、魚も美味いと自負している」


「にんぎょさんたちにうたがじょうずなひと、おどりがじょうずなひと、いませんか?」


「居るはずだ、彼らは年に何度か豊穣を祈って歌を捧げているものや、食事処で歌っているものもいる」


「そのひとたちに、いんかんつくりませんか?」


「なぜ?」


「そのうたがおわったあと、いくらかのおかねをもらって、かいがらかへいににんぎょさんがはんこおすのです」


「!記念か!!!」


「はい。きねんかへいとしてかいがらかへいをうるのとおなじで、かへいにはんこおしてもらえるし、もしかしたらすきなうたいてさんがいるかもしれないし」


「なるほど!その時は通貨で支払ってもらえば、人魚族は少し稼げるわけだ!人気の職業になるやもしれん」


「はい。きょうぞんきょうえいにひとやくかえるかも」


「これは素晴らしいぞ!いやいや目から鱗だ!」


うんうん。ディーヴァ爆誕してほしいね

養殖も時間はかかるかもしれないけど、すこしづつ改善していけばできないことは無いはず。人魚さんたちがどんな漁をするのかわからないけど、絶対魔技を使ってるはずだ






  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る