第9話 来客

あれからひと月、教会ではシスターさんたちに祈られ、街に出ればお祭り騒ぎ、家に帰れば父上や使用人の皆さんに泣いて喜ばれ……これでいいのかと不安にもなり……家族が家族じゃなくなるような気がして、両親や使用人にその事を話すと


「すまなかった!」


と、父上は平謝り、母上は泣きながらひと時も離れず、使用人の皆さんはいつも通りに接すると約束してくれた

時間が解決してくれると願おう

シーアさんだけは最初からいつも通りにしてくれてたのが救いだった

僕の中でのシーア株は爆上がりだ


教会には定期的に通っている

ティアーナ様とお話しできるようになったからだ

最近ではお母さんと言わないと腹を立てる


そんな日が続いていたある日、お庭でシーアさんと魔技の座学をしていると、屋敷に馬に乗った兵士さんが3人訪れた


「ガルム伯爵殿にお目通り願いたい!」


門の警備兵にそう伝えていたが形式的なものらしくお互い笑顔だった


「ご案内いたします」


屋敷に向かって歩き出した一団がこちらに気が付いたようだ


「つかぬことを、あそこにおられるのがご子息様ですか?」


「はい、当家ご子様であるコグトス様です」


「ご挨拶しても?」


「少々お待ちください」


うちの警備兵さんが走ってきた……あ、ラフブさんだったんだ

シーアが直ぐに横に来た、最近ではシーアさんは護衛も兼ねて常に一緒にいてくれる


「失礼します。王都からの使者一行がコグトス様にご挨拶したいと」


「わかりました。シーアさんもいっしょでいいですか?」


「了解しました、そう伝えます」


「あ、あと、ラフブさんこんにちは」


「はい!コグトス様こんにちは」


必ず挨拶。これを徹底している。使用人の皆さんも家族なのだ

家族なのだからおはようからおやすみはきちんと家族としてすることを父上が厳命した……まぁ命令してる時点であれなんだけど……でも最近は少しずつ皆さん柔らかくなってきた


ラフブさんが使者一行に説明していると「こんにちはといったほうがいいのか?」とか「令を失しては……」とか説明に追われていた

あ、こっちに来た


「初めましてお目にかかります、王都守護隊のオンタリオと申します」


「同じく、トラクスと申します」


「王都近衛師団3番隊副隊長のミリアと申します。近衛は基本的に王城守備から外れることはできないため、今回は守護隊を伴ってまいりました。要件は近衛及び陛下となりますので代理でわたくしが」


あー……目がすごい角見てる!これはあれですね


「みなさんこんにちは、コグトスです。となりにいるのがシーアさんで、ぼくのメイドさんで、けいびもしてくれています」


「存じ上げております、[終霜]シーラお会いできて光栄です」


「こちらこそ、[辻風]ミリアお噂はかねがね」


え?二人とも異名持ち?


「しゅうそう、さいごにおりるしもだよね?」


「その通りでございます。戦場で急に霜を見たら最後、進むことも戻ることもできない最後の戦場になります」


ほえー……


「つじかぜ、きゅうにできるたつまき?」


「その通りにございますおぼっちゃま。急に現れては切り刻まれて、フッと消えていなくなる。とても恐ろしい剣技をお使いになられます」


なるほど……すごい人たちなのはわかった。うん

シーアさんかっこいいな!


「しかし……あの冷たい目をしていた方がいまやこんなに笑顔でいらっしゃるとは……変わるものですね」


「人は変われると旦那様に教わりましたから」


「しゅうそうがおりたあとは、はるだもん」


「ふふふ……これは参りました。確かにそのとおりですね」


「ミリア様……そろそろ」


「えぇ。それではこれで失礼します。また後程」


「ばいばい」


手を振り返してくれた。


「シーアさんはすごいひとだったんだね!」


「いえ……若気の至りでしたので」


いや、今でも若いからね?美人だし


でもなんだったんだろうなぁ……あの人たち









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