第5話 ミャムという魔猫

私の名前はミャム。コグトス様が生まれる前にお屋敷に拾われて、今は家族になったわ。

人族に追われて、怪我を負って……気が付いたときはこのお屋敷のお庭だった


人族にとって私たちの毛皮は利用価値があるとかで、仲間も多く殺されてるわ……

何十人もで取り囲んでは、飛べないように網を投げてくるし、目や口を狙って突いてくるの……

恐ろしいわ……



コグトス様が生まれたときから私は虜になったのよ!かわいくて、ちっちゃくて、角が4本もあるの!きっと大人になったら素晴らしい男性になるに違いないわ!


毎日毎日見ていても飽きなかった。ころころ変わる表情、尻尾を見せるとキャッキャと尻尾を追うの♪猫の子と同じね!

そういえば赤ん坊だというのにあまり鳴かなかったわ。きっと賢いのね!


3歳になってすぐ病気になって、一度見たときはもう可哀そうだった……頬が腫れて、熱があるのか汗もすごくて……私はすぐに部屋を出たわ

私の抜け落ちた毛が、もしかしたら悪さをするかもしれないから……そう聞いたことがあるもの。呼吸ができなくなるんだって……


そんな日が何日か過ぎて、急にあわただしくなったわ!きっと病気が治ったのよ!そう思ったわ!でも、誰も私には教えてくれなかったからもしかしたら違うのかもしれない……


不安を抱えていたら急に領主様に呼び出されて、手紙を届けてほしいと言われたわ……もしかして、と思っていたら窓の外にコグトス様が見えたの!

なんで教えてくれなかったのよ!私は領主に抗議したわ!

顔と腕を引掻いてあげたわ!ちゃんと教えてくれないのが悪いのよ!ふんっだ!


窓から急いでコグトス様のところに飛び出して、すぐに撫でてくれたわ!嬉しいわ!

懐かしいにおい……でも少し違う匂いもするわ……大人になられたのかしら?


領主様が手紙をもって慌てて来たわ、拗ねてそっぽ向いてたらコグトス様からの熱い抱擁……もぅ……しょうがないんだからぁ……ウフフ♪

さっさと手紙を届けて早く帰ってこなきゃ!急げ急げ!


夜陰に紛れて女王陛下の執務室の窓を叩く、いつもこうしてるからすぐに開けてくれたわ


「ミャムか、ご苦労じゃった」


女王陛下はすぐに水を出してくれた。いつも用意してくれているのは多分自分のなのよね。ありがたくいただくわ


「ふむふむ、おぉ!回復したか!良き哉良き哉♪」


「みゃん!♪」


「うむうむ。そちも嬉しかろう。少し待つがよい、今したためる故」


そういって手紙を書き始める女王陛下

しばらくして執務室のドアが叩かれる


「陛下、失礼します」


「入るがよい」


入ってきたのは近衛長だった、真っ赤な角の女性騎士だ、確か領主様のお弟子さんだったかな?


「陛下……勝手に部屋に入れては困ります。もし悪意がある者だったらどうするのですか」


「大丈夫じゃ、こやつは……」


「わかっております。しかし、そういうことではないのです……例え見知ってる方であろうとも、気軽に部屋に入れられては万が一のことがございます……大丈夫と思っても隙を見て入ってくることも……」


「わかった!わーかったのじゃ!おぬしの説教は長いのじゃ……」


この二人はいつもこうね。早く手紙を書いてほしいわ……直ぐにでも帰ってコグトス様に撫でてもらいたいのに……


「ほれほれ、ミャムもイライラしてきておるぞ?あまり待たせては悪いと思わんか?」


「……申し訳ありませんミャム様……」


「みゃん」


許してあげましょう。今日は機嫌がいいの♪なんてったって熱い抱擁の後ですもの♪


「……なんか今日のミャム様は毛並みがツヤツヤですが……」


「良いことがあったからじゃろう。コグトスが回復したそうだ」


「え!?それはおめでたいではないですか!そうですか……ガルム様もさぞお喜びでしょう」


「うむうむ。後遺症も今の所見当たらず、完治であるという……誠に良い事じゃ!貴重な4本の角を持つ男の子、これが失われたとあってはどれだけ悲しき事か……」


「まったくもって」


「一度会いたいのぅ……」


「まったくもって」


「みゃぁ……」


何でもいいから早く書いてほしい……そう思うミャムであった

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