第1話 本当に大丈夫ですよね?

目を開けると見知らぬ天井がある。

転生したんだという実感と、記憶があるという事に少し安堵しつつも、恐らくこの体の元の持ち主だろう記憶もあることに多少混乱する


というか子供だった。手がものすごく小さい

恐らく3歳だと思う。そんな漠然とした記憶がある。誕生日パーティーみたいな記憶


しかしその後、流行り病にかかり生死を彷徨ったのだろう。苦しいという記憶が最後だった


そこで本当は死んでしまったのだろう。だけど転生してきた僕が入り込んで生き永らえたという感じになるのか。名前はコグトスというらしい。なんか強そう


ベットから体を起こしてあれこれ整理をしているとノックと共にドアが開いた


「失礼いたしま……」


数秒こちらを見たまま硬直したメイド服姿の巻角がある美しい女性が持っていたトレーを落とした


「だ……旦那様ぁああああ!奥様ぁああああ!」


慌てて飛び出していった16歳位の女性、確か名前は……シーナだ。とてもチャーミングな角の女性……え?


「角!?え!?」


慌てて自分の頭を探るとそこには4本の角があった……真上に伸びる角1対と側頭部の少し上側から前に突き出すように生える1対。計4本の角が生えてた


あー……魔族だった。うん。てっきり人族に生まれるとばかり思ってたけど。とういか人族って認識がある時点でなんかもうね


そんな物思いにふけっていると、ドタドタと速足で近づいてくる足音がする


「コグトス!大丈夫か!もう起き上がって平気なのか!?」


「あなた!まだ病み上がりなのですからあまり大きな声で騒いではダメですよ!?それにしても……大事なくてよかったわぁ……本当に心配したんですからね?」


そういいながら入ってきたのは父と母だった。父の名はガルド、母の名はシフォニアだ。うん記憶が落ち着いてきた


「ちちうえ、ははうえ、ごしんぱいをおかけしました」


うーん……まぁーそーだよねー……子供だもんねー。喋れるだけでも賢いほうなんじゃないか?そう思いたい


「おぉ!コグトスよ!よかった!本当によかった!」


なかなか精悍な顔つきの大男が滝のように涙を流しながらむせび泣いているのは迫力があるなぁ……


「コグトス……あぁ!本当によかったわぁ……痛いところはない?気分は悪くはない?」


そういいながら僕を抱きしめる母上は……ものすごいメロンが溢れております。いやすっごい美人だしスタイルがほんとに母親なのかと疑いたくなるレベル。できれば僕は母親似であってほしい。ほんとに


「ははうえ、もういたくありません。きぶんもわるくありません」


たどたどしいが精一杯の笑顔で答えると、きつく抱きしめられた。うんメロンで死んじゃう


「ぁぅぁぅ……」


「奥様、おぼっちゃまが……その……」


「あら!いけないわ。ごめんなさいね……本当にうれしくてうれしくて」


ナイス!シーナさん!息ができないほどとは思わなかったよ

窮地から脱したと思ったらおなかの音がぐぅぅぅぅぅっと鳴り響く。

食べてないからね。そうだよね


「おなかがすいたのね?すぐにご飯にしましょう!シーナ、お願いね」


「かしこまりました。すぐにお持ちいたします。」


そういってシーナさんが部屋を出ていく


「明日、医者に来てもらうよう手配しよう。もう一度しっかり見てもらったほうが安心できるからな」


「そうね。そうしましょう。コグトスちゃん、お夕飯ができるまで横になっているのよ?」


「はい。ははうえ」


そう言い残し両親が部屋を出て行く。優しい両親で安心した。とりあえずいろいろ知るのは後まわしだ。腹が減ってはなんとやらさ。



しばらくベットの上でぼんやりしているといい匂いがしてきた

ドアがノックされるのと同時にお腹が鳴る。


「ふふふ♪おぼっちゃまご飯お持ちいたしました♪」


微笑みながらシーナが入ってくる。おなかの音で返事したみたいで少し恥ずかしい


「ありがとう。シーナさん」


「今食べさせてあげますからねー♪はーい♪あーん♪」


あーんである!あーんが今!僕の目の前で起きているのである!


「あ……あーん」


人生初あーんである!感慨深いものがある!


「おいしくありませんか?それとも熱かったですか?」


不安げに見つめるシーナさん。いけないけない!どうやら表情に出ていたようだ!ここはひとつ、笑顔で対応しよう!


「とてもおいしいです!」


「うふふふ♪よかったです♪はい♪あーん♪」


ふっふっふ……笑顔で乗り切ってみせたぜ!いやいやテンション上がりすぎだ。落ち着こう

少し冷静になったところでやはり角が気になる。

父上は上に伸びた鋭く力強い角だった、母上は側頭部から前にかけて伸びるなめらかな曲線の美しい角だった。つまり僕はその両方を受け継いだわけだ


シーナさんはクルクルと巻いた羊みたいな角をしている

もぐもぐとご飯を食べながらやはり気になり、そっとシーナさんの角に触れてみると


「ひゃん!」


と、頬を染めながら驚いた顔で見つめられた

え?これもしかしてダメなやつ?なんかその……感じやすいとかそういうやつ?


「おぼっちゃま……角は異性が触れてはいけないんですよ?こ、恋人や夫婦でなければ触れてはいけないんです」


あー……ね。ダメなやつでした。これは完全にセクハラでした。


「ごめんなさい……」


「お、おぼっちゃまはまだそういうお歳ではないですから、こ、今回のことは問題ないですが……いいですか?これからは無闇に、異性の角を触ってはいけませんよ?勘違いされる女性が現れてしまうかもしれませんから。いいですね?」


「はい。わかりました。ごめんなさいシーナさん」


「わかっていただけて安心しました。おぼっちゃまは4本の、それはそれは男らしくも美しい角をしていますから、変な女性に引っかからないように気を付けなければなりません!」


「え?」


「どうしました?」


どういうことだろうか?変な女性に引っかかる?ん?


「なんで4ほんあるといけないの?」


「おぼっちゃま。角が4本あるお方は魔族の中でおそらくおぼっちゃまだけだと思います。今までそういう噂は聞いたことがございません。とてもとても珍しい事なのです」


「ぼくだけなの?」


「恐らくそのように思います。魔族にとって角のかっこよさや美しさは、一つのステータスなのですよ?」


そのあと話を聞くと、魔族は見た目や好み、地位や財産というよりもどちらかといえば角が好みかどうか?というところが結構重要らしい。

つまり僕は、かなりの女性を虜にしてしまう可能性があるらしい。

うん。なんか女神様ありがとう。本当にありがとう。

でも、やはり男性は優しいほうがいいらしい。








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