第6話 再会
言えなかった思いや連絡先や名前
何か1つでも聞けてたらと後悔に後悔が積み重なる
来週も会おうって約束したのあっちからなのに
約束破ったあいつにイライラしてきた
会えなくなって3か月
もう会えないことに悲しくなったりイライラしたりしない。
ただ脱力感だけが体に残る
まるで熱を失った太陽のように
今日は水曜日ノー残業デー
水曜日に1人になりたくなくて
予定を入れてたけど今日は何も立てられなかった
今日は残業ないけど予定もない。
近くのコンビニでお酒買って帰ろうっと
小さな予定を自分のデスクの前で立てた。
いつかの自分もそう思ったっけなんて思いながら
コツコツと革靴の音を鳴らして
駅近のオフィスを後に家の最寄り駅に着いた
私の家から近いこの最寄り駅に降りる人はそんなに多くないから
サクッとピッと定期を通すことができる
あ、あの人だ。と期待しても彼は現れるわけない
寂しいけど死にたくなるほどではない
久々にあのセブンでお酒買おうかな。
ほんの出来心で来たセブンはなんだか懐かしい感じがした。
彼が現れなくなってから来れなくなって
疎遠してたから余計そう感じる
お酒、何にしようかなと悩み
私は初めて最後まで飲むことが出来なかったあの缶ビールに手を出した
お会計をして「ありがとうございました」と
その声を聞きがらお店を出る。
セブンの袋を下げながら退勤路を歩いて橋まできた
そしてあの河川敷で呑もうとしたけど
胸が締め付けられ、何故か、涙が出そうになる。
心の傷少しも和らいでないじゃん。
私はここで呑むことが出来なくて家に帰った。
「ただいま」
誰もいない1人暮らしの家に
帰りを告げて
テレビをつけた。
テレビでは音楽番組の生放送が流れていて
あるバンドがメジャーデビューして新曲を披露すると騒いでいる。
窮屈を感じる靴下を脱いでいると
マイクの人は
今夜新曲を、歌い隠されていた素顔を
明かす!
なんて興奮気味で話している
私はソファに座ってビールのプルトップを開けた。
相手なんていないのに乾杯をして
テレビを見ながら苦いビールを一口飲む
にがぁ...
あの時の味と感傷に浸る
いよいよ新曲を発表するバンドが画面に映る
すると
涙が一筋流れて
また流れて、流れて、鼻水まで流れた。
なんで、なんで、と言いながら嗚咽まで漏れてきた
「初めまして、メジャーデビューして新曲を初めて歌わせていただきます」
そこにはスーツを着たスリーピースバンド
先頭のボーカルはよく知る顔
なんで全部隠してたの
涙が、涙が止まらないのに
河川敷で自分の歌流しながら酒飲むなよ。と笑いも生まれてきた
「披露する歌は新曲 また水曜日に 」
その新曲を聞いて私の涙はうれし涙に変わった。
だってその曲は...
缶ビールとスーツ みなみ @flum
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