第4話 苦い

ほろよいの底が付きそうな頃


「そろそろ時間でおいとましますね」と言われた


この人との話は面白くて


もう少し話したかったな。なんてこと思ってしまった


「はい、僕ももう少し話したいなと思っていました」


え、その回答はまさかまた...?


「私、いま、恥ずかしい事言ってました?」


「ははっ 恥ずかしい事は言ってないですよ。俺も同じこと思ってたんで」


言ってたらしい。もう少し話したかったなと心の声ではないところで


死にたい。やっぱりテキーラ買おうなんておもっていると


「よかったら来週の水曜日も話しませんか?」とお誘いをしてくれた


死にたくはなくなったけど恥ずかしいから

ほろよいもう1缶買って帰ろうと決めた


「はい、ではまた来週の水曜日に」


そう言って来週も会う約束だけして


「それじゃあ、また来週」と私たちは解散


そうして私はもう1度、


セブンでほろよいを買ってから家に帰り、

お風呂上がりに新しいほろよいに口をつけた。


既に来週、あの人に会えることを楽しみしてる私がいた

上がる広角、心拍数はお酒のせいにして家の電気を消して高揚感とおさらばした。


水曜日を楽しみに毎週、仕事こなしていった。


いつかの水曜日からは、彼と会う日に


彼は缶ビール、私はほろよいを買って、河川敷へ


話すのは世界平和や日本の未来なんて大それたことじゃなくて


仕事でこんなことがあった。とか実家のワンちゃんのこととか

他愛もない些細な話、それがたまらなく楽しかった


不思議とお互い、名前も連絡先も聞かなかった。

来週も会おうという約束だけ


彼と会う前の火曜日の夜、お風呂上がり寝る前は

いつも広角、心拍数が上がる。もう自分をだませない


私は彼に恋をしていた。


名前も、連絡先も、どこで働いてるかも分からない人に恋するなんて

思いもしなかった


彼はどう思っているのかなそんなことも聞けない


そんな中、今日も彼と乾杯


「やっぱりビールが一番だな。今日も一口いる?」


いつか一緒にビールを飲めるように、毎週一口だけ彼からもらった


「んん...確かに前よりはましだけど苦い...」


「ははっ、いっつもその顔してるね」


初めて会った日にも見せたその笑顔

私が苦い顔をするとそのかわいい顔を見せてくる


彼のビールを一口飲むだけで

思いあふれそうになるのにその笑顔なんてずるい


にやける口元を缶ビールで隠した

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