第3話 アラサー
「それじゃsoak流すね」
「あ、まってください。歌詞見ながら新しい曲聞きたくて」
「歌詞流しながら曲流せるよ」と自分のスマホを渡してきた。
「あ、ありがとうございます。そっちの方が歌に入れます」
お礼を言って曲を聴きながら歌詞を追う
リグレらしい演奏、テンポ、歌詞のきもさ
「やばいですね。特に...」
私は該当の歌詞をスクロールする
「いつまでも自分の事歌われる気分はどう
すぐにやめてほしい?じゃあもう帰っておいでよ
って言われたら震えますね」
リグレは元カノの事を忘れられない元カノの事を歌ったバンド
私もかつてはお付き合いをしたことある
その元カレにこんなこと歌われたら全身のありとあらゆる細胞が震えだす
一言で言うならきもすぎる
でもなぜか癖になる不思議なバンド
メジャデビューしてほしいけどしてほしくないそんなバンド
顔出しもされてなくて素性は隠されていた
「ですよね?この歌はリグレ史上一番やばいと思うけど
むしろ好きになったんですよね笑」
隣に座る彼は笑いながら言うと缶ビールを一口含んだ
「たしかに、やばいけど好きかも」
私も合わせてほろよいを一口含む。
「普段何されているんですか?」
「ふつーにOLですよー」
「OLさんか、なんとなくそんな気はしていました」
笑いながらそういった顔は少しだけかわいかった
私もこの人がなんの仕事をしているかには興味があるから質問をする
「逆に何をされてる人なんですか?」
「俺もフツーに会社員ですよー
水曜日は早く上がらせてもらってるんでここで一杯だけ飲んでるんです。」
あ、飲んでる姿見てたのって毎週水曜日だったんだ。
飲んでるのは知ってたけど毎週決まってたなんて思いもしてなかった
こんな風に他愛もない話をして、ほろよいを半分も飲んだ頃
私は思ってたこと
こんなとこで呑む理由を聞こうと思い、アラサー(仮)は
失礼に聞こえないように段階的に質問することに始めた
「何度か見かけたことがあって実は顔見知りでした笑」
「俺も駅で見かけるなって思ってましたよ笑」
「お互い顔見知りだったんですね笑」
談笑というジャブを繰り出す
「河川敷でもよく見かけてて、ビール飲んでるなと思ってました」
「正直、スーツ着てこんなとこで飲んでたらやばい人だと思った?笑」
ハマった!ストレート決まった!
私の自然に気になることを自分から質問させるテクニック
これが今年アラサーのテクニックよ!
このガッツポーズを水面下に潜まして冷静に対応する
「そんなことはないですけど、どうしてここで飲んでるかは気になります」
理想的質疑応答。我ながらあっぱれだ
「この雰囲気が好きなんですよね。そして目を閉じて聞くんです
草のざわめき、川の声、たまに過ぎる車と人の音。
これは居酒屋には出せないなって」
だからここで呑むんです。と言う顔をしている
私も目を閉じて聞いてみた。草のざわめき、川の声、たまに過ぎる車と人の音を
「確かに悪くないですね」
河川敷否定派だったけど呑む理由を
1mmくらいは理解出来ちゃった
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