#10〔邂逅〕
俺は絶句する。
『武器屋ゼータ』で装備を受け取ってから3日。爺さんの孫を護衛するために再びここに来ているのだが……
「女じゃねーか!」
グッと爺さんの首に手を回して小さな声で怒鳴るという器用な芸当をこなす。
サラサラとした金髪に透き通った蒼目。美しい顔立ちに冷ややかな表情。
………本当にこのジジイの血が混ざってるのか?
「そうだぞ。男などと一言も言っとらん。女と言えばお前が受け入れんかも知れんと思ってな。」
そりゃそーだよ。と言いたくなるが請け負った以上、最善を尽くさなければ俺のポリシーに反する。
「初めまして。私はフィルル・オトシープと言います。よろしく。」
「レナ・ゼータ。こちらこそよろしく。」
目も合わせずに小さな声でいう。
「なかなか重い荷物だから、お前さんが通りにある馬車まで運んでくれ。」
「はいはい。」
黒曜で出来た剣、純白の鎧、刺繍のなされた手袋、龍を象った像などなどの装備品がずらっと並ぶ。これを運ぶのか、と億劫な気持ちになるが、それを表情に出すのは三流のすることだ。
俺は傷付けぬよう丁寧に運ぶ。中にはガラスでできた物もあったために内心ビクビクしていたのは言うまでもない。
全ての荷物を運び終え、ゼータさんが馬車に乗ったのを確認した後、俺とリュカも乗り込む。
リュカが引いていけば確実に早く着くだろうが、既に馬が準備をしていた。
「ん?御者は誰がするんだ?」
てっきりそういった人を雇っているものだと思っていたが、どうやら誰もいないらしい。かと言って俺もそんなことはしたことがない。
「私がやる。」
言ったのはレナだ。
「出来るのか?」
「そりゃそう。これぐらい出来る。できない奴はどうかしてる。」
ふむ。なかなか手厳しいようだ。
「そうか。リュカも着いて行くのだが、いいな?」
「この子が爺が言ってたフェンリルね。」
おいジジイ。無茶苦茶口軽いじゃねーか。もしここにジジイがいたらぶん殴ってたぞ。
「もちろんいい。この子がいれば安心。」
「そうか。ありがとう。」
「そういえば——どこまでの護衛になるんだ?」
「爺はそんなことも伝えてないの?」
「あぁ、聞いてないな。」
「はぁ、まったく。」
心底呆れたと溜息で告げた後、疑問にも答える。
「聖都市よ。——聖都市アスタリスクよ。」
✳︎ ✳︎ ✳︎
能力比で言えば、戦士2に盗賊8。その場合、1つの職業として数えられる。
腰に短剣を何本か忍ばせ、身を真っ黒なローブに纏う。比較的華奢な体躯に見えるが、それは違う。極限まで削り取られた脂肪。重量こそ感じさせないが、その肉体は筋肉だけで構成されている。
そんな者が十数人。
——暗殺者。
これが、この者たちが就く職業だ。
そしてその最前線に、
「聞け!我々はこれより任務遂行のため、アスタリスクに向かう!任務の成功を神に祈り、そして成功を捧げよ!」
告げた後、前に向き直る。信仰を捧げる
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