第5話 クモスケも仲間になった
「ん?」
そこで初めて、俺は足元に身体が半分近く溶けて瀕死状態の蜘蛛がいることに気づいた。
ぷるるんの酸にやられたらしい。
手のひらくらいの大きさだ。
形は
ピクピク痙攣している姿が痛々しい。
(あ、可哀想……)
俺は害虫を退治してくれる蜘蛛が好きだ。
巣の真中で獲物を待ち構えている毒々しい色の蜘蛛を見かけると、指先でツンツンと突いてしまうくらい好きだ。
俺は【診察Lv.3】で蜘蛛を調べた。
*
種族:魔物・令嬢蜘蛛
主属性:闇
従属性:風
技能:隠密Lv.1 糸操Lv.1
*瀕死状態(【治療Lv.3】で完治)
*
「令嬢蜘蛛っていうのか。なんで令嬢なんだろう……おっ、治せる」
早速【治療Lv.3】使用。
みるみるうちに蜘蛛の身体が癒されていく。
一分もしないうちに完治した。
途端に、
『令嬢蜘蛛を配下にしますか?』
「え、こいつも!?」
蜘蛛はその場にじっとしている。
こちらを見ながらドキドキしているのが、なんとなく伝わってくる。
「配下にしてほしいのか?」
試しに訊いてみると、蜘蛛はわしゃわしゃと足を蠢かせた。
してほしいといっている……のかな?
んー、まあ蜘蛛は好きだし、別にいいか。
「配下にする」
『令嬢蜘蛛が配下になりました』
早速、蜘蛛がわしゃわしゃと足を動かして俺の身体を這い登り、俺の頭の上にちょこんと乗った。
「おまえの名前はクモスケ!」
俺からは姿が見えないけど、名前をつけられて喜んでいるのが伝わってきた。
*
――さて、出発する前に、他の技能を試してみるか。
【統率者』の付属能力【共有Lv.1】は、俺と配下の間で技能を共有できるらしい。
たとえば、クモスケの【隠密Lv.1】を、俺やぷるるんも使用可能にすることができる。
ただ【糸操】やぷるるんの【酸弾】のように種族特有のものは、他の種族は共有できない。
こういったことも、昔から知っていたかのように頭に浮かぶ。
【隠密Lv.1】だったら、俺やぷるるんでも使えるよな?
俺は【共有】で【隠密Lv.1】を俺とぷるるんに振り分けてから、それぞれのステータスを見た。
*
名前:雪宮和也
種族:人間
主属性:闇
従属性:
称号:統率者*
称号付属能力:配下Lv.1 契約Lv.1 共有Lv.1 共感Lv.1 伝心Lv.1
技能:診察Lv.3 治療Lv.3 収納Lv.2 「生活Lv.1」 剣術Lv.1 刀術Lv.1
*共有能力:隠密Lv.1
*
*
名前:ぷるるん
種族:魔物・森スライム
主属性:闇
従属性:水
技能:酸弾Lv.1 狂乱Lv.1
*共有能力:隠密Lv.1
*雪宮和也の配下
*
おお、ステータスに反映されてる!
試しに【酸弾Lv.1】を俺とクモスケに持たせてみようとした。
こちらは当然ながら反映されなかった。
「クモスケ、ぷるるん、【隠密Lv.1】を使ってみてくれ」
俺も使った。
エネルギーが動いた感覚があったような気がするが、実際どうなのかはよくわからない。
ただ【隠密Lv.1】が発動していることだけははっきりわかる。
また、クモスケとぷるるんの気配が薄くなったようにも感じる。
不思議なものだ。
「んじゃ、行こうか」
俺たちは改めて森道へ向かった。
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