過去を想う7

 もっともそうやって色々と学びながら金が溜まり、実際にやりたい事ができるようになったかというと、そうはならなかった。

 まずはじめに貯めている途中から一番上の兄が金の無心をしてきたからだ。母伝えで金を貸し、その金は学校費用であると伝え、絶対に返してくれといい、絶対に返すと言葉を貰ったが、結局は一円も帰ってこなかった。その時は大変な時期だから安定してから返してくれればいいとも思っていたし、それを伝えていた。また金を貸したのは僕だけでなく、二番目の兄も母に渡していた。そうして僕だけで三年間で到達したのは三百万近くのお金である。それも、一番上の兄に関する事だけで。

 それとは別に母親は金を別に僕に借りていて、それを含めたらこの時点で600万近くにわたっている。だからこそ、僕は土曜日も出ていたし、世間的に休みの時も稼ぐ必要があったので働いていた。このために働いている訳ではないと思いながらも、ただ大変な時期だし、返してくれればいいと自分を納得させながら。

 行きたい学校費用自体は専門学校であり、費用的に600万近いのが――実際には四年間ではもっと行く計算――必要だった。だからこそ時間をかけて行う必要があったし、先の分からない職業であるから、安全性をつくり、金をより多く確保する必要もあったため、目標自体は1000万を目指していた。だからこそこれを払えていたし、でもそれとてなんども行えば底をつく。無限でないのだ。

 しかしながら、結局のところ馬鹿は馬鹿だということなのだろう。金は一円も戻ってきていない。むしろそれ以上に膨らんでいる。この後にも兄だけでなく、東日本大震災において僕の両親の親が住んでいたのは被災地であり、また親戚もそちらに集まっていたからだ。またそれもあってどうにも自分は被害を受けていないのに母親が更に精神的にぶっ壊れたのも原因としてある。

 最終的に僕は一千万以上を渡して、それは一円も帰ってこないという事になった。残ったのは壊れた体と心だけだった。

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