過去を想う4
対して父親はどうだったのかというと、やはり世間的に見てはおかしかったのだろう。少なくともパチンコ狂いの酒のみであり、なおかつコミュニケーションが取れない人であった。例えば僕が小さい頃からパチンコには毎週行っていたし、暇があれば行くような人であった。また酒は毎晩呑んでいて、これも休みの日にも呑んでいた事から飲酒をやめられない人間だったのは確かだ。そして何よりも言葉を話さない人だった。何せ僕が幼少の頃から言葉という言葉は言わない人で、僕は父親と会話というのを一度もした記憶がない。大抵の場合においては会話ではなく、単語だった。少なくともキャッチボールのようなことは一度もしたことがない。
そうした人間だったので、僕からしてみれば良く分からない人間であり、世間が思えるような――例えば遊びをしてもらうとか、どこそこに連れて行ってもらうような間柄ではなかった。なにせ大抵の場合においては年齢が上の人間が下の人間側に気を使って話しかけるとかだろうが、向こうは何も言わないのでこちらから毎回のごとく話しかけて歩み寄ろうとしていたぐらいである。もっともそれも意味がなく、話はしても意味がないと学んでしまったが。
今から考えると父親もまた、どこかで何かおかしかったのかもしれない。少なくとも会話を行う事がストレスだったようで、それはどこか価値観かあるいは認識がおかしかったのは確かだろう。
もっとも夫婦中が悪かったわけではないから、その面は良かったのだろう。とはいえそれが家庭の親としての機能を果たしているかと言われたら別であるが。
そうした事から、父親というものが家庭内においては良く分からなかった。思い出という思いでも無いので僕の認識は良く分からない人というそれであり、そもそももらったものがほぼ無い以上は親の面をされても困るというのが本音だったのだ。
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