過去を想う3

 とはいえそうなると自分に出来る事はほぼ無いということになる。少なくとも自分の年齢などを考えた場合は、けしてそれが正しい事だとしても下に見ている相手である以上は人はそれを受け入れられないだろう。本来ならばそれを受け入れる方が正しいし、その方がいいのだが、それを受け入れる事が出来る人間であるならばこうはなっていなかったし、そもそも自分を顧みて良くないと考えることができた筈である。だとするならば、やはり出来る事は僕にはなかったと考えるのが妥当だった。

 もちろん自分にも力量という意味で落ち度があったと言われれば、その通りなのだが、あまりにも土台がなっていないのであれば、どれほどの言葉をやればいいのか分からないというのが正直なところである。中学生でも理解ができるような事さえも理解ができないのである。「分からない分からない」という言葉を言いその場から逃げるような相手に対しての対応は少なくとも、僕には無理だった。普通の内容ですら聞こうとせず、その場でグルグル回るか何かしらの言い訳のような事を言いながら外に逃げ、何もしないような人間に対して必要なのは少なくとも病院や医者や薬であって、言葉ではないというのが事実だった。もっとも本人である母は自分が奇行を行っている事すら自覚をしていなかったが。

 自覚がない、というのが余計によろしくなかった。自覚があるならば、それ相応に手立てをたてるか、あるいは反省もできるが、本人は自分こそが一番偉く、一般的であると考えている。しかしながら個人のルールというものはけして正しいものではない。そうでなければ国などないし、そもそも主義主張など生まれないなのだ。だというのにそれを認識することすらできない人間であり、その上約束すら守らない――言ってしまえば子供と同じだったのである。

 たぶんであるが、知的障害かあるいはそれに近いのだろう……というのが、僕の結論だった。病院でハッキリさせてしまえば一番いいのだが、それらを受けるだけの度量がない人間であるので行ったところでどうにもならないのが現状であった。

 

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