第8話 名の無い名画

『無名の名画たち』という個展は、

世の中に出回っている絵の、作者の名前が定かではないものを集めた個展だった。


シンプルな真っ白い部屋に、色んな感性で描かれた絵が飾られてある。


しばらくすると剛田さんたちが来た。


剛田「結構狭い作りのビルだから、部外者が現れたらすぐにわかりそうだな。」


學「そうですね。…今までは価値がある絵ばかり盗っていってたのに何故この個展にある絵にしたんでしょうか。」


2人で頭を悩ませていると、1人の警官がなぜか窓の換気を始めた。


學「何してるんですか?」


余計な通路を作りたくないと思い、声をかける。


「ここを管理してる人に言われたんです。この昼時の時間は換気をする決まりあるそうで。」


學「その人は今どこに?」


「外に行きました。」


なんで自分に開けに来なかったんだ?

自分の管理している絵が狙われているのに、なんで外に行ってしまうんだ?


學「場所は分かります?」


「そばのコンビニ行くと言ってました。」


俺はそれを聞いて、その場を剛田さんに任せてコンビニに向かう。

すぐに帰ってくるんだろうが、その人の不審な動きが気になってしまい体が勝手に動く。


走って30秒の所のコンビニに着く。

コンビニに行くなら相当軽装なはず。


財布とコートのみの人を探すが一向に見つからない。

今さっきの話なのに、いない。

近くであればここのはずなのになぜいないんだ?


俺はとりあえず個展に駆け足で戻っていると、この人混みの中を器用にスルスルと抜け、大きなリュックを背負って羽根つきフードを被った男がこちら側に走ってくる。


こんな街でも俺にみたいに忙しい人はいるんだなと思っていると、すれ違いざま嗅ぎ覚えのある匂いがその人から香り、俺はその人を目で追う。


その背中にあるリュックの端が中に入っている物が大きいからか角が尖っている。

ちょうどラトローが狙っていたあの絵と同じくらい。


俺はそれを思い出し、個展に向かうと外で慌てている剛田さん達に会う。


學「あれ…?なんで中で見張らないんですか?」


剛田「すまん、また盗られた。」


學「あ…。」


俺はもしかしてと思い、あのフードの人が走った方向に急いで戻ったがさすがに追いつく事は出来なかった。


でも、あれがラトローだとしたら…。


俺は知っている。

あの残り香と、背格好。


そう考えたく無いけれど、聞いてみる価値はある。


俺は荷物を中に取りに行くと時、ふと見えた新しいゴミに目が行く。

そうか、ごめんな。友達失格だな、俺は。


俺は、携帯を出し連絡を入れた。


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