第7話 テスト
数週間後、無事期末テストが終わった。
その間、ラトローは1度も盗みを働かなかった。
めぼしいものは無かったらしい。
俺は勉強に集中出来たため、割と普段よりもいい点数を取れて満足だった。
けれどやっぱり幸には敵わない。
幸の答案は完璧に近いほどの点数で、漢字の棒が1本足りないだけだったり、数式を書かないといけなかったのに暗算で解いてしまったりと本当に不思議な凡ミスばかり。
「すごいなぁ。3年経っても幸に敵わなかったよ。」
「たまたまだよ。學だってすごいじゃん。3点違い。」
「そうだけどさー、やっぱり1回は1番になりたかったな。」
「そういうもんかー。」
答案返却中の教室で、普通にあのコーヒー牛乳を飲み続ける幸。
まあ、テスト返却の時は毎回無法地帯になるので先生もいちいち注意しない。
これで学校のテストは気にしなくて良くなる。
後は、ラトローと大学受験に向けて勉強するだけだ。
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あれから数ヶ月経ち、大学試験のテストが終わった帰り道、俺は繁華街に向かった。
ずっと欲しかったニットを買いに行くために、人混み溢れる歩行者天国を歩き進める。
みんな少し前のバレンタインのチョコの話や、もう春物を買おうか悩んでいる話をしたり様々な会話が聞こえてくる中お目当てのデパートまであと少し。
ルンルン気分で、足を運ばせていると見たことある人影を見る。
「あれ、幸?」
思わず声を出すが、全く幸はこちらを振り向きもせずに、人混みの間を縫って行ってしまう。
幸もたまには遊びに出てるんだなと思い、幸が出てきたビルを見上げる。
そのビルの下には、『無名の名画たち』とシンプルな題名が書かれた看板が置いてあり、階数が書いてあるだけだった。
他の階は一般企業のものなので、多分この個展を見たのかなと予想する。
幸は美術が好きなのかー。
3年も一緒にいた仲でも知らないことがあると痛感する。
俺はそのままお目当てのニットを買いにデパートに入り、店に向っている途中電話が鳴る。
事務所からだ。
「はい。」
『ラトローの予告状を見つけたとの報告を貰った。休日の所すまんが、よろしくな。』
「…わかりました。」
『場所はメールで送ったからよろしく頼む。すまんな、今度お詫びも含めてご馳走しよう。』
「…頑張りまーす。」
電話を切り、メールで場所の確認をする。
あれ…、今俺がいる繁華街の住所だ。
アプリに住所を入れて、細かい場所を調べるとあの個展が開かれていたところだ。
俺は走ってその場に向かった。
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