第6話 寝不足

次の日学校に行くと、幸が机の上に突っ伏して寝ていた。

いつもは本を読んでいるのに…。

それだけ身長を伸ばしたいのか。


俺は静かに席について昨日やり損ねた問題集を開き問題を解いていく。

けれど中々集中できない。

本物のラトローが来たというのに、自分の不注意で取り逃がしてしまうなんて。


[ブブッ…]


携帯のバイブが鳴る。


俺はポケットに入っている携帯を取り出して、

メールを確認する。


事務所からだった。


昨日ラトローに取られた絵はまた寄付されたらしい。


…ラトローは寄付が目的なのか。

それとも自分の欲しかったものではないから寄付しているのか。

そこさえも掴めない。


色々と理解してきた俺だけれど、ラトローの本心がわからない。


「…あ、おはよ。」


幸が突っ伏したままこっちを見る。


「おはよう。夜更かししたのか?」


「まぁね、やることあったから。」


「寝ないと育たないらしいからちゃんと寝ろよ。」


「僕にはこのコーヒー牛乳があるから。」


と言って、幸がポケットからあのまずいコーヒー牛乳を出す。


「牛乳だけじゃ育つものも育たないだろ。」


「カルシウムを馬鹿にしちゃダメだよ。」


「してはないけど、幸の栄養バランス皆無だってこと。」


「それはそうかもなー。」


ポケーッとしながら、コーヒー牛乳を飲み始める幸。

よくまずいって分かってて飲めるよな。


俺はまた問題を解き始め、HRを待つ。

少しするとチャイムが鳴り、バタバタと外にいた生徒が自分の席に着く。


そのあと先生が来て点呼をとり始める。


「テストっていつ問題出来るののかな。」


幸が俺に聞いてくる。


「確認もあるから最低3日前には出来てるんじゃない?」


「ふーん。そっか。」


「なんで?」


「何となく気になっただけだよ。」


「…?」


ちょっとした違和感はあったが、幸は何考えているのか分からないことが時々あるので今日もそんな日なんだろうと俺は落とし込んだ。


そして授業が始まり、あっという間に昼ご飯。

今日は昨日のこともあってあんまり集中出来なかった。本も4〜5ページぐらいまでしか進まなかったし…、特に眠い。


幸と俺は屋上の階段の踊り場で、ご飯をすることにした。

昨日の件でまた人が集まってきたら面倒だったからだ。


幸はまたおにぎりとコーヒー牛乳。

思ったけど食べ合わせ気持ち悪くないのかな?


「これ、いる?」


俺は幸に自分の買った唐揚げ弁当を差し出す。


「え?いいの?」


「タンパク質も大事だよ。」


「ありがとう。」


幸がからあげを一つつまんで口に入れる。


「久しぶりに食べたかも。」


「家で揚げ物しないんだ?」


「うん。面倒だしね。」


「美味しいけど、後片付け面倒って母さん言ってたな。」


俺もご飯を食べながら幸とたわいもない話をする。

この時間だけは俺の悩みを消してくれるのでとても貴重な時間。

大学に行ってもたまに会ってこうやって話が出来たらいいなと1人思った。

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