第5話 隙間

俺の思うところを重点的に人を配備してもらい、時間がくる。


俺はあの金庫の前にいるが、全く変わった様子がない。

そのまま5分経つ。


「…来ないのか?」


「そんなこと今までなかったでしょ?」


剛田さんと話していると、ひとりの警官が走ってやってきた。

帽子をとても深く被っている。


「不審者がこの館内に入ったのことです。」


剛田「そうか。學くん、私は不審者を追ってくるよ。」


學「わかりました。」


剛田さんとその警官が走って部屋を出る。


また偽物が下手こいたんだな、と俺は若干仕事を放棄し始める。


近くにあったテーブルに腰をかけて、金庫をみる。

すると少し隙間が空いている。


「なんで隙間が開いてるんですか?」


「酸欠にならないように開けとけと言われたので。」


「そんな必要ないだろ?絵画専用の場所ならちゃんと換気が行き渡ってるはず。誰に言われたんですか?」


「…名前はわからないです。」


「新人か、ほかの管轄の方ですか?」


「いや…、そこまでは…。」


俺はそれを聞き、金庫の中を急いで見に行く。


…やられた。


中にいたはずの警官が外に出されている。

真ん中に置いてあった絵画は無くなっている。


俺は外や中の配置で頭がいっぱいになっていたから、周りの一人一人の行動に目をやれていなかった。


「ラトローが奪っていった。」


みんながざわつき、一斉に無線で連絡し始める。

こんなに人がいてもバレないのはラトローの手口だ。


俺はざわつく警官たちをよそにとりあえず怪しい車がないか、外に出て見に行く。


銀行の周りにはたくさんのパトカーがあって、周りが見えにくい。

俺は大通りが見えるところまで走った。


…だめだ。もうラトローはいない。


10分近く予告時間からすぎている。

これはラトローが逃亡するには十分すぎる時間。


俺はため息をついて近くにあった腰掛けに座る。


すると隣にはコーヒー牛乳の飲みかけが置いてあった。

学校と同じところの製品らしい。

幸がまずいと言いながら飲んでいたが、売れて入るらしい。


俺は近くのゴミ箱に捨て、剛田さんに謝りに行った。


今日は最悪だな。

ラトローが出てきた機会をこうも簡単に逃してしまうなんて。

俺は1人反省会をしながら家に帰った。

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