好き嫌い
黒百合咲夜
あれが好き。これが嫌い。
人間が作り出すものが好きだ。
物語、文化、歴史。例を挙げればきりがない。後世にまでずっと残り続けるものを作り出すことのできる人間が好きだ。
人間が嫌いだ。
自分を始め、すべての人間は自分の視点でしか物事を考えることができない。他者の考えや思いを真に理解することはできない。越えてはいけない一線を軽々しく越えてくる。
闘争が好きだ。
平和で争いのない世界などあってはならない。適度な闘争で生態系のバランスを整え、地球を維持していく必要がある。また、闘争なくして進化はありえない。
闘争が嫌いだ。
醜い一面をさらけ出し、獣へと堕ちる争いが多い。まったくもって馬鹿馬鹿しい。闘争とは人として行うべきであり、獣として行うものではない。
綺麗事が好きだ。
聞いていて安心できる言葉。理想となる世界がそこに広がり、聞くものに夢と希望を与える言葉。迷う人を救う言葉。
綺麗事が嫌いだ。
所詮は中身のない空虚な言葉。各個人が自分のエゴで作り出した、一時の逃げ道。向き合う必要もない。
人権や道徳が好きだ。
地球に生きるものの根源に根ざす考え。今の世を動かしていくのにも必要で、これなくしてはどうしようもない大事なもの。人を尊重する大切な考え。
人権や道徳が嫌いだ。
所詮は人の自己中心的考え。人は尊重されても、犬や猫、その他動物はあまり尊重されない。あくまで、隷属的な立ち位置が揺るがない。
平等が好きだ。
誰しもが変わらない。皆、同じ生き物として等しく扱われる。差別のない、誰もが憧れる世界に必要不可欠なもの。
平等が嫌いだ。
そんなものありはしない。この世のシステムとして、常に上下は必要である。今のシステムでは不十分。過去、力のない者が虐げられたあの頃の不平等せいこそが、醜く汚くも美しい社会のあり方。
正義が好きだ。
誰かのために自分を差し出せる。悪に対して否を突きつけることのできる勇気あるもの。周囲を正しく導いていく先導者。
正義が嫌いだ。
奥底では何を考えているのか分かったものではない。誰かが騙る正義も、それはその誰かにとっての正義であり、同時に別の誰かにとっての悪。自らの考えを周囲に強制するプロパガンダ。
討論が好きだ。
自らの考えをぶつけながらも、相手の意見を取り入れよりよく自分の考えを発展させていく。相手もまた同じ。そして、自分が見えていなかった事柄を認識させてもらい、相手が見えていなかった事柄を認識させてあげることができる。人類の進化の過程の一つ。
口論が嫌いだ。
何一つ得るものがない。ただただ自分の考えをぶつけるだけで、相手を言い負かそうという意地汚い魂胆が見え隠れしている。自分の考えを真実と思い込み、他者の意見を間違いだと決めつけるその様は、まるで低俗。
好き嫌い 黒百合咲夜 @mk1016
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます