第457話:重い契約書の取り扱い
「あの〜、平八さんが使った方法って、何なんですか?」
始祖の曖昧な言葉に、たまらず茜が言葉を挟んだ。
「それは、教えられないな。まぁ教えたところで誰にでも出来るものではないのだが。
一応
それに、その方法を知ったとしてももはや意味はない」
「意味はない?それって・・・」
聡太がそう言いながら始祖を見つめていると、
(やっと話が進むな)
心の中で呟きつつ、始祖は重清達を見回した。
「正式な方法でここに来たお前たちには、これを受け取る資格がある。
これを使って、我らが作った忍者を、さらに良いものにしてくれ」
そう言いながら始祖は、『始祖の契約書』を重清達へと差し出した。
「ちょっ、タイムアウトっ!!みんな集合っ!」
突然のことに重清は叫んだ。
重清の叫びを聞いた聡太、恒久、茜はすぐさまそれに反応して、重清の元へと駆け寄った。
その顔には一様に暗い色が浮かんでいた。
それは、重清もまた同じであった。
「え?俺も?」
「あなたはまぁ、いいんじゃないかしら」
唯一重清の言葉に反応しなかった近藤は、自身を指さしながらチーノへと語りかけ、チーノはそれに肩をすくめて小さく答えていた。
それを聞いた近藤は、面倒くさそうにため息をつくと、出されていたお茶へと手を伸ばしながら重清達へ声をかけた。
「おいお前ら。俺とショウの再戦だけは、ちゃんと守れよ!」
そう言った近藤は、お茶を一気に飲み干してその場に寝転ぶ。
「そんなに言うなら、行けばいいのに」
「面倒くせぇんだよ。あのお人好し共が俺の約束を破るも思えないからな」
チーノへとそう返した近藤は、そのまま目を閉じた。
プレ「あいつ、寝たぜ?」
ロイ「ほっほっほ。なかなかに豪胆なやつじゃのぅ」
カー「先輩っ!痛いですって!」
プレッソとロイはそう言いながら、チーノの隣で呑気そうに座りこみ、カーちゃんは何故か
そんな具現獣達の会話を頭の隅に押しのけながら、重清達4人は真剣な顔で向き合っていた。
先程の始祖の言葉は、彼らに同じ想いを与えていたのだ。
「「「「始祖の契約書とか、重い!」」」」
そう。彼らはまだ、忍者となって2年目の中学生なのだ。
そんな彼らに突然『始祖の契約書』で忍者を良いものにしてくれと言われても、ただ重いだけなのである。
シゲ「いやいや、おれらには分不相応でしょ」
ツネ「だよな。あんなもの持ってたら、周りからどんな扱いされるのかわかったもんじゃねぇぞ」
アカ「でも、あれをみーちゃんやノリさんに渡したら―――」
「あー、先に言っておくが、この契約書を持つことが許されるのは君達4人だけだからな」
「詰みじゃねぇか!」
茜の言葉を聞いていたかのように希望を打ち砕く始祖の言葉に恒久がつっこみ、一同は肩を落として見つめ合った。
そんななか、聡太が小さく手を挙げた。
「おっ、我が右腕ソウ君。何か良い案でも?」
「司令塔ね。それよりみんな、ぼくに1つアイデアが―――」
いつもの返しをしながらも話し始める聡太の言葉に、一同の暗い表情は次第に明るくなっていた。
シゲ「それいいじゃん!流石はおれの右腕っ!」
ツネ「いや、もうソウが司令塔に決定だ!ソウ、ナイスアイデアだ!」
アカ「そうね!それはいい考えよ!流石は次期部長!いや、もうシンさんとか押しのけて今すぐにでも部長でいいわ!」
ツネ「え?部長は俺だろ?」
聡太の提案に一同はテンションを上げ、意気揚々と始祖へと向き合った。
「どうやら、誰がこの契約書を受け取るのか決まったようだな」
そう言う始祖に、重清が口を開いた。
「いや、誰もそれは受け取らないよ」
「なに?」
重清の言葉に、始祖は眉をひそめた。
「それは出来ぬぞ。『約の術』でここに来たお前達は、この契約書の正当な持ち主となることは決定事項だ」
「でも、それって契約書の中身を変えちゃえばどうにでもなるよね?」
重清がそう言うと、聡太が言葉を続けた。
「ぼく達は、個人でその契約書を持つことは拒否します。
その代わり、その契約書の持ち主を忍者協会に委譲します」
「そんなものが認められるかっ!あの様な腐った者たちにっ!」
それまで黙っていた允行が声を張り上げた。
「はっ。俺達だって、ただ協会に渡すつもりはねぇさ」
それに答えるように恒久が言った。
「契約書は、毎年1度だけ、今日と同じ日に内容を変更することができるようにする。
協会には、その案を考えさせる」
「ほぉ。しかし、それではその『腐った協会』とやらの都合の良い内容にされるのではないか?」
始祖がそう言うと、
「だから、その案を認めるかどうかは、投票制にします」
茜が答えた。
「投票には、忍者の契約書を使います。それを持っている人は、どこからでも投票が可能なように。
それで過半数以上が賛成した案だけが、その『始祖の契約書』に反映されます」
「なるほどな・・・」
茜の言葉を聞いた始祖は、感心したように呟いた。
「他者を信じるだけでなく、皆の意見を反映させる。
中々良い案ではないか。
しかし、その方法には1つ大きな問題があるぞ?」
そう言って、始祖は重清と恒久に目を向けた。
「お前たちのような『血の契約者』と呼ばれる者たちはどうするのだ?お前達は忍者の契約書を持っていないではないか。
ならばその投票とやらに参加することもできん」
「そこがこの案の最大のミソなんだよねぇ〜」
重清は、そう言ってニッと笑った。
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