第432話:風魔への道
茜、雅、そして都が女子会を楽しんでいる頃、重清は聡太、ノリと共に風魔本家へ向かうために、山奥を進んでいた。
「ってか、おれいる?元々風魔本家には、ソウとノリさんが行く予定だったじゃん」
険しい山道に疲れ切った重清が、不満の声を漏らした。
「だって、シゲだけ行くところもなくて暇そうだったから」
聡太はそう言いながら、重清へと振り向いた。
プレ(重清、文句言ってねぇでちゃっちゃか歩けよ)
チー(そうよ。男らしくないわね)
ロイ(まったく。だらしの無い主じゃのぅ)
重清の頭に、具現獣達の声が響いてきた。
「お前らはいいよなぁ。人の中で休んでんだから。
みんなちゃんと覚えてる!?大将のおっちゃん達が襲ってきてから、まだ全然時間経ってないんだぞ!?
まだ忍力だって回復しきれてないってのに・・・」
呑気に言う具現獣達に、重清は不満そうに呟いていた。
「それにさぁ、なんでこう本家はみんな街から離れてるんだよ。行くのすげー面倒くさいじゃんか。ただでさえ美影が捕まってて、時間無いってのに」
「あ、それはぼくも気になったかも」
重清の言葉に、聡太も頷き返した。
「本家ってのはこの本にある、始祖様の弟子達の末裔だと俺は推測している。
昔から忍者として活動する為に身を隠すのには、人里離れたところに住むのがうってつけだったんだろ」
ノリは、平八の本を取り出して2人へと声をかけた。
「じいちゃんのもう1つの本。さっきその本の中身は読んだけど、それって本当にあったことなのかな?」
「俺は、真実が書かれていると思っている」
「それだけ、平八さんを信頼しているんですね」
「いや・・・」
聡太の言葉に首を振ったノリは自信たっぷりに、
「平八様に、これほどの物語を考える才能は、絶対に無いと思っているだけだ」
そう、言い切った。
「じいちゃんが聞いたら泣いてたろうね、そんな信頼のされ方」
「そんなこと言ったって事実なんだから仕方ねぇじゃねぇか。あの人、1度俺の話を書籍化したことで調子に乗って、何度か自分で物語を作ったんだが、どれ1つとして全く面白くなかったんだからよ」
「うわ、その話聞いてたらおれの方が先に泣きたくなるほど恥ずかしくなるわ」
祖父の悲しい過去に耳を塞ぎたくなる衝動に駆られた重清は、ある事を思い出した。
「でもそういえばじいちゃん、おれが小さい頃はよくお話ししてくれてたなぁ。その時の話は、全部面白かったような・・・」
「平八さんの作った話かぁ。ねぇシゲ、それってどんなお話だったの?」
「どうせ、忍者が主人公だろ?」
「そうそう!おれや兄ちゃん達が忍者になって、冒険する話。ノリさん、よく分かったね」
「大体想像はつく。多分その話は平八様が作ったんじゃなく、全部平八様自身の話が元になってるはずた。
あの人、自分で作った物語よりも、実際に経験してきたことの方がよっぽど波乱万丈だからな」
「事実は小説より奇なり、ってやつだね」
聡太の言葉に苦笑いを浮かべて頷いた重清は、ノリへと目を向けた。
「そういえばノリさん。風魔って、どんな人達?
以前の雑賀家みたいに、契約忍者を見下してたりするの?」
「まぁ、似たようなもんだが雑賀よりたちが悪いって噂だ。
風魔は、契約忍者だけでなく、風魔以外の忍者全てを下に見ているらしいからな」
「らしいって。ノリさん、風魔本家の人に会ったことないの?」
重清は、ノリの言葉に首を傾げた。
「ないな。風魔本家は協会の会議にも顔を出そうともしないらしいからな。ま、風魔本家以外の忍者とはつるむ気がねぇってことなんだろ」
「そんなところに、雅さん抜きで大丈夫なのかな」
聡太は不安そうに目の前の山道を見つめていた。
「それについては、俺も雅様に確認したが・・・『大丈夫』の一言でな。まぁ、とにかく行ってみないことには始まらねぇだろ」
ノリがそう言って進むのを見つめながら、聡太と重清は肩を落として歩くのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます