第419話:トウ
「黒い、忍力・・・トウさん。やはりあなたは・・・」
トウから溢れ出る黒い忍力を見たノリは、そう言ってトウを見つめていた。
強く握られたノリの拳からは、血が滴り落ちていた。
「流石はノリだ。私が渡した雑賀平八の書で、気付いたか」
ノリとトウがそんな会話をしている
「ちっ。まだ治癒が終わらないね」
雅は忌々しそうに舌打ちをしながら、ノリと向き合うトウに叫んだ。
「さっき聞いていたが、こいつは『絶対無敵』って力を持っているんだろ!?現にこいつは以前、あたしの術も防いでいた!なのになんであんたに、こいつを傷付けられたんだい!?」
雅の言葉に、トウはさらに黒い忍力を放出させた。
「ノリの嫁にも言ったではないか。年期が違うと。こいつらとは、力の練度が違うのだ。練度が高ければ相手の能力を破ることができることは、簡単に想像がついていたからな。
あぁ、そういえばノリ。結婚おめでとう」
雅に答えつつ、トウはノリへとこの場に似つかわしくない祝いの言葉を投げつけた。
「あ、ありがとうございます」
それに対してノリも、律儀に一例を返していた。
トウを含め、ノリの結婚を願っていた面々にとって、もはや花園との結婚は決定事項のようである。
当の花園は、一切結婚を承諾していないのにも関わらず。
おそらく、この場に雑賀平八がいたならば、彼もまた妻雅と共に泣いて喜んでいたであろうこの状況に、重清達中学生(+高校生1名)は、もはや凶気すら感じていた。
そして同時に思っていた。
(カオルン(カオさん)可哀想)
と。
そして、この場で最もモテない男恒久は、心の中で誓っていた。
(ちゃんと相手の気持ちは確かめなければいけない)
と。
そんな生徒達の気持ちも虚しく、何故か花園は、知らぬ間に外堀ばかりが強固に埋められていくのであった。
それはさておき。
トウの言葉を聞いた雅は、ゴウに『治癒の術』を掛けながらさらにトウへと問いただした。
「あんたの口ぶりじゃ、まるで今日初めて試したように聞こえるがね?」
そんな雅に、トウは肩をすくめた。
「当たり前ではないか。これまで、私以外にこの力をここまで発現させることができたのは、この場にいる者たちだけなのだからな。それ以外は皆、貴様ら忍者に捨てられてしまったわ。
これが、あのお方が望んだ忍者の姿とは、涙が止まらぬわ」
「あのお方・・・それは、貴方から頂いた平八様の書籍に記されていた、始祖のことですね」
ノリが、トウを見据えた。
対するトウは、その言葉に頷いて答えた。
「そう。我ら忍者を作り上げた、お前達の言う始祖のことだ」
「まさか、貴方は、あの書籍にあった、初めてその黒い忍力を発言させた、
トウを見つめたままそう言うノリの瞳をじっと見るトウは、フッと笑みを浮かべた。
「子孫、か。残念だが違うな。允行は、子を作ることなど無かった」
そう答えたトウの体から、さらに黒い忍力が溢れ出し、それは次第にトウの頭上で文字を作り上げていった。
『不老不死』
「不老不死。これが、雑賀平八の書に記された允行の力だ」
「ま、まさか・・・」
「流石のノリも、そこまでは考えが及ばなかったようだな。
そうだ。私が、私こそが允行。この世で初めての契約忍者。そして・・・」
そこで言葉を止めた允行の顔に、仄かな悲しみの色が浮かんだ。
「この世で最初に、貴様ら忍者に捨てられた者よ」
そう言って膨大な黒い忍力を吹き出す允行に、ゴウの治療を終えた雅が襲いかかった。
しかし允行に向けられた拳は軽く弾かれ、雅はすぐにその場から離れた。
「ふん。不老不死だかなんだか知らないが、長生きの割にやることが陰湿すぎやしないかい?
不満があるなら自分で動けって話だよ」
自身の攻撃を軽くあしらわれた事に若干苛つきながらも、雅は允行を睨みつけた。
「陰湿だと?それは貴様ら、忍者の方であろう。ただ他と違うという理由で、『捨て忍』などという腐った制度を作りおって。そのせいで、一体何人の者たちが涙を呑んだと思っているのだ」
「そんな捨て忍達を駒のように操っていたあんたがよく言うよ!」
「仕方あるまい。忍者共を消すためには、私だけでは動きにくかったのだからな。
大事のための儚い犠牲というものだ」
允行は倒れるゴウに目を向けて、言い切っていた。
シゲ「なんか、物騒な話になってるね」
ソウ「いや、それ言うならまぁまぁ前から物騒な感じになってたよ」
ツネ「まぁ、さっきまでは結婚祝福ムードだったけどな」
近藤「お前ら、いつもこんなに緊張感ないのか?」
未だに話しに入れない重清達は、トウの姿に色々と驚きつつも、呑気に話していた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます