第417話:これにて終幕?

「は?えぇ?結婚!?怖い!忠移、この人怖いわ!!」

花園は、殴り飛ばした男甲賀ノリからの突然のプロポーズに、困惑していた。


「あぁ、カオルン今、ノリさんの命狙っちゃったもんね〜」

狼狽える花園に、重清が呑気に声をかけた。


「シゲ君!?なにそれ、どういうこと!?」

ユキ同様、余裕がなくなって間延びした声でなくなった花園が、重清へと詰め寄った。


「ノリさん、自分の命を狙った人と結婚するのが、夢だったからね。じいちゃんとばあちゃんみたいに」

そう言いながら重清は、雅へと目を向けた。


花園が重清を追うように、そしてあわよくばどうにかしてもらおうという希望を込めた眼差しを雅へと向けた。


「ノリ・・・よかったねぇ・・・やっと、出会えたんだねぇ・・・平八、遂にノリが、結婚だよ・・・」

雅は1人、感動に打ちひしがれていた。


(あれぇ?私もう、結婚することになってるのぉ?)

そんなむせび泣く雅から漏れ聞こえる言葉に、花園が戸惑っていると。


「はっはっは!」

ゴウが笑い始めた。


「まったく、平八殿の周りには、おかしな連中ばかりが集まるな。

カオも良かったな。早く結婚したいと言っておったではないか」

「いやぁ、言ったけどぉ。それは忍者を全て消してからでぇ・・・

そもそもぉ、これは違ぅ〜。思ってたのと全然違うのよぉ〜〜」

師であるゴウすらも助け舟を出さない状況に、花園は完全に戦意を喪失して座り込んでいた。


「大丈夫かい?薫」

そんな花園に、既に彼氏面のノリが優しく声をかけていた。



ツネ「俺ら、何を見させられてんだ?」

ソウ「ぼくに聞かないで。ぼくだって、まだこの状況カオスに追いつけてないんだから」

ドウ「安心してください。私も完全に置いていかれてます」

近藤「ちっ。こんな奴らについてきていたかと思うと、バカらしくなってくるぜ」

恒久、聡太、近藤、そしてドウまでもが、その光景を呆れた目で見つめていた。


チー「なんだか、変な空気ね」

グリ「・・・そう、みたいね。ゴウ様・・・」

聡太達同様に重清達の様子を遠巻きに見ていた智乃が妖艶な笑みを浮かべると、成り行きを見つめていたグリもまた、肩を落としてそう呟き、ゴウをじっと見つめていた。



襲撃してきたリーダーとも言えるゴウはただ爆笑し、方や襲撃された重清達を救いに来たはずの雅は号泣している。


そしてノリは、それはもう甲斐甲斐しく、精神的に落ち込む花園を介抱していた。

その一因が、自身にあるにも関わらず。


その光景はまさに、聡太の言うとおりカオスな状況であった。


ちなみにユキは、未だに重清の記憶によって引き起こされた絶望を拭いきれず、1人ガタガタと震えていたりする。


そんなカオスな状況を、それまで笑っていたドウが打ち破った。


「お前達。もう、いいのではないか?」

ドウはそう言いながら、弟子であるグリ、ドウ、ユキ、そして花園へと目を向けた。


「「「「・・・・・・・・」」」」


ゴウの言葉に、それぞれ思うところある4人はただ、黙って俯いていた。


「雅殿」

そんな4人から雅へと視線を向けたゴウは、むせび泣く老婆へと語りかけた。


「始祖の契約書が受け継がれていない以上、我々はもう、雑賀重清を襲うことはしない。このまま、見逃してはくれないですかな?」

そんなゴウの言葉に、ノリが前へと進み出た。


「お待ち下さい。あなた方、捨て忍と呼ばれるあなた方に、力があることはわかりました。だったら、このまま去るのではなく、協会で、このクソッタレな捨て忍制度を辞める手助けをしてくれませんか?」

「・・・良いのか?我々は、何度もお前たちを襲ったのだぞ?」


「そりゃぁ、何も罰がないってわけにはいかないでしょうけど・・・」

ノリはそう言って、花園愛する人に悲しげに視線を投げかけた。


「条件は、カオとの結婚か?それならば、儂が許可するが・・・」

「ちょっとぉ〜!勝手に決めないでよぉ〜」

笑いながら言うゴウに花園が抗議の声を上げると、ノリは首を振った。


「いえ。そうではなく、そのへんは何かしらの罰をと言いたかっただけで。我々が口利きはするので、そう悪いようにはならないと思ってください。それに、薫との結婚は、あなたに認めてもらう必要はないですよ。

もう、決まったことですから」

ノリはそう言って、花園に思いっきりウインクした。


「決まってない!私、OKしてないっ!怖いわ!古賀先生、凄く怖いっ!!古賀先生を見る目が、180°変わっちゃった!」

またしても焦る花園が、間延びしない声で叫んだ。


「ふっ。やっと俺を、男として見てくれるようになったんだね、薫」

もはや脳内が完全にお花畑状態のノリは、花園の言葉に顔を赤らめていた。


「うわ。ノリさんが美影みたいになっちゃってるよ。って、あれ?そういえば美影は?」

呆れた目でノリを見つめていた重清は、いつの間にか姿を消した美影を探し、キョロキョロと辺りを見渡した。


「美影さんなら、田中さん琴音を追いかけていったよ。そのくらい、気付いてあげなよ」

重清にそう言いながら、聡太が重清へと近づいてきた。


「おぉ、聡太。そっか、美影が琴音ちゃんをね。大丈夫かな?」

「うん、多分大丈夫だと思うよ。さっきまで、特に怪しい気配はしてなかった―――ん?」

途中で言葉を止めた聡太に、重清が不思議そうに目を向けていると、ゴウが弟子たち4人へと声をかけ始めていた。


「お前達。これまですまなかったな。だが、甲賀ノリが言うように、我々はこれから、我々の仲間となる者たちのために働くことができそうだ。これから、さらに忙しく―――」

ゴウが言葉を止めたことに、弟子たち4人が訝しげな目を向けていると。


「ゴフッ」

ゴウは突然その口から血を吐き出した。


「お、親父?」

1番その場に近かったユキがゴウを見ると、ゴウの体から、1つの腕が、突き出していた。

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