第412話:甲賀 ソウの成長
ところ変わって聡太はというと。
神出鬼没なニヤケ男、ドウの猛攻を見事に避けていた。
「凄いですね。あれから1年ほどしか経っていないのに、私の『空間移動』に対処できるようになっているとは」
ドウは自身の攻撃を避けられてなお、余裕の笑みを浮かべて聡太へと語りかけた。
「しかし・・・」
ドウは聡太の『
空間移動
捨て忍の1人、甲賀ドウの発現するこの力は、文字通り空間を自由に移動することができる。
しかし聡太は、その高い感知力によりドウの空間移動による一瞬での移動をも捉え、その攻撃を避けることが出来るようになっていた。
しかし。
「言いたいことは分かります。いくら避けられても―――はぁっ!」
そう言いながら聡太は『
「そう。どれだけ避けようとも、私に攻撃が当てられないのであれば意味がない。
どれだけ続けようとも、このままではあなたの方がスタミナが尽き、いずれは捉えることができるでしょう」
ドウは笑みを浮かべたまま、聡太を見つめていた。
「わかってます。このままだと、どうしようもないってこと。でも、あなたの攻撃を避けることが出来るようになっただけでも、自分の成長が知れて満足です」
聡太もまた、ドウを見つめて笑みを返した。
「おや。この場面で笑うとは、もう、諦めるのですか?」
「はい、1人の力であなたに勝つのは、諦めます」
「まさか、誰かと組めば私に勝てるとでも思っているのですか?」
ドウはそれまでの笑みを嘲笑のそれへと変えて聡太へと投げかけた。
「ブルーメ、お願い、手伝って」
「待ってましたぁっ!」
ドウの言葉を受けた聡太の願いに歓喜したブルーメが、アクセサリーから龍へと姿を変えて聡太の首元へと巻き付いた。
「龍?そんな小さな龍が、あなたの切り札なんですか?」
ドウは声を上げて笑いながらブルーメを見つめていた。
「切り札も切り札、ぼくのとっておきですよ!ブルーメ、いくよ!『
「おっけい!」
聡太の言葉にブルーメが応えると、その体が光へと変化した。
孵化するよりも前、聡太の忍力を日々蓄えていたブルーメの忍力量は、これまでに存在したどの忍者よりも多い。
それは、雑賀平八すらも超えるほどの忍力量となっていた。
ブルーメが普段アクセサリーとして聡太の首元に鎮座するのは、なにも聡太から片時も離れたくないからだけではない。
そもそも具現獣は、具現者の忍力によって具現化される。
それはつまり、具現獣がその忍力量において具現者を上回ることへと繋がっている。
しかし、ブルーメは違う。
その強大すぎる忍力量は、聡太のそれを大きく上回っているのである。
もしもブルーメが、重清や他の忍者達の具現獣のように聡太の中へと入ろうとすれば、その忍力は聡太を確実に害し、死をも与えてしまうほどの忍力量なのである。
そんな莫大な忍力を持つブルーメを、聡太は『獣装の術』でその身へと纏ったのだ。
それはつまり、ブルーメの忍力を纏うというである。
ブルーメの、強大な忍力を。
「っ!?」
『獣装の術』によりブルーメを纏った聡太を見たドウは、言葉を失った。
緑の鱗に全身を覆われ、頭に2本の角を携えた聡太が、そこにただ立っていた。
にも関わらず、ドウはその場を動くことすら出来なかった。
本来具現獣を体の一部に装備することのできる『獣装の術』であるが、目の前の少年は全身にその特徴が現れていた。
それだけでも異様な光景なのだが、ドウの目にはそれ以上に驚くべき光景が映っていた。
龍の鱗に覆われた聡太の体から、その周りが歪んで見えるほどの濃密で強大な忍力が溢れていたのである。
「あ、あ・・・・」
そんな聡太に一瞬恐怖を感じたドウは、それでも自身を取り戻し、体制を整えるべく『空間移動』を発動し、その場から姿を消した。
(何という忍力。このままでは―――がっ!)
聡太から離れた場所へと移動したドウが聡太の忍力に警戒していると、突然その背に衝撃が走った。
「そんな・・・」
吹き飛びながらドウは、いつの間にか自身の背後に現れていた聡太を驚愕の目で見つめながらも再び『空間移動』を発動した。
しかしドウが姿を現すのと同時にその背後には再び聡太が現れ、そしてまたドウは吹き飛んだ。
キャンプ場での襲撃とは逆に、今度はドウがさながらピンボールのように聡太から吹き飛ばされ続けていた。
そして幾度かドウを殴り飛ばした聡太は移動をやめ、ドウを見つめた。
「もう、この辺でやめませんか」
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