第395話:当主押し付け、もとい当主争奪戦 その8
「行くぞ!重清っ!」
火を纏う剣を構えた浩が、重清へと向かって走り出した。
「来いっ!浩兄ちゃん!!」
重清は浩の言葉に返事をすると、メ型へと変えたマキネッタを構え、氷の弾丸を撃った。
真っ直ぐに浩へと向かった氷の弾丸は、そのまま火を纏う剣へと着弾し、火ごと剣を凍らせた。
「よしっ!」
「甘いっ!」
軽くガッツポーズする重清の言葉を遮るように浩が叫ぶと、再び剣に火が灯り、重清の氷は霧となって消え去った。
「うわっと」
そのまま振るわれた浩の剣を慌てて後方に跳んで避けた重清は、浩へとマキネッタを撃ち続けながら距離を取った。
「おぉ、見事に全部避けられた」
浩から離れた重清は、自身の撃った弾の全てが避けられたことに、呟いた。
「なに呑気なこと言ってんだよ重清!公弘が言ってただろ!?ちゃんと技の力を意識しろよ!」
そんな重清に、
「いや、ちゃんと技の力は込めてるんだけどな。それでも浩兄ちゃんが余裕で避けるんだよ。そういえば公弘兄ちゃん、他にも何か言ってなかったっけ?」
「『当たれぇ〜っ!』って念じろって言ってたな」
「いや、最後は根性論!?」
プレッソの言葉に、重清はおもわずつっこんでいた。
「でも、言ったのは公弘だぞ?」
「そこなんだよね。公弘兄ちゃんが言うと、それでどうにかなりそうだから怖いよね」
「だったら、ものは試しだろ?次は、思いっきり『当たれぇ〜っ!』って祈ってみろよ」
「へいへい。じゃぁいくぞ、マキネッ―――」
「相変わらず無駄話が多いな、重清」
重清がマキネッタを構えようとした瞬間、重清は背後から浩の声を聞くのと同時に、その背に衝撃を受けて吹き飛んだ。
「くぅっ!」
久しぶりに誰かの攻撃をまともに受けた重清は、それでも空中で体勢を整えながら浩へとマキネッタを向けた。
(技の力、それから・・・)
「当たれぇっ!!!」
(ピロリンっ♪)
発射と同時に、重清の脳内に着信音が鳴り響いた。
「重清のやつ、いい術を持ってるな」
浩はそう呟きながら、重清の放った弾丸を避けた。
「っ!?」
これまでならばそのまま浩を通り過ぎてしまうはずの重清の弾丸がUターンして浩へと向かってくるのを見た浩は、声にならない声を漏らしながらその弾丸を剣で弾いた。
そのまま浩は、霧散する弾丸から、重清へと目を向けた。
(まさか、今のは雑賀本家の『百発百中の術』?
美影様の重清への態度から、契約を許されるのは分かるが・・・
何故今まで使わなかった?
いや、そういえば公弘は、リタイアする直前に変なことを。
あれは、『百発百中の術』と契約するためのアドバイスだったのか?
ということは重清は、この短時間で『百発百中の術』と契約を・・・・)
浩は驚きの目で、重清を見つめていた。
「あれ?今おれの弾丸、めっちゃ曲がらなかった?」
自身の放った弾丸の行方を見た重清は、
「あぁ。まるで美影みたいだったな」
「美影??」
プレッソの言葉に重清が首を傾げていると、外野から美影が叫んでいた。
「重清!やっと『百発百中の術』と契約できたのね!お祖父様に頼んでおいたのよ!重清が契約の条件を満たしたら、すぐに認めて欲しいって!」
満面の笑みを浮かべながらそう言う美影の言葉を聞いたプレッソは、銃のまま重清へと声をかけた。
「だってよ、重清」
絶対に、猫や玲央の姿であればニヤニヤしているであろうその言葉に重清は、
「あー、納得。美影が使ってた、『百発百中の術』か。ん?待てよ・・・」
そう返して1人考え始めた。
そして。
「いいこと思いついちゃった」
そう言うと、じっと重清を見つめている浩へと目を向けた。
「浩兄ちゃん!おれ、『百発百中の術』使えるようになったみたい!今から強いの行くから、一応気をつけてねっ!」
そう言って重清は、忍力を指先へと集中させ始めた。
「まったく。戦っている最中に相手に注意するなんてな。どこまでも呑気なやつだ」
浩は苦笑いを浮かべながらも、臨戦態勢をとった。
(俺の予想しているとおりだと、確かに重清の言うとおり、注意しないとヤバいのも確かだな)
そう考える浩をよそに、重清は2本の指先を浩へと向けた。
「いっくぞーっ!!『百発百中の術』、からの〜」
「ドカンっ!!」
そう叫んだ重清の指先から、サッカーボール大の忍力の塊が浩へと向かって発射された。
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