第393話:当主押し付け、もとい当主争奪戦 その6

「うわっ!ちょ、麻耶姉ちゃん!危ないって!」

「あんたを狙ってんだから、危ないに決まってるでしょ!」

麻耶の蹴りを避けながら情けない声を出す重清に、麻耶の厳しい声が返される。


「麻耶姉ちゃん、うわっと。蹴りに磨きがかかってんじゃん!おっと。そんなん当たったら、一発KOだって!ほいっと」

「そう言いながら軽々と避けてんじゃないわよ!相変わらず腹立つわね!」

いつものように麻耶の蹴りを避け続ける重清に、麻耶の怒号が飛ばされる。


「じゃぁこっちも、反撃させてもらうよっ!」

そう言いながら重清は、マキネッタを麻耶へと向けて発砲した。


「くっ!」

身を翻して発射された3つの弾丸を避けた麻耶は、そのまま重清へと迫り、蹴りを放った。


「痛ってぇ!!」

それを、水の忍力を纏った腕で受け止めた重清は、声を上げながら麻耶から距離を取った。


「金の忍力なのに、全然吸収できなかった!」

痛む腕を押さえながら、重清は麻耶からは目を離さずに叫んだ。


「麻耶の術の練度が高いんだよ!お前の付け焼き刃の忍力で、それだけ防いだだけでも大したもんだ!」

マキネッタプレッソのそんな言葉に、


「マジか。もう少し水の忍力も鍛えとけば良かった」

重清は苦笑いを浮かべた。


「いつの間にか水の忍力使えるようになったみたいだけど、まだまだそっちの練度は低いみたいね」

渾身の蹴りを受け止められたことに驚きつつ、麻耶は重清へと声をかけた。


「このまま終わらせてあげるわ重清!」

「うわ、麻耶姉ちゃんやる気満々だよ」

「お前も少しはやる気出せよ」

相変わらずの重清の呑気な声に、プレッソは檄を飛ばした。


「わかってるって。それよりプレッソ、しばらく撃つの任せていい?」

「大忍弾か?」


「そ。『弾丸の術』でマキネッタに装填しながらだと、集中しないと難しいからね」

「大丈夫なのか?」


「ま、今の麻耶姉ちゃんなら大丈夫でしょ」

プレッソの言葉に、重清は笑ってそう返した。


実は重清の作り上げた『大忍弾の術』、ノリを簡単に傷付ける程の威力から、中学生である忍者部員達への使用を禁じられている。


それ程の威力を麻耶へ撃つ事を心配したプレッソであったが、麻耶の術の練度を見た重清は、なんとかなると判断したのである。


麻耶が、既に『中学生』でないことも判断材料ではあるのだが。


「ま、当たらないと話にならないんだけどね」

重清はそう呟きながら、麻耶の攻撃を避けつつ、マキネッタによる攻撃をプレッソに任せて集中し始めた。




「うわうわうわっ!!ちょ、浩さん!少しは手加減してくださいよ!」

公弘が、迫りくる火、岩、鉄の砲弾をギリギリで避けながら情けない声を上げていた。


「そう言いながら簡単に避けているじゃないか公弘。まだまだ余裕があるみたいだな。チュウ、君も手を貸してくれ」

宙に浮かぶ3振りの剣の剣先から、『火砲かほうの術』『岩砲がんほうの術』『金砲きんほうの術』による砲弾を公弘に発射しながら腕を組んでいた浩は、肩に乗る麻耶の具現獣、チュウへと声をかけた。


「チュウっ!」

チュウは元気よく返事をすると、ターザンのように鞭で宙を自在に逃げ回る公弘へと走り出した。


岩針いわばりの術っ!)


プレッソが公弘のために作り上げた足場に乗ったチュウは、そのまま足場を利用して公弘へと飛び込みながら、術を発動した。


「ちょ、チュウまで出てきたよ!」

そう言いながら公弘は、鞭をもう1本具現化するとそれを盾のように丸くして、迫る岩の針を防いだ。


「ほう。やるじゃないか、公弘!」

その様子を見た浩は、楽しそうに笑って公弘へと大声を上げた。


「いや、俺は頭脳労働派なんですって!せめて重清と組ませてくださいよっ!」

「よく言うよ。自分から重清と別れたくせに。どうせ何か企んでるんだろ?」


「いや、重清といると危ないからですよ!俺は、少し後ろから重清に指示さえ出せればよかったのに!」

肩を落としながら叫ぶ公弘を見た浩は、


「そろそろ終わらせるか。太っ!」

そう言いながら公弘へと向かって走り出した。


「ヤバっ、幻破りの―――」

「遅いぞ、公弘っ!」

浩の言葉と共に、太の『弱化の術』により力の出力が抑えられた公弘は、成すすべもなく浩の拳を胸に受けてそのまま結界の方へと吹き飛んだ。


「武具伸縮の術っ!」

吹き飛びながら公弘は術を発動し、その手に持った鞭を伸ばした。




「よっしゃ、準備完了っ!麻耶姉ちゃん、いくよ!」

同じ頃、大忍弾の術の準備ができた重清は、そう叫ぶとマキネッタを持たない手を前に突き出すと、2本の指を麻耶へと向けて叫んだ。


「ドカンっ!!」

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