第392話:当主押し付け、もとい当主争奪戦 その5
「うわっ、浩兄ちゃん達、向かって来てるよ」
「だな。重清、ちゃんと俺を守ってくれよ?」
無駄話をしている間にしっかり作戦を整えた浩達が向かってくるのに気付いた重清の言葉に、公弘は笑顔で返した。
「重清、お前の兄ちゃんってホントに頼りがいがあるな」
「そう言わないでくれよ」
プレッソの嫌味に苦笑いを浮かべながら、公弘はプレッソに目を向けた。
「あ、プレッソ。さっきの足場、また作ってくれると助かるよ。あれがあると、逃げるのに凄く便利だからさ」
「はいよ」
プレッソはそう返事をして、空中にいくつもの足場を作り上げた。
「助かるよ。それから2人とも、裕二からの伝言。ここからは、銃化をオススメする、ってさ。俺も、その方がいいと思うぞ。じゃっ!」
公弘はそう言うと、プレッソの作り上げた足場に鞭をかけ、そのまま空中へと飛び上がった。
「公弘、守れとか言いながら、真っ先に逃げたな」
「だね。公弘兄ちゃん、大学入ってから勉強ばっかりで忍者としてない活動なんてほとんどやってないみたいだからね。
それよりプレッソ、公弘兄ちゃんはあぁ言ってたけど、どうする?」
「あいつらの言うとおりにするのは癪だけど、公弘と裕二だからな」
「だよね。って、麻耶姉ちゃんこっちに来てるし、とりあえず銃化いきますか」
プレッソの言葉に頷いて返す重清は、向かってくる麻耶に目を向けながら『具現獣銃化の術』を発動した。
具現獣銃化の術
お忘れの方も多いだろうが、現在唯一の契約者であり管理者は重清となっているが、元は重清の兄、裕二の作り上げた忍術である。
そう。自分の作った術に『どこでも素潜りの術』なんて名前をつける、あの裕二作なのである。
それなのに何故、『具現獣銃化の術』という、比較的まともな名前がつけられているのか。
それは、公弘のおかげである。
元々雅より、重清のために術を作るよう言いつけられた2人であったが、具現獣を銃化させるというアイデアは、公弘の発案なのだ。
幼い頃からシューティングゲームの得意であった重清の事を考えての発案であったが、術を作るにあたり、公弘は裕二にきつく言い含めていた。
「術の名前は、絶対『具現獣銃化の術』だからな!!」
と。
これはもちろん、自身が発案したからその名付けの権限を寄越せという意味ではなく、可愛い弟である重清に、残念な想いをさせたくないという兄心なのである。
裕二は、
(そんなに自分が発案したって主張しなくてもいいのに。ま、俺が使うわけでもないし、実際に考えたのは兄さんだから別にいいけどさ)
と、1人別方向で納得していたらしいが。
と、それはさておき。
『具現獣銃化の術』により重清の手元に現れた『
ちなみにマキネッタ、今回はカ型である。
中距離用である銃口が1つのメ型ではなく、銃口が3つある近距離用のカ型を重清が選択したのは、事前のほとんど役に立たなかった作戦会議の中で公弘が、麻耶を『武道家』と表現したからだったりする。
「
自身に向けられた3つの銃口を目にした麻耶はそう言いながら、その脚に忍力を集中させる。
麻耶が1中校区内の森に住む風魔
恒久が同じく呉羽より契約を許された『
「『
体の力を纏う重清を見た麻耶は、苦々しそうに重清を睨みながらその強力な蹴りを重清へと放った。
対する重清は、麻耶が2中忍者部に通い始めて何度も受けたように、その蹴りを『鉄壁の術』を発動して受け止めた。
「うわっ!」
しかし麻耶の蹴りは、鉄壁ごと重清を吹き飛ばした。
「こっちは高校で、みっちりしごかれてるのよ!今までの私だと思ったら大間違いよっ!」
重清を吹き飛ばした麻耶の叫びに、体勢を整えた重清は、
「おぉ。麻耶姉ちゃん、めちゃくちゃ術の練度上がってる」
「あれで本当に、重清よりちょい弱めなのかよ」
感心したように呟く重清に、
「ま、どっちが強くても関係ないよ。
こっちはノリさんのお蔭で格上との手合わせにも慣れてきたからね。
ちょうどいい相手ができたと思って、やれるだけやってみよう」
「相変わらず、行きあたりばったりだな」
そんな声の漏れる
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