第371話:2つの依頼

聡太の具現獣となったブルーメが仲間に加わり、さらに騒がしくなった忍者部。


中忍体まで残り1か月を切った忍者部での修行は、その殆どが中忍体模擬戦となっていた。


ケンを私怨で殴ったノリも、その後は大いに反省し、それまで以上に師らしく生徒達を指導するようになっていた。


そんなある日。


「悪い、急な仕事が入った。今日は俺抜きでやってくれ」

社会科研究部の部室へとやって来たノリは、既に集まっていた一同にそう声をかけると、そそくさとその場を後にした。


「えぇ〜っと・・・」

ノリが部室を出るのを見守っていたシンは、


「とりあえず、に行くか」

掛け軸を指しながらそう言って、一同と共に忍者部の部室へと入っていった。



部室に入ると、一同の目がとある箱へと集中した。


「依頼、だな」

シンが全員を代表して呟いた。


彼らの前には、依頼書の投げ込まれた箱がポツンと佇んでいた。

まるで早く依頼を解決して欲しいという依頼者の想いを表すかのように。


「えっと・・・こういう時って、どうするんですか?」

ユウが先輩達の顔を覗き込みながら、囁くように言う。


依頼は本来、顧問であるノリが統括しており、内容を精査したノリが、生徒達に振り分けているのである。


この日、仕事で席を外しているノリにそんなことができるはずもなく、そうなるとこの依頼は明日に持ち越しになるのかと心配する、心優しいユウの言葉に、シンは笑顔を向けた。


「安心しろ。こういうとき、一応部長である俺に任せられてるから。

内容を見て、簡単なものだったら俺らだけで処理していいことになってんだよ。

まぁ、依頼主は分からない様になってるから、最終的にはノリさんに報告することにはなるんだけとな」


シンはそう言いながら、依頼の入った箱へと手を伸ばした。



「よし。この依頼は無視しよう」


部長権限で先に依頼書に目を通したシンはそう言うと、慌てるようにその依頼書を箱の中へと押し込み始めた。


「ちょ、シンさん目が泳いでる!それ見せて!」

シンの様子を見た茜は、そう言うとシンの手から依頼書をひったくり、皆の前に広げた。


「あっ、ちょ!」

慌てるように叫ぶシンを無視した一同が見つめるその依頼書には、依頼者の切実な叫びが記されていた。


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彼氏との大切な思い出が詰まったキーホルダーが無くなってしまいました。

絶対に校内にあるはずなので、探してください!

彼氏とキーホルダーと合わせると、ハートになるキーホルダーなんです!

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「あぁ・・・・・」

依頼内容を見た全員が、シンへとなんとも言えぬ視線を送っていた。


「はぁ。こんな大切な依頼を無視しようとするなんて、サイテー」

茜がシンにそんな言葉とともにジト目を投げつけていると、ユウも強く頷きながら、


「シン先輩、ひどいです」

そう言ってシンを睨みつけていた。


「ユ、ユウまで・・・」

普段優しいユウからも蔑んだ目を向けられたシンは、肩を落として落ち込んでいた。


「あれ?依頼書、もう1つ入ってない?」

そんななか、1人呑気にそう言った重清は、『意見箱』と書かれている箱から紙を取り出した。


「えっと・・・シンさん、これ・・・」

落ち込んでいるシン部長に、重清はその紙を差し出した。


「ん?あ、あぁ」

未だ心のダメージが回復していないシンは、覇気のこもっていない目を重清に向けつつ、その紙を受け取ってその中身に目を落とした。


「ん?こりゃぁ・・・」

それまでのココロのダメージが瞬時にして抜けたかのようにニヤリと笑ったシンは、ボソリと呟いて立ち上がった。


「よし。さっきの依頼、全員で受けるぞ!ただし、今からじゃない」


そう言ってシンは、重清の取り出したもう1枚の依頼書を全員の前に突き出した。



--------

忍ヶ丘2中には、七不思議があると聞きました。

そんなものがある学校じゃ、勉強に集中できません。

その七不思議の正体を解明してください!

--------


そう書かれた紙を掲げながら、シンは言った。


「さっきの捜し物とこの七不思議、今夜俺ら忍者部で解決するぞ!

全員、今日の夜に集合だ!!

あ、ノリさんには内緒だぞ!!」

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