第367話:忍力の許容量
「なっ、なんだ!?何が起きた!?」
ソウから溢れる光に、ノリは目を覆いながら叫んだ。
そして光が収まり、ノリは恐る恐る目を見開いた。
そこに居たのは。
緑色の鱗に覆われた細長い体。
その背には、小さいながらもパタパタとその体を浮かせるように羽ばたく小さな翼。
頭に小さな角を2本生やしているその顔は、どことなく幼げな可愛い顔をしていた。
「「りゅ、龍?」」
ノリとソウは、同時に呟いた。
「ママ〜っ!!」
その小さな龍は、そう言ってソウへと飛びついた。
「ママ、やっと会えたね!ボク、ずっと会いたかったんだ!」
「え、えっと。キミは、もしかして卵から生まれた?」
突然の出来事にオロオロしながらも、ソウは龍へと語りかけた。
「うん、そうだよ!ボクだよ!」
龍はそう言うと、突然その笑顔を硬直させた。
「しまった!ボクはママのピンチを救うために出てきたのに!ママに会えた嬉しさで、すっかり忘れてた!」
龍はそう言うと、ノリへと目を向けた。
「まずはあの、ドクシンキョウシをやっつけないとね」
龍のその言葉に、ノリのこめかみがピクリと反応した。
「どうやらそいつが、あの卵から孵った具現獣のようだが・・・・ソウ、躾が足りていないみたいだな。
生まれて早々人の気にしていることを言いやがって!
生まれたばかりの具現獣に、俺が負けるわけが―――っ!?」
ソウと龍へと叫んだノリは、叫びながら言葉を詰まらせた。
龍から溢れ出る、その強大な忍力に。
風間聡太、忍名、甲賀ソウは、元々非常に高い忍力の許容量を持っていた。
それは、幼少期よりその忍力量により周囲の人々を無差別に威嚇していた、中学生時代のノリよりも多いものであった。
もちろんノリは、その後の修行によりその忍力許容量はかなりのものへと成長している。
それは、あくまでも一般的な修行によって成し得たものであった。
もちろん、雑賀平八だけでなく雑賀雅が修行に関わっていたことから、『一般的』と呼べるようなものではなかったのだが。
しかし、甲賀ソウは違う。
この龍が卵であった頃、ソウは毎日寝る前に、そのほぼ全ての忍力を卵へと与えていた。
いや、搾り取られていた。
毎日のその日課により、ソウの忍力許容量は日に日に増えていき、既にそれは、現在のノリを大きく上回るほどまで成長していた。
そしてこの龍は、そんなソウの忍力を、毎日その身に吸収していた。
さらに、その忍力をほとんど使うことなく、その身に溜め込んでいた。
何故ならば、卵だったから。
卵だから、動くこともなく、忍力を使うこともなかったのである。
その結果、ノリの目の前の龍から溢れる忍力は、それはもうとんでもないほどの量となっていた。
雑賀雅、そしてその雑賀雅よりも遥かに高い忍力許容量を持つ雑賀平八をも超えるほどの、忍力。
そんな忍力が、ノリの目の前に突きつけられていた。
後にノリは語る。
「あの時は、さすがに死を覚悟した。
あれ程の恐怖は、雅様に追われた時にも感じなかった。
ちょ、雅様!インタビュー中に『異空手裏剣の術』はやめて!?
怖かったから!雅様から追われたのも、メチャクチャ怖かったから!
っていうか、俺今日は悪口言ってなくない!?どこに張り合ってんすか!?」
と。
それはさておき。
ノリが死を覚悟する程の忍力を纏う龍が、その小さな口を大きく開いた。
すると龍の周りに漂っていた緑色の忍力がその小さな口へと集まり始め、重清の『大忍弾の術』と同じサイズの忍力の塊を作り上げていた。
しかしその忍力の濃度は、重清のそれとは大きくかけ離れていた。
それ程に圧縮された忍力を前に、ノリは自身の持てるだけの土の忍力でその身を包み、構えた。
ノリの唯一の救いは、目の前で圧縮された忍力の塊が、龍の放出する忍力のごく一部であったことだった。
龍の周りには今なお大量の忍力が渦巻いており、そのほんの一部が、龍の前に忍力の塊として集まっていたのだ。
「とんでけぇーーーっ!」
大量の忍力を身に纏ったノリを確認した龍がそう叫ぶと、木の忍力の塊は一直線にノリへと向かい、2つの忍力がぶつかった。
龍の木の忍力は、ノリの土の忍力に僅かながらも削られてその力を失いながらも、圧縮されたその力はそれで消滅することなくノリの忍力を少しずつ押し続けていった。
一方のノリも、目の前の忍力が体に触れることを防ぐべく、全力で忍力を放出し、木の忍力の塊を押し返そうとしていた。
そして、ノリの忍力が尽きかけたその時、龍の忍力の塊はその全ての力を失ったかのように霧散していった。
「は、ははは・・・どうだ!俺がそう簡単に負けるわけが―――」
「ざぁ〜んねん!」
龍の忍力に打ち勝ったことに安堵の笑みを浮かべたノリの言葉を、龍は遮りながら小さくノリに向かって息を吹きかけた。
龍の小さな口から起きた小さな風に乗って、小さな忍力の塊が、ノリの腹部へとめり込み、
「おごっ―――」
ノリは声にならない声を漏らしながら、若干血反吐を吐き、そのまま遥か彼方へと吹き飛んでいった。
「ママ!ボク、頑張ったでしょ!!」
嬉しそうな顔でソウの首へと巻き付いた龍に対しソウは、その無邪気な顔に目を向けながら小さな頭を撫で、
「うん。でも、ちょっとやりすぎかな?」
そう言って苦笑いを返すのであった。
こうして、暴力教師甲賀ノリは、見事に成敗されたのであった。
後にノリは語っている。
「逆らってはいけない奴が、1
と。
---------
あとがき
さてさて、今日の更新で367話。
あと一カ月程で400話!
ということで、募集いたします、記念対談してほしい人たちをっ!!
多分これで最後の記念対談になるはずなので、よろしかったら是非ともっ!!
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