第365話:ノリ 対 シン、ノブ、アカ、ソウ、伊賀恒久 その2

「ちっ」

ノリは目の前に迫るいくつものクナイと手裏剣に舌打ちをしながらも、心の力を周りに展開し、いくつもの小さな壁の幻を実体化させて迫りくるクナイと手裏剣を受け止めた。


「この程度で、俺に―――」


「喋ってる暇なんかねぇぞ?」


ドヤ顔のノリのすぐ前に、『雷速の術』のいかずちを足に纏った恒久が幻刀を携えて現れ、そのままノリの横をすり抜けながらその幻刀を払った。


「なにっ!?」


恒久がノリを切り裂いたはずの幻刀に目を向けると、そこには刃先のない、ポキリと折れた刀身があった。


「戦闘中に心・技・体全ての力で防御しておくのは、常識だぞ?」

心の力を纏った腕を見せびらかしながら恒久の首元を掴んだノリは、そのまま恒久をシンに向って投げつけた。


「くっ」

シンが恒久を受け止めている頃には、先ほど跳び上がったノブのアカがノリへと攻め込んでいた。


2人の拳をそれぞれ片手で捌きながらノリは、


「よく体の力を練り上げているな!だが、まだまだだっ!」

そう言いながらノブを投げ飛ばした。


「うぉっ!!」

「このぉっ!」


ノブが声を上げて吹き飛ばされるなか、アカはノリに対して蹴りを放った。


「お前の武器はその拳だろうがっ!」

ノリはそう言いながらアカの足を掴むと、そのままノブに向かってアカを投げつけた。


「きゃぁっ!」

アカはめくれる制服のスカートを押えながら空中で体勢を整えながらノブへと吹き飛ばされ、


「ノブさん、失礼しますっ!」

そのまま空中でノブの体に足を向ける。


(スカートの中が―――むげっ!)

アカのチラリズムを堪能しようとしたノブの顔面にしたアカは、そのままノブの顔面を足場に再びノリへと飛び込んだ。


アカの拳には『炎拳えんけんの術』によって炎が灯り、さらにその炎の周りに風が巻き起こった。


アカの炎はその風を喰らいあげ、その勢いを更に増してアカの拳を包み込んだ。


「いっけぇっ!!」

「ぐっ!」


巨大な炎の灯った拳が、ノリへと叩き込まれ、ノリはそのまま炎に身を包みながら後方へと吹き飛んでいった。


「「「「「っしゃぁっ!!!」」」」」


シン達が同時に、叫んでいた。


その声を聞きながら、吹き飛ばされたノリは考えていた。


(今のは中々の威力だったな。雅様の修行の成果もあるだろうが、あれはソウの風によるものか。そういえば、俺が恒久を投げたときも、シンが受け止める直前に恒久を風が包んでいたな。あれで投げられた勢いを殺していたか。

やはりソウ、状況をよく見てやがる。

このままじゃ埒が明かねぇな)


「まずはソウを叩くか」

空中で足場を作ってそこに着地したノリは、身を包む炎を水の忍力でかき消すと、そう呟いて宙に漂うソウに矛先を向けた。


「あれでもダメなのかよっ!ソウ!そっちに行くぞ!」

ソウへと飛び上がったノリを見た恒久が、ソウへと叫んだ。


「わかってるっ!」

自身に向かってくるノリを見つめながら恒久へと返したソウは、


(木砲の術、と、火砲の術!)

ソウが『追尾』と『迫撃』にそれぞれ木砲の術、火砲の術をセットして発動すると、ソウの両肩にひまわりと火の花が咲き、そこからそれぞれ花の種と火の砲弾を、ノリへと向けて放った。


ノリは空中に心の力でいくつも作った実体化させた足場を飛び回りながら火の砲弾を避けつつ、見えない小さな壁で花の種を受け止めながら、ソウとの距離を詰めていった。


「ウソ、全然当たらないっ!」

「残念だったな」


ノリの動きにソウが声を漏らした頃にはソウの頭上へと迫っていたノリがそう言ってニヤリと笑っていた。


「こちとら雅様に何度も追い回されてんだよ!

逃げることに関しちゃ、重清なんか目じゃねぇんだよっ!」


なんとも情けない事を自信たっぷりに叫んだノリは、


「とりあえずソウ!あいつらの司令塔であるお前には、ここでリタイアしてもらう!」

そう言ってソウへと忍力で強化された体の力を纏う拳を、ソウへと放った。


(あ、これダメだ)

咄嗟に飛翔の術で逃げることさえできずに、ただノリの拳を受けるばかりとなったソウは、心の中で呟きながら目を閉じた。



その時、ソウの体が光りだした。

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