第364話:ノリ 対 シン、ノブ、アカ、伊賀恒久

打倒ノリを目標に掲げたシン達一行は、ソウの誘導に従い、すぐにノリ達のもとへと到着した。


「おっ、来た来た」

木陰にロイや智乃と腰を下ろしていた重清が、呑気な声を上げながら立ち上がり、ユウも表情を固くしてアカへと目を向けていた。


ユウを見返していたアカは、


「ソウ、お願い」

小さくソウへと言った。


(ユウちゃん、聞こえる?)

「えっ―――」


(声を出さないで。このまま話を聞いて)


「ん?ユウ、どうかした?」

重清がユウへと声をかけると、


「あ、ごめんなさい。ちょっと緊張しちゃって」

慌てたように重清へと笑顔を向けた。


「大丈夫だって。アカ、見た目は怖いけど、性格はもっと怖いから。ん?これなんのフォローにもなってなくね?」

重清が1人、脱線しながら首を傾げていると、ノリが前へと進み出た。


「お前ら、これは中忍体の模擬戦だぞ?それなのにこっちの隠した校旗も探さず、全員で攻めてくるつもりか?」

「いいんだよ!今日は校旗は無視することにした!」


そう言ったシンが、重清へと向かっていった。


シンは走りながらクナイを重清へと投げると、重清はそれをサラリと躱して、


「うぉっと。いきなり攻めてきた―――っ!?」


そう言いながら重清は、咄嗟にその場から飛び上がった。


「おぉ〜」

重清がそう言いながら自身の立っていた場所を見下ろすと、そこには恒久の『土穴どけつの術』で作られた底の見えない程の大きな穴がポカリと口を開けていた。


「あっぶねぇ〜」

重清がその穴を見つめながら呟いていると、


「シゲ!あんた相変わらず油断しすぎ!

あんたへの説明は面倒だから、その穴でしばらく大人しくしてなさい!」

重清と同時に飛び上がっていたアカがそう言いながら、重清を掴み、その穴に向かって投げつけた。


「うそぉ〜〜〜〜ん・・・・・」


重清は叫びながら、大穴へと吸い込まれていった。


「よし!これで邪魔者はいなくなった!」


「ふん。狙いはやはり俺か。しかしなぁ、まだユウが―――あれ?」

そう言ったシンに、薄ら笑いを浮かべたノリは、言葉を止めた。


そんなノリの視線の先には、いつの間にかアカの側に立つユウの姿があった。


「ノリさん、ごめんなさい。茜先輩から話は聞きました。私、リタイアします!」

ユウはノリへと告げると、近くの岩陰にドカリと座り込んだ。


「・・・・ふっ。まだこちらには、智乃とロイが―――」

「ノリ!私達は、重清を助けに行くわ!あとはよろしくねっ!」

若干わざとらしい言葉を残して、智乃とロイはそそくさとその場を去っていった。


「・・・・・・・・だぁっ!わかったよ!やりゃぁいいんだろうが!お前ら、そんなに俺を相手にしたいようだな!!

雑賀平八の最後の弟子の力、その体に叩き込んでやるよっ!」


「上等よ!雑賀雅の初めての弟子が、リア充を憎むあんたの心、叩き直してやるわ!!」


「「「「「下剋上じゃ!!!」」」」」

アカの言葉に続いて叫んだ一同が、ノリの周りを取り囲むように散り、ソウは『飛翔の術』で上空へと舞い上がった。


(なるほどな。ソウに上から状況を把握させ、指示を出させる作戦か。悪くはない。少し付き合ってやるか)

ノリはシン達の動きを見て考え、構えた。


「術は使わないでやる!掛かってこい!クソガキ共っ!」


そんなノリの言葉を待っていたかのように、ノブとアカがノリを挟むように攻めかけた。


「体の力が得意なやつは、どうしてこう猪突猛進なんだか」

ノリがため息混じりに呟いて、ノブとアカから繰り出される拳を受け止めようとした瞬間、2人はその場から跳び上がり、その背後からはいくつものシンのクナイと恒久の手裏剣がノリへと迫っていた。

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