第363話:集合
重清達から逃れ、ソウ達3人はシンとノブと合流すべく移動していた。
そして一行は、ソウの
そこでソウ達3人が目にしたのは、何やら多大なるダメージを受けた様子の、シンの姿であった。
と言っても、シンの体に目立った傷はなく、見た目上は健康そのものなその姿にも関わらず、ソウ、アカ、そして恒久は、ひと目でシンが重症であると悟ったのだ。
何故ならば。
「裏切り者。俺だけのけ者かよ。ケンも、ゴリラも、俺を置いてリア充になりやがって」
地面へと寝転がり、そうブツブツと呟きながら虚ろな目で空を見上げるシンの姿が、3人の目に入ったからであった。
3人は瞬時にして理解した。
(((シンさんの心のダメージがもはや手遅れレベルだ)))
と。
そしてシンから少し距離を置くように座り込み、心配そうに、そして若干気まずそうにシンの様子を見つめていたノブの姿をみたアカは、いち早くこの状況を理解した。
アカ「もしかしてノブさん、彼女できました?」
ツネ「なに!?」
ソウ「え!?」
アカのシンの心をえぐる言葉に恒久とソウが驚いているなか、
「・・・・・」
シンはただ、虚ろな瞳をノブへと投げかけていた。
「ちょぉぉぉぉぉいっ!!!アカ!いらんことを言うな!!
違いますよ〜。彼女とかできてませんからね〜」
ノブは、後半をシンに向けて言いながら、焦っていた。
そんなノブの言い訳にも一切動じず、シンはまだ虚ろな目をノブへと向けていた。
「はぁ〜」
そんなシンを見たアカは、ツカツカとシンの元へと歩み寄り、
「いい加減、目を覚ませぇーーーっ!!」
そう叫びながらシンを殴りつけた。
そのまま吹き飛んだシンは、まるでボーリングの玉のようにゴロゴロと転がり、そして動きを止めて立ち上がった。
「うぉいっ!アカ!こういう時はビンタなんじゃないのか!?」
頬を押えながら立ち上がるシンに対して、
「うるさいっ!部長のくせにいつまでもいじけてんじゃないわよっ!!」
「「「「えぇ〜・・・・」」」」
アカのヴァルキリーな一言に、男子一同は声を漏らした。
「ほら部長!この後の作戦は!?」
「はいっ!」
なおも向けられるアカからの厳しい目に、シンは殴られた頬の痛みも忘れて立ち上がり、4人の元へと全速力で駆け寄った。
それでも忘れる事のできなかった想いから、チラリとノブに目を向けたシンに対し、
「ほら、さっさとする!」
アカ口調も緩めずにシンを睨みつけた。
「はいっ!!」
シンはすぐさまノブから視線をそらし、一同の前へと立った。
「みんな、迷惑かけて悪かった!」
そう言って頭を下げるシンに、
「それで、これからどうするの?」
アカはそう声をかけた。
(あいつ、もはや敬語すら使わなくなってるな)
そんなアカの様子に、恒久は心の中でつっこんだ。
何故声に出してつっこまないのか。
それはもちろん、アカが怖かったからである。
それと同時に、シンがアカのタメ口に一切の異論を唱えなかったからでもあった。
その証拠に。
「はい。これからそれを説明します」
むしろシンは、何故かアカに敬語を使い始めていたくらいなのである。
そのシンとアカの様子に恒久が呆れていると、同じことを考えていたのか、ソウも苦笑いを浮かべて2人を見つめていた。
恒久の視線に気付いたソウは、恒久へと肩をすくめ、恒久もまた苦笑いをソウへと返すのであった。
「そこ!部長の話を聞きなさいっ!」
そんな2人を学級委員のごとく注意するアカに、
「「すみませんでしたっ!!」」
ソウと恒久は間髪入れずに立ち上がって頭を下げ、シンへと話を促して腰を下ろした。
自身に集まる視線に頷きを返したシンは、話し始めた。
「みんなも見たと思うけど、ケンがノリさんに一発でやられた。俺とノブも少し手合わせしたが、ありゃ強いなんてもんじゃない」
シンの言葉に頷くノブに目を向けて、シンは頭を下げる。
「本当なら、シゲとユウに集中すべきなのはわかってる。けど、今日は、今日だけは、ノリさんに、いや。あのクソ教師に一発食らわせないと気がすまない!
みんな、手を貸してくれないか」
そう言って頭を下げたままのシンに、ソウが手を上げた。
「なんでそこまで、ノリさんに拘るんですか?」
「ソウ、気付かなかったの?」
アカが、シンに代わって口を開いた。
「ノリさんがケンさんを殴ったとき、ノリさん少し笑ってたのよ。あれは絶対、彼女ができたケンさんへの腹いせだと思うの。
そうじゃなきゃ、手を出さないなんて言いながら殴る理由、他に無いし」
「あ〜・・・」
ソウはアカの言葉に、声を漏らして頷いた。
「アカ師匠の言うとおりだ。俺も、
(いや、ついにアカ『師匠』になっちゃったよ)
恒久がまたしても心の中でつっこんでいるなか、
「みんな、頼む!」
シンは再び頭を下げ、
「ケンの仇を、取らせてくれ」
ノブもシンの隣へと立ち、頭を下げた。
「じゃ、ノリさんに一発ぶちかましましょう!」
アカの元気で物騒な声が辺りに響き渡り、男子一同は無言のまま、深く頷くのであった。
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