第361話:雑賀重清&ロイ 対 伊賀恒久&甲賀アカ その2

モテない男達と、意外な伏兵の悲しいバトルが繰り広げられている頃。


「重清、力の使い方が様になってきておるではないか」

「おっ、マジで?」

恒久とアカの攻撃を避けながら、重清とロイは呑気な会話を楽しんでいた。


「あの2人ムカつくっ!何で私達の攻撃が当たんないのよっ!」

そんな重清達の様子にイライラしながら、アカは重清に向けて『火弾かだんの術』による火の弾丸を飛ばしていた。


「ほっ」

それを華麗に避ける重清を見つめつつ、


「落ち着け、アカ。シゲ相手にイライラしてたら、あいつの思うツボだぞ」

恒久はアカへと声をかけた。


「思うツボって。シゲがわたし達を挑発するために避けるなんて、そんな心理戦できると思ってるの?」

恒久が投げた手裏剣に合せて再び火の弾丸を飛ばしながら、アカは恒久へと返した。


「あー、悪い。思うツボは言い過ぎたわ。シゲがそんなことできるわけねぇよな」


「ねぇ、なんか2人して、おれの悪口言ってない?」


「「うるさいっ!!」」


重清の呑気な声に、アカと恒久が怒りのこもった視線とともに怒鳴った。


重清に向けた攻撃をことごとく避けられていた事に、恒久も内心ではイライラしていたようである。


「えぇ〜、なんかめっちゃ怒られたんだけど」

重清は2人の勢いに圧倒されながら、ともに2人の攻撃を避けていたロイへと声をかけた。


「これだけ避け続けていれば、誰でもイライラするからのぉ」

ロイは重清へと返しつつ、


(それを天然でやるとはのぉ。重清の将来が心配になるわい)

そう、心の中で呟きながら重清に慈愛に満ちた瞳を向けていた。


「ん?なに?ロイ」

「いや、何でもない。それより重清、忍力は回復したか?」


「まぁまぁかな?おれがさっきツネの忍力吸収してから、あんまりツネが忍力込めて攻撃してこないからね。でもまぁ、さっきよりはマシになったよ」

「そうか。ではあちらもヤキモキしておるようだし、攻撃に移るかのぉ」


「それなんだけどさ、ロイ。ちょっとだけ、あの2人を足止めしてくんない?」

「どうせ儂からは攻撃できんのだし、それは構わんが・・・」


「じゃ、よろしくっ!」

重清はそう言うと、ロイから離れていった。


「まったく、少しは説明してから行かんかい」

ロイは重清を見つめて呟くと、アカと恒久へと歩み寄った。


「なんだよ。シゲはまた何かやるつもりかよ?」

恒久は重清に目を向けつつ、ロイへと語りかけた。


「そのようじゃ。何をするつもりなのか説明はなかったがのぉ」

ロイは笑ってそう答えると、2人を交互に見た。


「さて。重清からお主らの足止めを頼まれたのでな。ちぃと遊んでもらうぞ?

今まで散々この可愛い子犬を追い回してくれたな礼に、お主らにも同じ目にあってもらおうかのぉ」

ロイがそう言うのと同時に、アカと恒久の周りにいくつもの小さな靄が生まれ、その靄が徐々に形を作っていった。


「に、肉球?」


自身の周りに現れた、いくつもの白と黒それぞれの肉球を見つめながら、アカが呟いた。


「そのとおりじゃ。儂からは攻撃できぬことになっておるからのぉ。

あれは、あくまでも肉球のスタンプじゃよ。

当たっても痛くはないが、その体にしっかりと肉球の跡を残す。

ちなみに、黒いのがプレッソ、白いのがチーノの肉球じゃ」


「いやわかんねーし」

ロイの蛇足な説明に、恒久はつっこんだ。


「そして―――」

ロイの言葉とともに、アカと恒久でもわかるほどの殺気が、肉球達から湧き上がった。


「これで準備は万端じゃな。ちなみに、これくらい殺気を込めたものなら、重清であればほぼ全てを避けることができるじゃろうのぅ」

2人を挑発するようなロイの言葉を聞いたアカお恒久は、


「「じゃぁこっちも、全部避けてやるわ(よ)!!」」


ロイへと叫び返した。


「ほっほっほ。やる気満々じゃな。では、ゆくぞ」

ロイがそう言うと、いくつもの黒と白の肉球が、2人へと襲いかかった。



そして1分後。


「「はぁ、はぁ、はぁ」」


肉球スタンプだらけの恒久と、いくつかの肉球が顔にバッチリスタンプされたアカが、息を切らして立っていた。


「ふむ。茜は雅ちゃんにしごかれとるだけはあるのぉ。恒久よ、お主普通なら死んでおるぞ?」


「わかってるよっ!わざわざ言わなくても―――」


「お待たせっ!!」


恒久がロイへと言い返していると、空気を読まない重清が叫んだ。


「いやタイミングっ!」

恒久がそう言いながら重清に目を向けると、重清の周りにいくつもの水と氷の弾丸が浮かんでいた。


「『弾丸の術』、水弾すいだん氷弾ひょうだんだっ!」


重清の声と同時に、いくつもの水弾と氷弾がアカと恒久へと向かっていった。

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