第360話:モテない男たちの悲しい戦い
(あいつら、
そんな事を考えながらも、ノリは目の前に迫るクナイに目を向けた。
ノリへと迫っていたクナイは、何かに刺さったように空中に留まっていた。
そのまま空中からクナイを
「心の力による幻術とその実体化は、具現獣の専売特許ってわけじゃねぇ。
俺にだってこのくらいはできるんだぜ?」
そう言ってクナイの刺さった見えない何かに手をかけたノリは、その場から飛び上がった。
「なっ!?」
いつの間にかノリの背後へと回り込んでいたノブは空振りした拳とともに、前のめりになりながら声をもらしていた。
「少しは気配を隠せよ、ノブ」
空中でそう言ったノリは、そのまま倒れそうになるノブの背へと着地し、その場で後方へとバク宙した。
「ぐげっ」
足場になっていたノブがカエルのような声を上げている間にノリは着地し、バク宙とともに再び飛んできたクナイを掴んでシンへと目をやった。
「・・・・・・」
ノリはシンを見つめながら、近くの草むらへとクナイを放った。
「うぉっ!!!」
草むらから、そんな声を出しながらシンが這い出てきた。
「あ。あっちのシン先輩、分身だったんだ」
ノリが目を向けていたシンが霧散していく様子を見つめていたユウは、ただ呆然とその様子を見つめながら呟いていた。
「幻術を使うタイミングは良い。ただ、お前も隠れ方がお粗末だな」
ノリは草むらから這い出たシンにそう言うと、初めにシンの放ったクナイを再び回しながら、
「それにな。クナイは手裏剣よりも相手に掴まれやすいんだ。だからこういう風に、相手に利用される」
そう言って回したクナイをシンへ向けて放った。
クナイは弧を描いてシンへと向かい、
「ちっ!」
シンはさらにクナイを具現化すると、向かってくるクナイを撃ち落とすべく投げつけた。
「キンッ!」
「なっ!?」
しかしシンの投げたクナイは、ノリのそれにただ弾かれ、直後にシンの足元へとノリのクナイが刺さった。
「武具もただ使うだけじゃダメだ。体の力で強化するのも1つの方法だぞ?」
そう言うノリを、シンは睨みつけた。
「いまさら教師ぶりやがって!」
「いや、俺はずっと教師だっての」
(うわ。やっぱメチャクチャ怒ってんじゃん)
シンの言葉に、ノリは内心ビクビクしつつも、平静を装ってシンへと返した。
「何が教師だよ!アンタ、ケンを殴ったとき、本当に教師として、師匠として殴ったと、雑賀平八に誓えるのか!?どうなんだよ!!」
「っ・・・・ち、誓ごにょごにょ・・・・」
「わかりやすっ!あーあ、こんなモテない男にやられたなんて、ケンも災難だよ!」
「はぁーー!?誰がモテないだと!?俺はなぁ、ただ出会いにこだわってるだけなんだよ!
どこかの誰かさんと一緒にしないでもらえませんかね!?」
「ちょ、ふざけんなよ!誰がモテないんだよ!俺だってなぁ!!」
「なんだよ?モテてるとか言いたいのか!?
じゃぁ誰から好かれてるっていうんですかーーー?モテない俺に教えてくださーーーい」
そんな2人の様子を、いつの間にかユウの元へとやって来たノブがため息混じりに見つめ、
「なんというか。悪いな、付き合わせて」
ユウへと謝罪した。
「あははは。ここにいると、色んな人間模様を見ることができて退屈しないですね」
苦笑いを返しつつ、精一杯のフォローとともにユウは返事をして2人を見つめていた。
ノブとユウから、半ば呆れられているとも知らないシンは、ノリの大人気ない問に若干顔を赤らめつつ答えた。
「き、去年まで1中にいた、ヒロさんだよ」
シンのその言葉に、ノリは首を傾げていた。
「お前、何言ってんだ?あのヒロってやつは、ノブの事が好きらしいぞ?」
「は?え?いや・・・んなわけあるかっ!あの人、俺に熱い視線を―――」
「いーや、正確な情報だ。ロキに聞いたからな!」
「嘘だ!おいノブ!お前からもなんとか言ってくれよ!!」
ノリに叩きつけられた
「・・・・・・・・・・・」
そんなノブは、何も聞いていないよ?とばかりに、1人スクワットに励んでいた。
「おいノブ!なんとか言えよっ!!」
先ほどまでのノリへの怒りも忘れ、シンはノブへと怒鳴った。
ノブはスクワットを止め、シンをじっと見つめて言った。
「ショウさんの卒業式のあの日、同じく卒業式だったヒロさんから、告白された」
「裏切り者っ!!!!」
シンはその場に膝をついて、地面へと叫んだ。
「いや待て。続きがある!確かに告白はされた!だが、付き合ってはいない!」
「ほ、本当か!?」
シンは希望に満ちた顔を上げる。
「あぁ。まだどんな人か知りもしないで、付き合うわけがないじゃないか!
今は、お互いに連絡を取り合ったり、たまに2人で出掛けているだけだ!」
「リア充街道爆進中じゃねぇか!!!」
「おいノブ!それは俺も聞いていないぞ!!!」
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