第359話:シン&ノブ 対 ユウ&ノリ

まえがき

タイトルですが、全員『甲賀』だったため、敢えてそこは端折りました。

なんか、ものすごーく見にくかったので。


-------以下、本編------


重清達2年生がそれぞれの相手と手合わせをしている頃、シン達3年生はというと。


「ノブ!大丈夫か!?」

「ぐっ。なんとかな!」

シンとノブがそんな声を掛け合っていた。


その目の前には、1年生であるユウと、2中で最も体格の良いノブを簡単に投げ飛ばした暴走教師ノリの姿があった。


「ユウ!お前はこの模擬戦の中で、小アルカナの2のカードを出すイメージを常に持つんだ!

失敗しても問題ない!あいつらなら、多少怪我させても構わんっ!」


「「いや構えよっ!」」


ノリの非道な叫びに、3年生コンビは言い返していた。


既にノリの暴走で、2中忍者部でも最強と言われた3年生3人の連携の一端であるケンはリタイアしている。


シンとノブにとってこの現状は、非常にマズい状況なのである。


ケンを負かした一撃でノリの実力は痛いほど分かっていた2人であったが、そのノリと共にいるユウも2人にとっては十分な脅威なのである。


ショウの妹であり、ノリすらも認める武具を使うユウ。


そしてあのショウすらも大きく上回る実力を持つノリ。


この模擬戦においてリーダーであるシンとしては、今すぐにでもその場を逃げ出し、一度ソウ達と合流して体勢を整えたい想いを抱いていた。


それは、ノブも同じであった。


それでも2人が、敢えてその場から逃げることなく留まっている理由。


それは・・・・


((ノリあいつに、一泡吹かせたい!))


という想いのためであった。


もちろん、ケンを倒されたこともその理由にはある。

しかし、2人は感じていた。


ケンを殴り飛ばしたノリの拳に込められた、微かな想いに。


((あいつ、絶対ケンに嫉妬してた!))


師としてでなく、一個人としての想い邪念のこもったその拳に、シンとノブは憤りを感じていたのだ。


((教師として、許すまじ!))


そんな想いで、彼らはこの場に留まっていた。


対するノリはというと。


この模擬戦を始める前に、チーノとロイに言った言葉を思い出していた。


「チーノとロイは、重清達の補佐に努めてくれ。あくまでも、2人は相手を倒さないように。


そう。ノリは本来、この模擬戦において相手に手を出すべきではなかった。


にも関わらずケンを殴り飛ばしたノリは、今冷静になって考えていた。


(やりすぎた・・・・)


と。


さすがのノリも、反省しているようなのである。


だからといって、彼の悪行が許されるわけではないのだが。


そして、ノリに一矢報いようとするシン・ノブと、猛省中のノリの間に挟まれたユウはというと。


(なんだか、物凄く空気が重い・・・・)


その場の空気に、いたたまれない気持ちで留まっていた。


この場において最も無関係で、なんの罪もないユウにとって、今の状況は非常に気まずいものなのである。


これも全て、ノリ暴力教師のせいなのだ。


とはいえユウも、模擬戦である以上その場から逃げ出すわけにもいかず、またノリからも『小アルカナの2』のカードを出すよう課題を出されている以上、それに従うしかないのである。


そんなユウは、諦めにも似た気持ちを奮い立たせて、シンとノブを見た。


「シン先輩、ノブ先輩、行きますっ!」


そう2人に言ったユウは走り出しながら、


(お願い、出てっ!ソードの2っ!)


そう念じて自身の武具、タロットカードを具現化した。


(くっ!ダメだっ!)


ユウは出てきたカード『コインの2』に目を向けるとそう思いつつもそれを発動させた。


2枚の大きめのコインが、ユウの周りに浮かび上がった。


「行くぞ!ユウっ!!!!」


ノブがそう叫んで、その拳に金属を纏った。


そのまま突進してくるノブの繰り出す拳の前に、2枚のコインがそれを阻むように重なると、


「ガキィンっ!」


金属のぶつかる音と同時にコインが押され、ユウもろとも吹き飛んだ。


(くっ。やっぱり、ノブさんのパワーは、コイン2枚でも防げない!)


コインのぶつかるギリギリのところで体の力をその身に纏ったユウはダメージを受けることなく空中で体勢を整えて着地した。


しかしその着地を待っていたかのように放たれたシンのクナイが、ユウの目の前へと迫っていた。


「っ!?」


突然のことにユウは目を閉じて身構えた。


が、いつまで立ってもクナイが当たることのない事に疑問を感じたユウがそっと目を開くと、目の前のクナイはそこから姿を消していた。


「俺らの狙いは、アンタだけだよっ!!」


シンの叫びにユウが咄嗟に後ろに目を向けると、悠然と立っていたノリへと迫っていた。


(いや、アンタって・・・

あいつら、あのことケンを殴り飛ばした事メチャクチャ怒ってね?)


ノリは迫るクナイに目を向けながら、そんな事を考えていた。

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