第357話:雑賀重清&ロイ 対 伊賀恒久&甲賀アカ その3

「キンキンに冷えたジュース・・・じゃなくて金属・・・」


ロイがアカと恒久の攻撃を防いでいるその先で、重清は目を瞑り、1人ブツブツと呟いていた。


「金、から、水、水ぅーーーっ!


だぁっ!!ここからどうすんのか聞いてなかった!」


重清がそう叫びながら目を見開くと、重清の周りに青い忍力が渦巻いていた。


「あ、できてんじゃん」

重清の呑気な声は、ロイの耳へと届いていた。


「どうやら、無事に水の忍力を己のものにしたようじゃの。

あれだけチーノに力の使い方を叩き込まれたのだ。今まで使えない方がおかしいわい。

まったく。雅ちゃんもとんでもない教え方をしたもんじゃ」

そう言って満足そうに重清を見つめるロイとは対照的に、アカと恒久は重清を若干驚きのこもった目で見つめていた。


「いやこのタイミングで水の忍力使えるようになんのかよ」

「いくらわたしと相性が良いからって、覚えたての忍力なんかには負けないわ!」


アカはそう叫ぶと、炎を纏った拳とともに重清へと向かっていった。


「ったく。イノシシかよあいつは」

走り出すアカを呆れた表情で見つめながら、恒久はため息をついてその後を追った。


「はぁっ!!」

「おっと」

アカから繰り出される拳を飛び上がって軽々と避け、重清はその足に水の忍力を集中させる。


「いくよ?」

重清は空中でそう言うと、そのままアカへと蹴りを放った。


アカはそれを腕をクロスさせて防ごうとするも、


「ぐっ!」


炎の鎧では水の忍力を防ぐことができず、アカはそのまま吹き飛ばされた。


「くっ。覚えたての忍力なのに、なんでそう簡単に使ってくれてんのよ!?」


着地したアカは重清を睨みつけた。


「いや、属性がなんであろうと忍力は忍力じゃん。忍力の使い方は、チーノ師匠に叩き込まれてるからね」

重清はニシシと笑ってアカへと返した。


「水の忍力ならこれはどうだっ!?」


そんな重清に、恒久が土の忍力を纏わせた手裏剣を投げつけた。


土剋水どこくすい』という関係により、土の忍力は水の忍力に打ち勝つ性質を持つのである。


そんな手裏剣に目を向けた重清は、左腕に金の忍力を集中させ、そのまま金属の腕で手裏剣を掴んだ。


「ツネ、『土生金どしょうきん』だよ?」

重清はニヤリと笑ってそう言うと、その手裏剣を包む忍力を左手で吸い上げる。


すると重清の左腕に集中していた金の忍力が、僅かながらその勢いを増して重清の腕で渦巻いていた。


「なっ!?」

恒久が驚愕の目でそれを見ていると、


「ニシシ。おれさぁ、忍力切れやすいから、相手の忍力を吸い上げて自分の忍力にする方法も、チーノに思いっきり仕込まれてるんだよね。ま、土の忍力限定だけど。あ、でも水の忍力使えるようになったから、金の忍力でもいけんのか。

ってことは、ツネはおれにとって、格好のエサというわけだね」

重清はそう言って笑っていた。


若干のドヤ顔で。



((こいつ、こんなに強かったのか??))


恒久とアカはそう思いながらも、同時に考えていた。


((あのドヤ顔、スゲームカつく))


と。


そして、


((こいつには、負けたくない!!))


2人の心は、一致していた。


「ほっほっほ。無事に水の忍力を使えるようになったようじゃな」

ロイが重清の足元へと現れる。


「お陰様でね」

重清がそう返すと、


「さて、これからが本番かのぉ。どうやらあの2人も、お主には負けたくないようじゃしのぉ」

ロイは恒久とアカに目を向けて、笑っていた。


「うん。なんかスゲー2人のその気持ちが伝わってくるわ」

重清はロイの言葉に頷いてそう言うと、


「じゃ、今からがおれとロイの連携ってことで!いくぞっ!」

そう言って再び、アカと恒久へと構えるのであった。

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