第354話:雑賀重清&ロイ 対 伊賀恒久&甲賀アカ

辺りに、連続する乾いた音が鳴り響いた。


機関銃を両手に持った重清が、恒久へと銃口を向けて撃ち続けていた。


それを『雷速の術』のスピードで避けながら、恒久は重清へと叫んだ。


「毎度のことだけどよぉ!なんで防御力の高いロイの銃が、そんなに攻撃的なんだよっ!」


恒久の言葉に、重清はニヤリと笑みを浮かべた。


「じゃぁ、いつものようにお答えさせていただきますよっ!」


「「攻撃は最大の防御っ!」」

「だろ!?」

重清と共に、質問したはずの恒久も声を揃え、言葉を続けた。


「わかってるよ!ムカつくんだよそのドヤ顔っ!!」

恒久はドヤ顔をかます重清に大声をあげながらなお、高速で動き回っていた。


「自分から聞いてきたくせに」

重清は、若干不服そうな顔を浮かべながらも恒久を撃ち続けていた。


ロイが重清の具現獣となってすぐに、重清はロイを銃化していた。


そしてこれまでの修行のなかで幾度も、防銃ぼうじゅう・ネルを使い、その度に言い続けていたのだ。


「攻撃は最大の防御」と。


もはや忍者部において定番となってきたこのやり取りのなかで、恒久は重清へと声をかけた。


「いくら撃っても、俺のスピードなお前の銃は勝てねぇよ!」

そう言いながら、重清の背後に目を向け、


「今だ!麒麟っ!」

「えっ!?」


重清がその言葉に、咄嗟に背後に目を向けると、そこには麒麟の姿はなく、


「なんつって」

雷速のスピードで近付いた恒久の声が、重清の耳へと届いた。


「ぐっ!」

重清は微かに感じた殺気敵意に反応し、咄嗟に心の力を纏った腕で、恒久が薙いだ幻刀を防いだ。


腕で幻刀を防いでいる重清に、


「ちっ。相変わらずよく反応するな!今度こそ今だ!麒麟っ!」

恒久が再びそう叫ぶと、


「いや、いないのバレバレだからね?麒麟の忍力は感知できな―――」

「なーんちゃっ、て!」

突然聞こえてきたアカの声とともに、重清の背中に衝撃が走り、重清はそのままスッと身を避けた恒久の脇を通り過ぎて吹き飛んだ。


その衝撃で術が解除され、亀の姿へと戻ったロイが、顔面から倒れ込んでいる重清の後頭部へと着地した。


「はっはっは。見事にやられたのぉ」

面白そうに言うロイを起き上がって振り落とした重清は、


「痛ててて。今のは完全に油断してた」

「今のじゃがな」


背中を擦りながら呟く重清に、ロイはつっこんだ。


「はいはい、どうせおれは油断ばっかですよ!」

重清はロイへと言い返しながら、2人に目を向けた。


「ってツネがいない!」

「呼んだか〜?」


直後、重清の背後から恒久の声が聞こえ、重清の背中に激痛が走った。


「ぐぁっ!」


重清はその痛みに耐えながらその場から離れ、恒久へと目を向けた。


「シゲ、俺から目を離したら、すぐに幻刀で斬られるぞ?」

ニヤリと笑いながら恒久は、重清の目をじっと見つめてきた。


「ヤバっ!幻感の術だっ!」

恒久の目を覗き込んだ重清は、そう声をあげ、心の力を全力で練り上げた。


「ちっ。相変わらず力の使い方は上手いな」

は余計だっての!」


重清が恒久へと言い返していると、


「シゲ、わたしのこと忘れてない?」

その直後に重清の前へと現れたアカが、そう言って笑みを浮かべながら重清の襟元を掴み、


「どっせぇーーーいっ!」

重清をそのまま投げ飛ばした。


「ぐえっ」


背中から地面に叩きつけられた重清は、そう声を漏らして倒れ込んだ。


「シゲ、お前もう忍力そんなに残ってないんだろ?」

恒久が2人の元へと歩み寄り、重清へと声をかけた。


「なははは。バレてた?」

上体を起こした重清は、苦笑いを浮かべて恒久とアカに目を向けた。


ロイを銃化したのは、これが初めてではない。


だからこそ恒久とアカには、防銃ぼうじゅう・ネルの最大の欠点を既に知っていたのだ。


ネルの最大の欠点、それは忍力の消費量が他の銃と比べて圧倒的に多いことなのである。


重清は銃化により作り出した銃に、別の忍術『弾丸の術』により弾を装填している。


機関銃であるネルは、その弾の消費が半端じゃないのである。


結果としてネルは、重清の最大の術である『大弾丸の術』よりも忍力消費の多い銃となってしまったのである。


「で、どうする?降参するか?」

重清の忍力が残り少ないことを知る恒久は、重清へと問いかける。


「できれば、もう少し粘りたい、かな?」

そう言ってフラフラと立ち上がった重清に、アカは笑みを浮かべた。


「それでこそみーちゃんの孫よ。さ、ツネ。一旦離れましょう。仕切り直しよ」

そう言って2人に背を向けるアカに、


「はいはい」

恒久はそう答えてアカの後を追った。


「さぁて、どうしようか。ここは獣装じゅうそうの術で―――」

「馬鹿者。それでは連携とやらの訓練にならんじゃろうが」

1人呟く重清に、ロイは言葉を挟み、


「このままお主と儂、2人でいくぞ」

そう言って変化の術を発動させた。

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