第353話:2年生同士の対戦

「智乃、ソウ達はどのあたりにいる?」

森を駆け抜けながら、重清は少女の姿となったチーノへと声をかけた。


「この方向で間違いないわ」

智乃は息も切らさず、そう答えた。


「いや、もうちょっと詳しく教えて欲しいんだけど」

「そこまで教えたら、お主の修行にならんじゃろうが」

重清の不満げな声に、智乃の隣を走るロイが平然と答えた。


「なんだったら、玲央に聞いてみたら?」

智乃は笑みを浮かべながら、同じく人の姿となったプレッソへと眼を向けた。


「けっ!どうせオイラには、あいつらのいる方向くらいしかわかりませんよっ!」

若干肩で息をしながら、玲央は口を尖らせて答えていた。


「私がいるからって、玲央は甘えすぎなのよ。もう少し、感知の訓練もやりなさい」

「分かったって!智乃、段々オイラのばあちゃんみたいになってきたな」


「せめてお姉ちゃんって言ってもらえるかしら?」

「まぁ、年の差から言ったら断然おばあちゃんだけどね」


「重清、何か言ったかしら?」

「あ、いや。おれもこんな姉ちゃん欲しかったなぁって」

突然向けられる殺気に、重清は間髪入れずにそう返した。


「あらそう」

智乃の素っ気ない言葉に、重清がほっと胸をなで下ろしていると。


「くたばりゃぁーーーっ!!」


若干噛み気味な叫び声とともに、茂みから幻刀を構えた恒久が飛び出してきた。


「うわっと!」

重清は恒久の振る幻刀を避けて飛び上がった。


「はぁーーっ!!」

しかしその直後、恒久の背後から現れた茜が、恒久を足場に飛び上がり、炎を纏った拳を重清へと叩きつけた。


「ぐぇっ!」

その拳を腹に思いっきり受けた重清は、そう声を上げて吹き飛ばされた。


「にゃぁっ!!」

かたや玲央も、突然現れた風の刃にその身を切りつけられながらその場から吹き飛び、


「「ギャンっ」」


空中でぶつかった重清と玲央は、声を上げてそのまま地面へと落下した。


「ふぅ、危ない危ない」

「危なかったのぉ」

智乃とロイはいつの間にか重清達から離れた位置へと移動しており、倒れ込む2人を見つめて笑いながら呟いていた。


「やっぱり、チーノとロイにはバレてたか」

ソウは苦笑いを浮かべて、智乃とロイへと目を向けていた。


「いやいや、なかなか見事な不意打ちだったぞ」

ロイが笑って言うと、


「えぇ。それに恒久と茜の連携も、素晴らしかったわよ」

智乃もそう言って恒久と茜へと微笑みかけていた。


「「いや、気付いてたんなら教えてよっ!」」

2人してよろよろと起き上がった重清と玲央は、そんな智乃とロイに非難の目を向けた。


「今のは、気付けなかったあなた達が悪いわよ」

智乃は、冷たい笑顔を2人へと返し、


「重清。あなた恒久の攻撃を避けたことで、油断したわね?」

そう重清に厳しい目を向けた。


「それにプレッソ。お主聡太の術が発現したのに、直前まで気付かなかったな?」

ロイもそう言って玲央を睨みつけた。


「「むぐっ・・・・・・」」


痛いところを突かれた2人は、そのまま言葉を詰らせた。


「お説教中のとこ悪いんだけどよぉ。まだ模擬戦終わってないぜ?」

恒久が、そんな重清達に呆れて声をかけると、


「あら、ごめんなさい。待たせちゃったわね」

智乃は恒久へと笑って返した。


「4対3。ねぇ、こっちが1人多いから、アレ、使っていいんだよね?」

重清はソウに、声をかけた。


「まぁ、ノリさんは良いって言ってたけど・・・」

ソウがそう返すと、


「よしっ!じゃぁ今日はロイ!いくぞっ!」

重清はソウの言葉を最後まで待たずに、ロイへと声をかけた。


「承知したっ!」

ロイがそう答えるのと同時に、重清は自身の忍術『具現獣銃化の術』を発動させた。


ロイの体が光となり、重清の手元へと集まっていった。


それを見たソウは、


(2人とも、アレが来るよ!ツネは雷速の術のスピードでシゲを撹乱!

アカは隙を見てシゲに攻撃!

ぼくはプレッソとチーノを牽制しながら、ツネと一緒にシゲを捕まえるからっ!)

恒久とアカへと、自身のレーダースマホの機能である『通信』を使って声をかけた。


((りょーかいっ!))


恒久とアカがそう言ってその場を離れていると、重清の手にずぅしりとした機関銃が握られていた。


いわゆる、マシンガンである。


「いくぞっ!防銃ぼうじゅう・ネルっ!!」


重清はそう叫ぶとネルを構え、恒久に狙いを定めてその引き金を引いた。

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