第352話:甲賀ノリという男
「クソっ!ソウ、追手は!?」
「大丈夫!こっちには来てないみたい!」
「もうっ!ノリさんがあんなに強いなんて、聞いてないわよっ!」
聡太が
現在彼らは、中忍体模擬戦の真っ最中なのである。
その相手とはもちろん、重清とその具現獣であるプレッソ、チーノ、ロイ、そして後輩であるユウ。
そしてそこに本人曰く『強力な助っ人』として参戦しているノリである。
これまでノリは、技術的な指導こそ行ってきたものの、ほぼ実践的な指導には手を出していなかった。
唯一ショウのみが、直接その指導を受けているのみなのであった。
だからこそ彼らは、ノリの力を侮っていた。
ショウからの証言によりノリの実力はある程度分かっていたはずの彼らも、普段あれだけぞんざいに扱っているノリの実力を大きく見誤っていたのだ。
結果として・・・
「まさか、ケンさんが一発とはな」
恒久は憎々しげに呟いた。
模擬戦開始早々、様子見とばかりに果敢にノリへと攻めたシン、ケン、ノブであったが、彼らもまた、ノリの力を見誤っていた。
彼らはショウに対するのと同じ感覚で、ノリへと襲いかかったのだ。
古賀
この男は常々考えていた。
リア充爆ぜるべし、と。
見た目もそう悪くなく、職業も安定している。
にも関わらず彼は、未だ独身であった。
というよりも、彼は彼女というものが隣りにいたことすらなかった。
それは、彼が運命の相手との出会い方に物凄くこだわっているからに他ならないのだが、それでも彼は、リア充というものを酷く嫌悪していた。
ただの嫉妬である。
自分で決めた出会い方のせいで結婚できないのは明白であるにも関わらず、彼はリア充に嫉妬しているのだ。
それだけならばまだ良い。
彼は、ただ嫉妬するだけに留まらなかった。
彼は、教師である。
そして周りにいるのは、恋多き中学生達なのだ。
その結果、彼は幾度となく暴走した。
部内恋愛を禁止し、課題と称してリア充予備軍を部員達に探らせ、あわよくば教師の権限でそれを阻止しようと企んでいたのだ。
その企みは、雑賀雅という強大な力によって阻まれた。
その結果ノリは、非常にキツいお灸を据えられることとなった。
そして、甲賀ノリは沈黙した。
しかしその心の奥底では、リア充に対する嫌悪は、憎悪に近いものへと昇華されていた。
昇華、なのだろうか。
それまでノリの嫌悪の対象は、絶対者雑賀雅の孫である雑賀重清であった。
見た目がそう悪くはないとはいえ、基本的に何も考えていないあの雑賀重清が、何故かやたらとモテていたのだ。
しかし、雑賀雅の孫である以上、変に手を出すことは出来なかった。
そんなノリの前に、その少年は現れた。
いや、重清よりも前から忍者部に所属していたその少年は、突如としてリア充と化したのだ。
それが、ノリの弟子でもある甲賀ケンであった。
ケンはこともあろうか、あの雑賀雅の孫の1人である、雑賀麻耶と付き合い始めたのだ。
重清のようにただモテていたわけではない。
見事なまでに、リア充となったのだ。
ノリの中に、様々な感情が渦巻いた。
嫉妬、憎悪、そして、羨望。
しかし雑賀雅にしっかりと目をつけられているノリは、ケンに対し露骨に嫌がらせをすることはできなかった。
そしてそんなノリの目の前に、相手の力を見定めることなく、無謀に攻め込んでくるケンが映った。
ノリは思った。
これ、チャンスなんじゃね?
と。
いやこれはあくまで師匠として、やっぱ相手の力を見定める必要性を教えなきゃいけないわけじゃん?
無謀に攻めるとか、危ないじゃん?
俺が教えてあげないと、誰も教えてあげられないじゃん?
そんな言い訳をしつつ、ノリはケンを殴り飛ばした。
日頃の鬱憤晴らしつつ、相手の力を見極める大切さまで教えるなんて、一石二鳥!
とか考えながら。
そう。これはあくまでも、忍者としての教えも込められているのでセーフ・・・・
なわけはないのである。
一石二鳥とか考えている時点で、完全にアウトなのだ。
現在の教育会において、このような暴挙が許されるはずもない。
いくら忍者とはいえ、個人的な感情が込められた時点でその拳は、教育ではなく暴力なのである。
こんな教師を、このまま野ざらしになどできないのではないだろうか。
早く、誰かこの暴力教師を止めて欲しいのである。
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