第350話:今年の中忍体
「中忍体に出られないって、どういうことだよ!?」
『喫茶 中央公園』に、恒久の声が響いた。
『
鈴木家もとい、雑賀家(の、分家末席)で
気付くといつもの『喫茶 中央公園』へと足が向かっており、
「ま、とりあえずコーヒーでも飲んで考えよう」
と何も考えずにそこへ足を踏み入れたのが彼の運の尽きであった。
その日の忍者部での修行を終えた聡太と恒久そして茜、さらには最近彼らと同じく『喫茶 中央公園』を利用する優希と、重清は見事に鉢合わせしたのである。
(チーノ、皆がいたの気付いてたよね?なんで教えてくれなかったのさ!?)
心の中で重清は、チーノへと抗議した。
(あら。こういうのは、早めに言っておかないと後々禍根を残すわよ?)
チーノは笑いを堪えるような声で重清へと返答していた。
結局重清は、決心もつかぬまま中忍体へ出られなくなった事を彼らへと伝えることになってしまったのだ。
そして、冒頭の恒久の叫びなのである。
「いや、だからそれをこれから説明するんだって」
重清は肩を落としながら、恒久へと返した。
「実は・・・カクカクシカジカなんだ」
「あーうん、そっかぁ〜ってなんねぇよ!なんだよカクカクシカジカって!ちゃんと説明しろよっ!」
「いや、今のはそれで理解する場面じゃん!」
「分かるかぁ〜い!んなもん、小説だけの話なんだよっ!」
重清と恒久が言い合っていると、
「なるほど。同じ日に、大事な用事が出来ちゃったんですね」
タロットカードをテーブルへと並べていた優希が、カードをめくりながらそう呟いた。
「ほら。理解してる」
重清は得意げな顔で恒久を見返した。
「いや、あれは特殊過ぎんだろ!っていうか優希!お前宿題もせずに占いなんてして、大丈夫なのかよっ!」
「あっ、宿題もう終わりました」
「優秀かよっ!」
恒久のつっこみの矛先が優希へと向かうと、
「あっ。恒久先輩、重清先輩。もうすぐ2人に天罰が―――」
「「おごっ!!」」
優希の言葉と同時に、恒久と重清の頭にあけみ姉さんの拳が振ら降ろされた。
「あんた達!いくら他にお客さんがいないからって、少し騒ぎ過ぎだよ!この術も、大きすぎる声までは抑えられないんだからね!!」
「「ご、ごめんなさい」」
重清と恒久は、頭をおさえながらあけみ姉さんへと頭を下げた。
「まったく。あんた達はいつも騒ぎすぎなのよ」
あけみ姉さんがカウンターへ戻ると、茜が2人を咎めるように呟いた。
「ほら、ソウと優希ちゃんを見てみなさいよ」
そう言う茜の視線の先では、
「聡太先輩、近々新たな出会いがあるみたいですよ」
「新たな出会い、かぁ。もしかして、ぼくにも遂に恋人ができちゃうのかな?」
「う〜ん。それとは違うみたいですね。っていうか聡太先輩、そういうの興味あったんですね」
「まぁ、無いわけでもないけど・・・とりあえず言ってはみたものの、シゲやツネほど、そういうのに貪欲ってわけじゃないかなぁ〜」
「なんか、俺ら静かにディスられてないか?」
「だよね。ツネはわかるけど、おれはそんなに恋愛に貪欲じゃないよね?」
「あっ、お前それは卑怯だぞ!シゲの方が、色恋沙汰多いじゃねぇかよっ!」
「あんた達〜」
「「ごめんなさいっ!」」
言い合う重清と恒久を再びあけみ姉さんが睨むと、2人はすぐさま頭を下げた。
「ほんと、あんた達は相変わらずね」
そんな2人に、茜が呆れた目を向けていると、
「でも、シゲが中忍体に出られないっていうのは一大事だよね。明日、ノリさんに相談しないとだね」
優希から新たな出会いを占われた聡太がそう言うと、一同は頷きあうのであった。
「あぁ、それね。知ってる知ってる」
「軽っ!!」
翌日、重清達が忍者部の部室でノリに前日の事を相談すると、ノリは雑にそう返した。
「そのことは雅様から相談を受けていたからな。まぁ、相談っていうよりも、命令だけどな」
ノリはため息混じりにそう言うと、
「シン、こっちに来てくれ。ケンとノブもだ。どうせだから今のうちに、今年の中忍体について話しておきたい」
シン達3人へと声をかけ、一同を集めた。
「今年の中忍体についてだが、重清は家庭の事情で出場できないことになった。そこで、今年中忍体に出るメンバーを今のうちに伝えておきたい」
ノリのその言葉に、一同は息を呑む。
そんな一同に、ノリは告げた。
「今回の中忍体だが、重清はもとより、優希にも出場は諦めてもらう」
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