第335話:自己紹介

「じゃぁひとまず、簡単に自己紹介でもしようか」

忍者部の部室に揃った一同を見渡して、ノリが皆に笑顔を向けた。


どうやらノリは、まだ猫かぶりモードのままのようである。


(あー、もういつものノリさんに慣れちまったから、こっちのノリさんが気持ち悪く感じちまうな)


「あぁ、じゃぁ俺から」

心の中でブツブツ言いながら、シンがそう言って立ち上がった。


シン「えーっと。俺はこの忍者部の部長、脇田 慎二。ここではシンって呼ばれてる。よろしくな」


ツネ「いよっ!部長様っ!いつでもその座、俺にくれていいですよっ!」

シゲ「へー。シンさんって脇田って名字なんだ。いよっ!脇田っ!」


シン「いやツネ、お前本音ダダ漏れ!そしてシゲ!お前は最早、ただ俺を呼び捨てにしてるだけじゃねーかっ!」


ノブ「はっはっは!俺は3年の森坂 信宏だ!ノブと呼んでくれ!よろしくなっ!」


シゲ「相変わらず笑い方が豪快!」

ケン「ゴリラ」


ノブ「シゲ、ありがとう!ケン、次はお前だっ!」


ケン「・・・ケン、湯上 剣。よろしく」


アカ「麻耶ちゃんとのお付き合いおめでとうございますっ!」

シン「は?え?ちょ、それ聞いてない!」

シゲ「おー。遂に付き合っちゃいましたか!」

ノリ「ブーブー!!!」


ケン「・・・俺だけコメントが多い」


ソウ「あー、えっと・・・ぼくは風間聡太。ソウって呼んでください」


シゲ「おれの右腕っ!」

アカ「次期部長っ!」

ツネ「おい待て茜っ!そりゃ俺だっ!」


ソウ「いつもこんな騒がしい感じだけど、楽しい所だから安心してね」


ツネ「なんかいい感じに纏めやがったな、ソウ!俺は時期候補、井田恒久!ツネだ!よろしくなっ!」


一同「・・・・・・・・・・・・」


ツネ「いや俺へのコメントは無しなのかよっ!!」


アカ「はい次わたし!森 茜です!ここではアカだけど、普段は茜って呼んでほしいです!」


ツネ「いよっ!2中の破壊王!」

シゲ「鬼の弟子は鬼っ!」


アカ「わたしがいつ、何を壊したって言うのよ、ツネ!そしてシゲ!あんたの今の言葉、そのままみーちゃんに伝えとくからねっ!!」


シゲ「ちょ、アカ!それはマジで勘弁してください!え?あとおれだけ?

えっと・・・おれは鈴木 重清!シゲでいいよ!!

そして・・・・おれは、忍者の子孫ですっ!!」


ツネ「相変わらずスベってるぞ!」

ソウ「頑張れシゲ!司令塔のぼくが見守ってるからね!」

アカ「みーちゃんの弟子とは思えない程のバカっ!」

シン「2中の脱線王!」

ノブ「大魔王の孫!」

ケン「・・・・彼女のいとこの悪口は、言わない」

ノリ「ブーブー!!!」


シゲ「おれだけ全員からコメント頂きました!」


ノリ「はぁ。で、俺がこのバカ共の面倒を仕方なく見ている、古賀だ。こいつらみたいに、ノリと呼んでくれて構わない」


シゲ「じいちゃんの最後の弟子っ!」

ツネ「猫かぶりモードが終わってるぞ!」

アカ「早く結婚しないと、平八さんが悲しむわよ!」

ケン「俺と麻耶さんの話のときだけ、ブーイングするのやめて」


ノリ「だぁっ!!うるせぇなぁ!!」


怒涛の勢いで終わった自己紹介に、ノリが叫び声をあげると。


「ふふふっ」

ジャージ姿の生徒が笑い声を上げた。


「あ、笑っちゃってすみません。お兄ちゃんも、ここでこうやって楽しんでいたのかと思ったら、つい。

芥川 優希といいます。お兄ちゃんが社会科研究部だったので、来てみました。まさか忍者部だなんて思ってなかったけど・・・」


「おっ、じゃぁやっぱ、お前がショウさんの弟か!」

恒久はそう言いながら、優希へと近づき、その肩に手を置いた。


「あっ、えっと・・・」

そう言葉を濁しながら、体を硬直させていた。


「??」

その様子に恒久が不思議そうな目を向けていると、


「あー、ツネ。新入生をビビらせるな」

ノリがそう言いながら、恒久の手を払い除けた。


「いや、別にビビらせるつもりなんて・・・

悪かったな」

恒久はバツの悪そうな顔をしながらその場を離れた。


「ツネ、今のはアンタが悪いわ」

茜はそう言って、恒久を睨んでいた。


「そ、そんなに怒ることかよ・・・」

恒久はシュンと肩を落として、そのまま椅子へと腰を落とした。


「あ、あの・・・」

その様子を見ていた優希は、恒久に声をかけようとするが、ノリがそれを遮った。


「キミの詳しい話は後だ。いいね?」

ノリがそう言うと、優希はコクリと頷き、そのままチョコンと椅子へと座り込んだ。


「「「「「「???」」」」」」


その様子に、在校生一同は首を傾げ、唯一茜だけは、そんな男子たちにため息をついていた。


「じゃぁ松本君。待たせてしまったが、改めて自己紹介を頼む」


「は、はい!松本 反音そりおと言います!先程言いましたが、父は既に亡くなっております。自殺ということになっていますが、俺はそんなの信じてません!俺は警察官になって、必ず父を殺した犯人を捕まえてみせます!」


反音の高らかな宣言に、ノリは感心していた。


(確たる確証があるわけでもなさそうだが、よく気づいたな。なかなか面白そうな子だな。

あんな奴の息子だなんて、信じられんな)


マジマジと反音を見ていたノリは、全員が自己紹介を終えたことに気付き、優希と反音を交互に見た。


「じゃぁ、自己紹介も済んだことだし、これから2人には、忍者になるための契約を結んでもらう」

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