第323話:白ローブの人
ショウの拳は、近藤へ届くことなく受け止められた。
いつの間にかショウと近藤の間に現れた白ローブを身に纏った人物によって。
黒いオーラを纏っていた白ローブは、空中で回転しながらショウを蹴りつけた。
「ぐっ!」
ショウはそれを腕で受けながらも、それを受け止めきれずにその勢いで吹き飛ばされた。
空中で体勢を整えたショウが着地すると、ショウは口から一筋の血を流していた。
「ショウさんっ!」
地へと着地したショウの元へ、先程までショウと近藤の戦いを観戦していた重清達やシン達が駆け寄った。
「今のショウさんにダメージを与えるなんて・・・・」
猫化の術を使ったショウの強さを身を以て知っていたソウが、呟くように言った。
「あの人、体の力が凄いよー。この腕も、折れちゃったみたいだしー」
ショウは涼しい顔でそう言うと、
「治癒の術」
そう言って折れた腕へと術をかけ、
「ふぅー。ある程度は治ったかなー?」
そう言いながら腕の動きを確かめていた。
「ショウさんの防御を破るくらいの体の力・・・あの人も、大将のじいちゃんの仲間、かな」
重清がそう言いながら、空中から地へと着地した白ローブへと目を向ける。
「えぇ、おそらくそうでしょうね」
重清につられるように白ローブを見つめていた一同に、チーノが言った。
「チーノ、何か確信があるの?」
ソウがそう言ってチーノに目を向けると、チーノは頷いて口を開いた。
「ショウに攻撃をする前まで、あいつからは黒い力が出ていたわ。忍力とは別の力が。あれは、以前現れた彼らと同じものだったわ」
「そっかぁ。チーノ、あの黒い力って、なんなの?」
「・・・・・・知らないわ」
重清の言葉に、チーノはただ、そう返した。
「ふぅ〜ん」
重清はそう答えながら、
(チーノ、ホントは知ってんだろ?)
心の中でチーノに語りかけた。
(あら、どうしてそう思うのかしら?)
重清の問に、チーノはそう聞き返した。
(一応、チーノとはそれなりの付き合いだからね。嘘かどうかくらいは、なんとなくわかるよ。
ま、チーノが言いたくないなら、言わなくていいんだけどさ)
(あら、本当にいいの?)
(まぁね。いつもチーノには助けられてるからね。
たまには自分達で、頭使わないとね)
(ふふふ。ありがとう)
(でも、言いたくなったらいつでも聞くぞ?)
(あら残念。その言葉が無ければ、かっこよく終わるはずだったのに)
(えっ、ちょ、今の無し!!)
(ふふふ。そういうことにしておいてあげるわ)
(ありがとさん。って、なんで最後、おれがお礼言ってんだよ)
(あなたが勝手に言ったんじゃない)
(うわ、ひでーっ!墓前でじいちゃんに言いつけてやる)
(ちょ、重清!それは卑怯よ!)
(へっへ〜ん!おれの勝ち〜)
(はぁ。まったく。いいわよ、あなたの勝ちでもなんでも。そんなことより、いいの?今の状況で脱線してて)
「あっ!そうだった!!」
チーノの言葉に、重清は慌てたように声を上げた。
「うわっ!なんだよシゲ!突然大声出すなよっ!」
重清の声に驚いたシンが、そう言って重清を見ていた。
「なははは。すみません。それで、あの人、どうします?」
「なっ!?脱線の得意なシゲが、話を本線に戻しただと!?」
重清が突然話を戻したことに、恒久が驚きの声を上げた。
「もう、そういうのいいから。シゲもツネも、もう少し緊張感持って!」
そんな重清と恒久に、ソウが厳しい目で2人を睨んでいると、
「でもー、あっちはあっちで、何か揉めてるみたいだよー」
ショウがそう言って、近藤達の方へと目を向け、一同もそれにつられたようにそちらへと視線を移していた。
「おいっ!なんで邪魔したんだよ!?」
一同の視線の先では、近藤が白ローブへと掴みかかっていた。
「なんでって、あなた、負けそうだったじゃないの」
白ローブに代わって、琴音が近藤へと返した。
「うるせぇ!俺はまだ負けてねぇ!」
近藤はそう言って、琴音を睨みつけた。
「はぁー」
そんな中、白ローブは深いため息をつくと、近藤の手を振りほどいて自身の拳を近藤の腹へとめり込ませた。
「ぐがぁっ・・・」
近藤はその声を残して、意識を闇へと落としていった。
白ローブはそのまま近藤を担ぎ上げ、重清達に背を向けて歩き始めた。
「あっ、帰るんですか?」
琴音がそう言うと、白ローブは振り向きむせず頷き、そのまま歩き続けた。
「じゃぁーねぇー!重清くーーんっ!!またねぇーーーっ!!」
琴音はそう言って、重清にひとしきり手を振った後、白ローブについていった。
「おい。あいつら勝手に帰っていくぞ?」
恒久がそう言うと、琴音に手を振り返していた重清が、
「まぁ、帰るんなら放っておけばいいんじゃない?ショウさん、いいですか?」
そう言ってショウへと目を向けた。
「まぁー、このままやっても勝てるかわからないしねー。それに僕にはまだ、シン達の相手をしないといけないからねー」
ショウはそう言って、シン達へと笑いかけた。
(((あ、まだやるんだ)))
シンとケン、そしてノブは、心の中でそう呟いて肩を落とすのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます