第322話:甲賀ショウ 対 甲賀コウ

「覚悟はいいな?いくぞ!」


忍力を放出させていた近藤は、そう言うとトンファーを2つ具現化し、それを両手で構えてショウへと向かって行った。


「ガキィ!」


トンファーをじょうで受けとめたショウの足元を、近藤のもう1つのトンファーが襲う。


ショウはそれを飛び上がって避けると、そのままそのトンファーに足をかけて近藤の頭上を越えていった。


水砲すいほうの術っ!)


ショウがそのまま空中で振り向きながら近藤に向けて杖を構え、その先から水の砲弾を放つと、近藤は振り返ることなくトンファーの先を水の砲弾に向け、


木砲もくほうの術」


その先からスイカを放った。

そう。スイカを。


どうやら近藤の木砲の術は、スイカを飛ばす術のようである。


と、それはさておき。


水の砲弾にぶつかったスイカは、水の忍力を吸収し、ひと回り大きくなって禍々しいまだら模様を表面に表しながら、大きな口を開けてショウへと襲いかかった。


「えぇーい」


ショウはそれを、まるでスイカ割りでもするかの如く杖で叩き割った。


スイカは血のような果実を撒き散らしながら粉々に砕け、ショウへと降り注いだ。


「くっ」


スイカで赤く染まったショウは、声を漏らした。


「体が、動かないなー。木縛もくばくの術かなー?」

「正解だよ!」

ショウの言葉に、いつの間にかショウの元まで来ていた近藤はそう言いながらトンファーを振りかぶった。


「ガキィ!」


トンファーはショウの頭上で止まり、宙に浮いた杖がそれを受け止めていた。


「うざってぇんだよっ!」


トンファーを再び受け止められた近藤は、そう叫びながらショウを蹴りつけた。


技の力で操る杖が間に合わなかったショウは、近藤の蹴りを胸に受け、声も漏らさずに後方へと吹き飛んだ。


(樹木の術!)


ショウを蹴り飛ばした近藤はそのまま術を発動し、目の前に大木を作り出した。


さらに、


(火炎の術!)


近藤は目の前の大木に着火し、トンファーを叩きつけた。


火が付いたままバラバラになった大木の破片は、地に落ちることなく宙に留まっていた。


そのまま大木の破片は、火を纏ったままショウに向かい始めた。


(くぅー。氷雨ひょううの術!)


自身に向かって来る破片を見たショウは、上空に杖を向けて術を発動した。


上空で弾けた術は、そのまま氷の雨となって燃える破片へと降り注ぎ、次々にそれらを撃ち落としていった。


「ふぅー」


氷の雨から逃れた破片を、宙で回転させた杖で撃ち落としたショウは、息をついて近藤へと目を向けた。



「す、凄い。あの人、術の使い方が凄く上手いわ」

ショウと近藤の戦いを観戦していたアカが、声を漏らした。


「あぁ。あいつ、ここまで強いとは思わなかった」

アカの言葉に、恒久も頷いた。


「それだけじゃないよ。あれだけの木の破片を、技の力だけで操るなんて。技の力の扱いに長けてるケンさんでも、あんなに芸当できるかどうか・・・」

ソウも、驚きの表情を浮かべて近藤を見つめていた。


「あ、そっか。あの人、大将のじいちゃんのトコにいるんだっけ」

重清は、納得したようにそう言葉を漏らしていた。


「大将のじいちゃん?」

恒久が首を傾げて重清へと目を向けた。


「あぁ、キャンプの時に襲ってきた人達の大将っぽいじいちゃんがいたんだ。そのじいちゃん、おれに言ってたんだよ。心・技・体の力の使い方を、しっかりと身につけろ、って。あの人、大将のじいちゃんのトコにいるんだから、多分心・技・体の力の使い方も、修行してるんだと思う」


「なるほど。確かにあの人、ショウさんよりも動きが速かったわね」

アカはそう言って、頷いた。



「ふん。少しはやるようになったじゃねーか」

大木の破片を全て撃ち落としたショウに、近藤がそう声をかけた。


「もう、満足してくれたー?」

ショウは、近藤へと笑みを返した。


「ちっ。余裕そうな顔しやがって!俺より弱いくせにっ!!誰が満足なんてするかよっ!お前をボロくずにするまで、何度だってやってやるよっ!!」

近藤はショウへと叫び返し、トンファーを構えてショウへと猛スピードで襲いかかった。


「そっかー。残念だな・・・」

最後の言葉を間延びせずに言ったショウは、術を発動した。


その瞬間ショウの体を煙が包み、そこから猫の獣人となったショウが姿を現した。


「なっ!?」

ショウのその姿に、近藤が驚きの声を漏らした瞬間、


「もう、お終いだよー」

近藤の背後からショウの声が聞こえ、それと同時に近藤の体を衝撃が襲った。


「ぐっ!」

近藤はうめき声を漏らしながら、ショウに蹴り上げられるままに上空へと吹き飛ばされた。


「ごめんね、コウ」

瞬時に近藤を飛ばした先まで飛び上がっていたショウは、寂しそうな顔でそう呟きながら、肉球のあるその拳を近藤へと振り下ろした。

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